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毘沙門天に連行された天蓬と捲簾は別々の場所に投獄されていた。
天蓬は毘沙門天が所有している金蝉がいる所とは別の地下牢に投獄され、捲簾は最も酷い拷問がされる拷問部屋に投獄された。
全ては毘沙門天の嘘が作り出した最悪のシナリオである。
天蓬元帥 二十三歳
バシャァァア!!!
体に冷たい水を思いっ切り掛けられた。
「っ!?」
心臓が激しく飛び上った。
ドクドクと音を立てて脈を打っているのが分かる。
ズキズキッ!!
「いっ…てぇ…。」
頭と首がめちゃくちゃ痛い…。
カチャッ。
手足に冷たい感触が肌を通った。
ボヤけた視界で手首を見つめると、分厚い石で出来た手錠が繋がれていた。
「は?な、何だよこれ!?」
カチャカチャカチャ!!
分厚い石で出来た手錠はどうやら、足首にも繋がれていた。
「おはよう。いい眠りだったかな?」
目の前には高価な椅子に座っている毘沙門天がいた。
「っ!?毘沙門天!!これはどう言う事だ!!」
「どう言う事って?君は罪人なんだから、投獄されてもおかしくないだろ?」
毘沙門天はそう言って、不敵な笑みを浮かべた。
少し、冷静になって考えよ…。
鎖で繋がれてるのは分かるが…。
俺は戻って来た視界の中で周囲を見渡した。
見た事のない地下牢だな…。
あらゆる拷問道具が壁に引っ掛けてあった。
ここは、拷問部屋…なのか?
ズキズキズキッ!!
右手の指先に激痛が走った。
恐る恐る右手の指先に目を向けると、本来ならあるはずである爪がなかった。
爪が剥がされ肉が丸見えの状況だった。
「な、何だよこれ!?何で、何で爪がないんだ!?」
「あぁ。君の爪なら足元に落ちてるだろ?爪を剥がすのって楽しいんだね。」
毘沙門天はそう言って細い針を出した。
足元には小さな血の海と数枚の爪が落ちていた。
「お前、何してるのか分かってるのか?!」
「何って?別に私は悪い事はしてないよ。私の邪魔をしようとしてくる者を潰してるだけ。」
毘沙門天の邪魔…?
俺はその言葉を聞いてハッとした。
「だから、金蝉を地下牢に入れたのか!!」
ガジャンガシャン!!
大きな声を出すと、俺の体を吊るしている鎖が揺れた。
「だったら?だとして貴方に何が出来たと言うのですか。」
毘沙門天がそう言うと、背後から気配を感じた。
振り返ろうとすると鞭のような物で背中を叩かれた。
バシンッ!!
バシンッバシンッバシンッ!!
「くっ!!うっ!?」
何度も何度も背中を叩かれる度に声が漏れる。
黒いフード付きのマントを来た男が毘沙門天の指示を聞いて、鞭を振る。
暫くの間、俺は背中に鞭を打たれた。
いつまで叩かれたのか分からないが、背中が腫れているのが分かる。
「はぁ…、はぁ…。」
息が上がる。
「あ、ちなみにここは私の屋敷の地下牢だよ。私の兵士以外はここに立ち寄らないから助けを望むのはやめた方が良いよ。」
「だ、だから俺をここに連れて来たのか。」
「そうそう。だって、その方が良いからね。」
「その方が…って。どう言う意味だ。」
「近い内にわかる事さ。」
毘沙門天はそう言って地下牢を出て行った。
その日から俺はずっと拷問され続けた。
左手、両足の爪の間に長い針を入れられグリグリいじられながらゆっくりと爪を剥がされた。
毘沙門天は俺の苦痛の声を聞かさながら、あえて痛みが長くなるように時間を掛けながら爪を剥がした。
あまりの痛さに吐きそうになった。
身体中に鞭を打たれた痕が出来た。
その上からまた、鞭を打たれ新たな傷が増え続けた。
俺が毘沙門天に食って掛かろうとすると、毘沙門天は必ずこの言葉を言う。
「金蝉と捲簾大将を罪人として下界に追放しても良いんですよ?貴方が私に歯向かえばいつだって落としますよ。」
2人を罪人にする訳にはいかなかった。
俺達3人を天界から追い出すのが毘沙門天の目的と言う事は分かっていた。
毘沙門天の目的を阻止するには、俺がこの拷問を耐え続けるしかなかった。
捲簾、お前は無事なんだよな?
