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消えない傷に、消毒を

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消えない傷に、消毒を

1 - 双子の恋愛事情、すれ違いと恋敵

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2025年08月15日

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「別れよ。」


治の声が、俺の胸に突き刺さった。

…は?何言うとんねん、告白したんはお前やろ。

そんな風に考えても現実は相変わらずや。目の前には治が居る。けど、その目はどこか虚ろで冷たかった。

こんなん、いつも の治じゃない。まるでそっくりさんみたい。その瞳に見えた俺は、とても悲しい顔をしていた。


「え、何で?」


自分でも驚くほど小さい声が出た。だって、悲しいやんか。家族で兄弟で双子で…。その身近やけどかけがえのない存在を大切にしようって思ってた。喧嘩せんように、冷蔵庫に入ってるプリンも食べんように置いとった。…俺には無理やったんか。

自分が一番分かってる。俺は昔からうるさいし喧しいし、負けず嫌いで短気やから……人に呆れられることが多かった。そして嫌われて、挙句の果てにはクラスの男子からいじめられることも。

でも、こんな俺を愛してくれたんが治や。

治は三年前の花火大会の日、俺に告白してきた。

「好きや、付き合うて。」

俺の顔が熱くなったのを、今でも覚えてる。

それと比べると、今の俺はとてつもなく表情が脆かった。


「…嫌や、何で別れるん?俺の何が悪かったん?」

「ごめん、近寄らんといて。」

「………。」


やっぱり俺、治に愛想尽かされたんかな。

今はただ、治に別れを告げられたことがショックで、泣くことしかできんかった。

涙がボロボロと頬を伝う。胸が締め付けられて苦しい。…俺が好きなのはお前だけやのに。

その日は悲しみで泣き続け、一晩眠りに入ることさえ辛く感じた。


「おはようさん!!」

「おはよ〜。」


学校に着いてすぐに、銀の明るくてデカイ声と、角名のムカつくけどイケボで落ち着いた声が聞こえた。


「…おはよう。」

「あれ?侑、今日元気無いじゃん。」

「どないしたん?大丈夫か?」

「………治と別れた。」

「「は?」」


───────────────

「…で?何で別れたん?」


屋上で昼ご飯を食べていたら、銀が聞いてきた。

うぅ…銀〜、頼もしい!(泣)

ほんなら話の流れに沿って角名も。


「治から別れを告げるのって珍しいね。何か侑に原因があるんじゃないの?」

「確かにな〜。侑、心当たりあるか?」


…心当たり?ある訳ないやろ、とでも言いたいところやけど、実際には思いついた事が一つだけあった。


「実はな、こんな事があったんや…。」




きっかけは些細な事やった。

俺の単純な嫉妬心。

俺は休日にデパートに行って、新しい服を買おか〜なんて思ってた。そして腹が減った為カツ丼も食べて。夕方の四時半くらいになった頃、人も帰り店の中が空いてきたから、散歩がてら適当に服を見てた。すると、治にめっちゃ似合いそうな服があった。灰色のかっこいいTシャツ。 値段は少し高いけど、治の喜んだ姿を思うと、余裕で支払えた。


「さてと…今日は満足できたし、はよ家に帰ろ。」


そんなことを考えてたら、銀色の髪に聞き慣れた声がした。

治や。それと治だけじゃなくて、小動物みたいな可愛くて守りたくなるような女の子が、治のすぐ傍に居った。

………浮気か?

