テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
威風「…んで?今日はまたなんやねん。」
騎恋「ニコニコ」
今思い返すと黒歴史でしかない能力検査から、3日が経過した。
その間俺はどうやら休養を貰っていたらしい。
別にええのに…
それはそれとして今日は3日前とは違いお昼を食べて少ししたくらいに呼び出された。
騎恋「おはよう。…いや、こんにちは??今朝は良く眠れた?まろ。」
威風「ああ…いやまぁ朝5時にバカデカ放送掛かるから眠れたかと問われるとそうでもないんだけど…」
騎恋「それは良かった!」
威風「話聞いてた??」
咎めても反省の色どころか興味すら無さげな様子で飴玉をポケットに詰め込むないこに呆れる。
威風「ハァ…、、今日は何?トレーニングならちゃんと欠かさずやって…」
初兎「お前の初任務や。」
威風「ぅおお…お前どっから来た、、てか、初任務?」
え早くね??
騎恋「まろは休暇期間が長かったし、初任務って言ってもただの見学だから、安心して?」
威風「おん…というか、お前はなんで花束持ってんねん、、」
お前、もとい初兎は、両手いっぱいに花を持っていた、、、なんか今日謎おおない???
初兎「…別にええやろ。する事があんねん。」
威風「そかぁ。」
そう言って初兎は部屋を出た。
なんやねん冷たいなあ、、まぁ別に追及する気もないんやけどね。
騎恋「隊長がまだ寝てるから、出発は二時間後…午後3時くらいで!」
隊長が寝ているから。
その一言でどれだけないこが隊長と言う人物に甘いか知った。
威風「お昼寝で任務の遅れを許す??ええのそれ?」
騎恋「しょうがないでしょりうらが眠いって言うんだから。」
威風「…ソッ、、、、カァ、、。」
ゲロ甘かもしれん。
威風「じゃあそれまで俺暇やぁん!!」
騎恋「そんなの知らないよ笑、…あ、りうらに会ってみたら??」
威風「寝てるんちゃうん?」
騎恋「りうらはいつも外で昼寝するんだ。タイミングが合えば話せるかもよ?」
威風「ほーん…」
仮にも上司だ。会ってみても良いかもしれない。
騎恋「いつもは花壇の…お墓の場所わかる?そこからちょっと離れた場所に大きな木があるんだけど、大概そこに居ると思う!」
随分メルヘンな場所で寝てるんやな…まあ、まだ18やし、そんなもんか。
威風「ほんじゃちょっくら行ってみるわ!ありがとな、ないこ!!」
騎恋「いーえー笑。気をつけて行くんだよー!!」
挨拶も済んだところで外に駆け出そうとして、「ちょっと待って」と止められる。
なんやねんと思い振り替えると、不気味な程綺麗で、謎の圧のある顔で言われた。
騎恋「‘’取らないでね‘’。」
威風「…ぇ、??」
一瞬理解に苦しむ。
それが顔に出ていた様でないこがそれに気付くと、瞬きを一つして
騎恋「…いや、なんでもない。忘れて!」
といつもの柔らかな笑みで伝えられた。
威風「おう…」
なんだか意味はわからなかった…てか、わからないフリをしたいが、隊長殿に変なちょっかいかけるのは辞めておこうと思った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
威風「墓の近く…」
その後すぐ外に出て、ないこに言われた通り墓場の近くまで来てみた。
…が、
威風「いや広すぎやろ、、、!!」
例の木とやらが何処にあるのか、全く検討も付かない。
歩き回り少し疲れてきたのもあるだろうが、俺は吸い寄せられる様にして墓場へと入った。
すると、何やら見慣れた人影が、
初兎「…」
誰かの墓石の前で立ち止まっている。なにやら複雑な表情だ。
一体誰の墓だろうと目を凝らして見れば…
威風「…そか。」
「青凪」と記された小さな墓石がいくつもあった。
この間…此処に始めて来た時には一つだった俺の墓も、気付けば十を越えている。その十を越える墓一つ一つに、初兎は丁寧に花を供えて、墓石に水を掛けていた。
酷く辛そうな表情で。
威風「なぁ、俺生きてるんやけど。」
悲壮感に歪むその顔が見ていられなくて、思わず声をかけた。
初兎「…人の墓参り盗み見するとか、悪趣味やな…。」
威風「ぅぐ、」
そう言われちゃ敵わない。
威風「でも、本部も本部よな。毎回生き返んのに、一個一個墓建てて…正直無駄金ちゃう?」
そう言うと初兎は信じられないと言った様子の顔で俺を見つめた。
ありゃ、これ俺ミスったか?
威風「嫌、何も俺も死にたい訳ちゃうけど…なんて言うんやろ、一回死んで終わりの皆と、何回でも生き返れる俺とじゃ、命の重さが違うやん?本部のお偉いさん方も、それを承知でお前にエグい事させたんやろ?」
雰囲気を軽くしようとおどけた口調で笑顔で言い切った。
「実際墓の大きさは小さいし」と続けると、初兎の顔が曇ったので、焦りはますます増すばかりだ。
初兎「…これは、僕が頼んだんや、。」
威風「…え゛ッ、。」
だとしたら、俺今まで相当に失礼な事を…??