天蓬元帥が毘沙門天の屋敷の地下牢に閉じ込められてから二ヶ月が経った頃。
天界では天蓬元帥は下界に逃亡したと言う嘘の噂が流れていた。
そんな中、捲簾大将は脱獄の計画を密かに金蝉と行っていた。
捲簾大将は金蝉が投獄されている地下牢に投獄されていたのだった。
部屋も金蝉と同じだったのも偶然なのか、または毘沙門天の意向なのかは分からなかった。
地下牢ー
「本当にお前だけで脱獄する気なのか。」
金蝉はそう言って、手錠を弄っている捲簾に尋ねた。
「当たり前だろ。それに、お前まで巻き込む訳にはいかないよ。バレたら死罪だろうからな。」
「だが…。」
「それに、毘沙門天の悪事を暴けるのは多分お前だけだ。俺達が動く前に毘沙門天が動いて来たと言う事は、俺と天蓬が邪魔だったからだろ。だったら俺だけ動いた方が良い。」
カチャカチャッ。
捲簾は金蝉に渡された針金を使い手錠の鍵穴を弄っていた。
「俺だけ金蝉と同じ部屋に投獄するのも可笑しいだろ?何で、天蓬だけ違う所で投獄されるんだ?」
「それは俺にも良く分からない。毘沙門天の屋敷にある地下牢に投獄されていると俺は読んでいるが…。毘沙門天が引き連れている兵士達は、恐らく天界の人間ではないだろうな。」
金蝉はそう言って走らせていた手を止めた。
「天界の人間じゃないって…?どう言う事だよ金蝉。
「ここの監視役の兵士から情報を買って聞き出したんだよ。」
「お前って奴は…、抜かりがないな。」
捲簾は溜め息を漏らしながら呟いた。
「毘沙門天は最強の兵士を作ろうとしてる。妖怪の死骸とかを集めているらしい。」
「うげー。悪趣味な事してんなアイツ…。毘沙門天と一緒にいたあの黒いマントの奴等がその兵士とやらか。」
カチャッン!!
捲簾の手首に繋がれてた鎖が外された。
「うし、外れたな。」
「外に俺が買った兵士が待ってる。ソイツから武器を受け取れよ。」
「助かる。」
捲簾はそう言って立ち上がり、牢の入り口に手を伸ばした。
手首を器用に曲げ、鍵穴に針金を通した。
カチャカチャッ。
カチャッ…。
鍵が開いた事を確認した捲簾は地下牢を出ようとした。
「死ぬなよ。」
金蝉の言葉を聞いた捲簾は振り返らずに手を軽く振った。
天蓬元帥 二十三歳
「喉…乾いた。」
強い眠気と喉の渇きに耐えていた。
喉が渇き過ぎて眠たくても寝れなかった。
「ガハッ!!」
「グハッ!!?」
ドタドタドタドタ!!
誰かの足音が聞こえて来た。
誰か…来たのか?
「天蓬!!生きてるか!?」
俺がいる地下牢の入り口の前にボロボロな姿の捲簾が立っていた。
「おまっ…、何で、こ、こに?」
「待ってろ!!すぐ出してやる。」
捲簾はそう言って、鍵穴に鍵を挿した。
ガチャンッ!!
入り口を開けて入って来た捲簾は手錠の鍵穴に鍵を挿した。
ガチャンッ!!
「ほら、水飲め。」
捲簾は俺の口の中に水を流し込んだ。
渇き切った喉が一気に潤いが戻った。
「ガハッ!!ゴホゴホ!!」
「おいおい、お前ボロボロじゃん。歩けるか?」
「捲簾、何でここに?投獄されたんじゃなかったのかよ。」
「あ?抜け出したに決まってんだろ。」
捲簾の言葉に驚きを隠せなかった。
「は、はぁ!?どうやって…。」
「先にここから出るぞ。」
そう言って捲簾は俺の体を支えてた。
俺達はボロボロな足で地下牢を後にした。
地下牢の階段を登り切った俺達は、毘沙門天の屋敷内をウロウロしていた。
廊下には兵士達の死体が幾つか転がっていた。
捲簾がやったのだろうなと察しが付いた。
ボロボロな癖に良く動けるな…。
「もう少し歩けば屋敷を出れるからな。」
「あ、あぁ。ここは毘沙門天の屋敷だろ?」
「本殿ではないみたいだぞ。どうやら、拷問する為に立てた小さな屋敷らしい。」
「金蝉がそう言ったのか。」
俺がそう言うと捲簾は頷いた。
おかしい。
毘沙門天が捲簾の脱獄を黙って見逃すのか?