最初は疑わんかった。疑いたくなかった。

けど、二人はほんまに仲が良くて、傍から見ればカップルと勘違いされそうな程。

俺も次第に不安になり、治に近づいた。


「……治、何しとん?」

「侑!?」


治は驚いて、俺を見るなり焦った。


「その子は?」

「あぁこの子は俺の相談相手や。せやから…」


治は早口で言ったが、 言い訳にしか聞こえん。

…無性に腹が立った。

その途端、苛立ちとはまた別の、悲しい感情が追い詰めてきた。

あぁ、頬が冷たいな〜。…鼻がツンとするし、目から涙が溢れてくる。

泣いてんねや。

久しぶりに泣いたもんで、治も吃驚。


「あ、侑…泣かんといてや。なぁ大丈夫?」

「…うぅ、グスッヒグッ(泣) 」

「侑。」

治の声は聞こえん。だって俺は泣いてるもん。俺は生まれつきうるさいから、泣き声もうるさいんかな。

そんなこと考えてる暇も無い。

俺は家へ全力疾走した。


「侑!…はぁはぁッ、おい侑!!」

「何やねん!ッグス、浮気者!」

「はぁ!?何言うとんねん、誤解や。」

「なぁにが誤解やねん!明らかに浮気やろが!」

「うるせぇボケ!!!浮気ちゃうって言ってんやろ!」


お互い感情が爆発して、大喧嘩してしもた。

治は浮気してないと主張している。

俺もそう信じたいけど、何故か分かち合うことが困難で、暴言を吐き続けた。

多分、これが原因やと思う。 治に嫌われたことの始まりが。

ほんで冒頭に至る訳や…。




「馬鹿なの。」


角名が呆れた表情で俺を見る。

治と俺の喧嘩を日頃から見ていた角名にとって、大事では無さそうやった。

銀はと言うと、俺の傷ついた心を慰めてくれて、相談に乗る準備までしてくれた。

おん、銀は女子になってもモテる。(確信)


「…馬鹿で悪かったな。」

「そんなつもりで言った訳じゃないよ。ただ、侑も侑だよねって話。」

「あ゛ぁん!?」


それを言う角名も角名でめっちゃ辛辣やん。

俺、三年間付き合った彼氏に振られたっつうのに。


「いい加減、治のことは諦めてよ。」

「は?どういう意味やねん。 」

「だ〜か〜ら、俺にしない?っていう意味。」

「「………は?」」


俺と銀が、口を揃えて言った。

角名、物凄いこと言ってる。

…こいつ、俺のこと好きなん?


「え、俺のこと…好きなん?」

「うん、そうだけど?」


急展開。

その言葉が今の状況にピッタリやろか。

けどほんまに急展開なんや。角名が俺のことを好きって…どういうこと?


「侑があいつと付き合ってるって聞いた時、実はショックだったんだ。心の底から侑のことが好きだから。」

「それって…。」


角名が俺に好意を抱いている事が分かった。

角名は写真をめちゃくちゃ撮る撮り魔やけど、俺が傷ついた時は、心配性の銀と同じく早く気づいてくれた。

そんな角名と付き合うてみたら………。どんだけ幸せなんやろか。


「角名……。」

「侑。」

「(え、これ俺居らん方がええんかな?)」

「…ッッちょっと待ったぁああ!!」


!?

何事、え?はぁ?…頭が追いつかん!


「侑、その…この間はすまん!あれは浮気ちゃうねん!」

「…え?」

「……これ。 」


…何これ。キーホルダー?


「…もうすぐ、付き合い記念日になるやろ?せやからプレゼントを渡したいなって思って。でも何を渡せばええか分からんかったから、ヲタクのあの子にアドバイスを貰ってたんや。」

「…せやったん?疑ってごめんな。」

「別れよとか言うたけど、別れたくない。侑はいつまでも俺の彼女でいてほしい。」

「うん、分かった!」

「ほんま!?ありがとう。大好きやで、侑♡」


俺も、治のことが大好き!愛してる!

俺は嬉し涙を流し、その言葉は言えやんかった。

でもな、抱きしめ合うことで気持ちを分かち合えるねん。やって、好きやもん!

今、人生で過去一幸せかも。


「「愛してる。」」


こうして、俺は治と仲直りをした。




───────────────

「…せっかく、侑と付き合えそうだったのに。俺も、侑のことがずっと前から好きだったんだよ。 だから、待っててね。必ず治から奪ってみせる!」

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