初兎「ちっさい墓でごめんな。総隊長と言えど、このペースでの出費は厳しいんや。…お偉いさん方はやっぱり反対してたけど。」
涼しい顔で「だからポケットマネーで建てた。」と続けて、その間俺とは一切目を合わせない。心なしかいつもより砕けた甘い口調だ。
威風「ぃや、その、墓が要らんとかそーゆーんやなくて、俺なんかにお金掛けんのが勿体ないなぁ、、みたいな??💦」
必死で弁明すると、彼の顔は少しだけ綻んだ。
後、すぐに曇った。
初兎「お前と初めて会った時な、正直気持ち悪いと思った。」
威風「ぇえ、なんきゅうに…悪口ド直球すぎん、??」
俺は別に嫌いじゃないのにな。
初兎「最後まで聞けや。」
威風「…おん。」
初兎「ちょっと前までパンピーだった癖して、能力者だとかすぐ受け入れるし、こっちの事なんも知らん浮かれたバカやと思った。」
威風「まあ、能力って男のロマンやしな」
初兎「…けど、違った。お前の能力の詳細を知った時、ゾッとした。『不死』、とか言う名前しとるんに、死なない訳ちゃう。むしろ、死んでなんぼの能力やた。」
威風「…それが?」
初兎「…なんでわからんのや、!!!!」
さっきまでぽつりぽつりと言葉を紡いでいた初兎が、遂に感情を露にした。と、いうより、抑えきれなくなった。
初兎「何度も何度も何度も死んで、痛くて、怖くッて、、、そんなん続けたらそりゃ、お前は…お前の身体は…心は、、!」
なんとなく言いたい事はわかった。わかった上でわからない。
威風「でも、今俺は大丈夫やん。」
表情を作るのを辞めた。今までコイツに嫌われない様に取り繕ってきた。嫌われても良い様に丁度良いウザさと適切な言葉を選びとってきた。
初兎「ッ!!!!」
のに…
威風「何がそんなに気に食わんねん。そりゃ俺は何回も死んだけど、健康やん。お前は俺を殺したけど、上からの指示だった。‘’不可抗力‘’ってヤツやろ。仕方ない。気にする事ないのに、いつまで過去引き摺ってんの???俺にどうして欲しいん??」
言ってくれよ、
威風「直すから。」
そっかぁ、もう、お前はずっと前から…
初兎「あは、っ笑。はははっ!笑」
威風「、、?、」
初兎「せやんなぁ…。普通がわからんのやもんなぁ…笑。」
コイツはもう壊れとんのや。
‘‘普通’’の感覚も、‘‘自分を思いやる気持ち’’も、とうにぶっ壊れとる。
やったら、僕が今出来る事は説教じゃないよな。
威風「なに笑っt…」
僕は頭を下げた。
威風「…は?」
初兎「いむくんを助けてくれて、ありがとう。」
心からの感謝を伝えてみても、ガラス細工のような瞳には、光は宿らない。
綺麗やなぁ…
初兎「言うの、遅くなってもうたな笑。」
威風「ぁ、?、何が、、」
初兎「僕はな、結局子供なんよ。まろちゃんの言ってる事は全部正しいよ。」
威風「…うん。」
初兎「けどな、理屈じゃ表せないもんもあるねん。そんなわがままな僕のお願いを、一つ聞いて欲しい。」
威風「…なに、?」
初兎「‘‘死なんといて欲しい’’。」
そう言うとまろちゃんは心底不思議そうな顔をした。
威風「…別に、俺は…、」
彼が続けて物を言おうとするのを口で阻止した。
どうせ俺の存在価値が無くなるとか、それじゃ役に立てないとか言うつもりなんだろう。
どこまで真面目やねん
初兎「あー!!まろちゃんは僕に貧乏になって欲しいんやぁ!!!!」
急に声を大きく…まぁわかりやすく言えばバカっぽくしたせいだろう。
青凪威風は弾かれたように目を見開いた。
威風「なっ、、!…んでそうなんねん!!💦」
ガラス細工の瞳は、ようやっと他者からの光を受けきらめきだした。
夜の海みたいな、静かな瞳も綺麗やけど、僕は、今みたいな方が何億倍も好きやな。
初兎「だってそぉやろぉ???まろちゃん死ぬ度に僕の小遣い減るんやから!」
わざとらしい仕草で相手を責め立てる。効果は抜群で、まろちゃんは今にもぐぎぎとか言い出しそうな雰囲気だ。
威風「だから墓を建てなければ…!!」
初兎「いーやーでーすー。」
理不尽を言っている自覚はある。けれど、今のコイツにはこれくらいが丁度良いと思う。
初兎「で?死にたいん?死にたくないん???」
威風「ぃや…そん、」
初兎「簡潔に!!!!!」
威風「出来れば…しにたく、、ない、です…。」
少し恥ずかしそうに彼は言った。
初兎「ん!笑」
『それでええねん!!!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同刻、巨木の下にてー
??「~♪、あれ、もおこんな時間?」
赤髪の少年は、上機嫌に鼻唄を歌いながら空を眺めていた。
??「ふぁあ~、!」
あくびと伸びを一つして、少年はのそのそと起き上がった。
??「さて、とぉ…そんじゃま、」
『今日も1日、頑張りますかぁ!!!!』
目映い光を受けた彼の影に、獣の耳が映った様に見えた。
コメント
4件
🐇ちゃんめっちゃいい子………こんないい子いるんだ…🤪ちゃんがこれ以上タヒなないように祈らないと💦🐇ちゃんのお小遣い減っちゃう…
こんにちは!初コメ失礼します!ここまで一気読みしたんですけどこれまで読んできた小説の中で一番になるくらい、読み進めるほど手が止まらなくなっちゃうようなストーリーでめっちゃ大好きです!続き楽しみです!応援してます!