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スーパーを出ると、空はすっかり夕暮れに染まっていた。
両手に買い物袋を下げ、二人で並んで歩く。
けれど――さっきの会話のせいで、口を開くのが難しかった。
「好きな人は?」なんて、あんなことを言われた後じゃ。
沈黙が続くたび、咲の心臓はやけに大きな音を立てる。
悠真もまた、前を見つめたまま小さく息を吐いた。
「……なんかさ、妙に気まずいな」
ふっと漏らした声に、咲は思わず顔を上げる。
「わ、私のせいですよね。変なこと聞いちゃったから……」
「いや」
悠真は首を横に振り、ほんの少し笑った。
「別に悪い気はしなかったよ」
その笑みがやけにまぶしくて、咲の視線は足元に落ちていった。