この屋敷の警護だって、こんな手薄にするのか?
このままこの屋敷を出て大丈夫なのか?
「おい、どうしたんだよ天蓬。」
「止まれ捲簾。」
「え?」
「この屋敷、どこかおかしい。」
「正解。だけど、少し遅かったね?」
俺の声の後に誰かの声が聞こえた。
その瞬間、床から黒くてウネウネしたモノが俺と捲簾の足に纏わり付いた。
ガシッ!!
「うわっ!?何だこれ!?」
捲簾はそう言って、黒くてウネウネしたモノを払おうとした時だった。
グラッ!!
バン!!
黒くてウネウネしたモノが俺と捲簾の足を引っ張った。
その衝撃で俺達は床に倒れ込んだ。
シュッ!!
ズルズルズル!!
そのまま俺達は足を引っ張られた。
強い力で後ろに引っ張られた俺達はされるがままだった。
バタン!!
どこかの部屋に引き摺り込まれた。
「いってぇ…。腕擦りむいてる…。」
捲簾は自分の腕を見ながら呟いた。
「この部屋は…?」
俺はそう言ってから周囲を見渡した。
大きな扉が1つと、周りには沢山の機材が置かれていた。
何なんだ?
この部屋は…。
「いらっしゃーい。」
声のした方に振り向くと、部屋の入り口に牛魔王と毘沙門天の姿があった。
「牛魔王!?何故、お前がここにいるんだ!?」
俺がそう尋ねると、牛魔王は不敵な笑みを浮かべた。
「何でかって?そ、れ、は…。」
牛魔王はそう言って手を振り下ろした。
すると、牛魔王の影から大きな槍が現れた。
毘沙門天が自分のズボンのポケットから小さなリモコンを取り出した。
ビュンッ!!
大きな槍が真っ直ぐ俺の方向に飛んで来た。
グサッ!!!
「天蓬!!!」
「ガハッ!!!」
ビチャ!!
槍が俺の腹に真っ直ぐ刺さった。
だが、槍は動きを止める事はなく俺の体を貫いたまま扉のある方向に飛んで行った。
何が起きているのか全く分からなかった。
キィィィ…。
後ろの扉がゆっくりと開いた。
「天蓬!!!」
捲簾が俺の手を掴もうとしたが、牛魔王が影を操り捲簾の体を影で拘束した。
俺の体はそのまま開かれた扉の中に吸い込まれた。
そして、牛魔王は俺の事を見ながら口を開けた。
「お前を下界に落とす為に来たんだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、俺は白い煙の中に吸い込まれた。
天蓬が扉の中に吸い込まれた後、捲簾が牛魔王に怒りをぶつけていた。
「テメェ、牛魔王!!天蓬をどこにやった!!」
「どこって下界に落としただけだよ。」
「下界に落とした…ってなんだよ!?何でアイツが下界に落とされなきゃいけないんだよ!?」
牛魔王は捲簾の太ももに自分の影で作った刃を突き刺した。
「ぐぁぁぁぁあ!!」
「毘沙門天。コイツ殺すか?」
「良いですよ。殺すつもりでしたからね。」
牛魔王と毘沙門天が話しをしている中、捲簾だけは開かれた扉を見つめていた。
(お前が下界に落とされたのなら、俺はお前を探し出す!!)
そう思った捲簾は、太ももに刺さった影の刃を抜き、閉まりそうになった扉に向かって走り出した。
「ッチ!!」
走り出した捲簾を見つけた牛魔王は、急いで影を操り捲簾の体を拘束しようとした。
捲簾はふら付いた足を叩き扉の中に飛び込んだ。
「お前だけで行かせる訳ないだろ!!」
捲簾の言葉と共に、扉が閉まった。
「クッソ!!アイツまで下界に行きやがった!!」
ダンダン!!
そう言って牛魔王は床を強く踏み付けた。
「大丈夫じゃないですか。少なくともあの2人が同じ場所に落ちるとは思いませんし。それに、天蓬元帥は死ぬでしょう。」
「そんな事、分からないだろ。」
「かなりの確率じゃない限りないでしょ。私達にはまだ、やる事がありますよ牛魔王。」
毘沙門天の言葉を聞いた牛魔王は、ゆっくりと毘沙門天の方に振り向いた。
「あぁ…、そうだな。次は金蝉を殺せば一つ目の目的が果たされる訳か。」
「えぇ。戦えない金蝉を守る者は全てこちらで排除した訳ですから。」
毘沙門天はそう言って、不敵に笑ったのだった。