拝啓、太陽の君へーこれは、あなたへ贈る私の秘めた想いの物語です
「カナダさーん!」
高校生活三年目の秋のある日、昼ごはんを食べに学食へ向かおうとしていた僕にかけられた可愛い声。
それを見た他の国達はカナダに嫉妬の眼差しを向けている。
まぁ、この高校のアイドル的な存在に毎日声をかけられているのだから、しょうがない…のかな?
そんなことを考えながら、僕はその声の主に返事をした。
「どうしたの?日本」
「ご飯食べに行きましょう!アメリカさんも誘って!」
「分かった、じゃあ、兄さんのとこに行こうか」
「はいっ!」
…誰にも盗られたくない
そんな我儘な心の声に蓋をして、僕は日本についていくために席を立った
ー僕と日本と兄さんは幼馴染で、小さい頃から三人でいた。
よく、近所の公園や互いの家に遊びに行っていたっけ。
僕たちより一つ上の兄さんによく頭を撫でられていた記憶がある。
保育園、小学校、中学校、そして高校。僕たちは全て同じところに通っている。
ーでも、それももうすぐ終わる
「ーなださん?」
「カナダさん?」
「…!あっごめん!」
「大丈夫ですか…?ちゃんと休んでます?」
っと考えごとしすぎた…。日本に気づかないなんて僕らしくない。…やっぱり疲れてるのかな?
(それともやっぱり”あのこと,,のせいかな…?)
いや、それは違うか、もう諦めたはずだし。
…まぁとりあえずは
「日本、兄さん呼びに行こう?」
ー高校の食堂にてー
「でさ〜ww」
「え、そんなことがあったんですか!?」
お昼時の食堂。それはこの時間に一番活気のある場所だ。
そんな食堂の一テーブルを使ってさっきから日本と喋っているのは、僕の兄であるアメリカ兄さん。
僕と同じ、日本の幼馴染だ。
そして…日本の現彼氏でもある。
周りもどちらも顔が良すぎるからお似合いカップルだって言ってる。…まぁ実際僕も同意するけど。
それに、もともと仲良かった二人の仲がさらに深まったように感じられるから順調なんだろう。
もともと兄さんは日本に恋心を抱いていたから、兄さんからしたら長年の片思いが実ったんだし…
そうと思いながら仲良さそうにご飯を食べる二人を眺めながら学食を口に運んだ。
「日本、もうそろそろ帰ろう?」
「そうしましょうか…」
日本と僕は二人きりで自習の為に教室に残っていた。
疲れました…!そう言ってぐっと伸びをする日本。
…正直言ってすっごくなんか…うん、あれだった。
こういう日本を見ると、幼馴染がもう子供ではないということを再確認する。
それと一緒に三人の関係が変わってしまったということも…
「…そういえば日本、大丈夫そう?勉強の方は」
日本が学校で毎日自習している理由。
「うーん…後こことここがわからないんですよね…」
「無理をしないでよ…?」
僕がそう言うと、日本は笑って言った。
「でも…医学部に行くにはまだまだ勉強が足りてないので…頑張ります!」
そう、日本は医師志望だった。
…きっと今年高校三年生で医大に合格した兄さんを追いかける為だろう。正直兄さんが羨ましい。
「でも、悲しいです…カナダさんと離れるなんて…」
「まぁ、しょうがないよ…僕法学部志望だし」
もともと僕は昔から文系の道に進みたいと思っていた。
…そのせいでよく医者志望の兄さんと比べられまくってたけど。
でも、二人はそんな僕とも普通に遊んでくれた唯一の人だった。
他の人たちは僕の前に兄さんのところへ行ってから僕のところに来ていたから…。今思えば、僕に取り入って兄さんに近づこうとしていたのかもしれない。
ーだから僕は、自分のこの想いを押し殺して、二人の仲を見守ろうと決めたんだ。
ー1年後ー
「もう卒業か…」
そう思いながら、たった今卒業した母校を見やる
長いような、短いような一年だったな…
そう思いながら、僕はあの太陽のような君を待っていた。
「カナダさーん!」
その声を聞いた瞬間、体が変に熱を持った。
ー今からすることはただの僕の独りよがりだ。
「どうしたんですか?」
「ちょっと話したい事があってさ。まずは…医学部入学おめでとう。」
そう言うと、ふふっと日本は笑った。そして…
「ありがとうございます。それにそれを言うならカナダさんも…法学部入学、おめでとう御座います!」
そう言って、花が綻ぶように笑った。
その笑顔をみると、あぁやっぱり好きだな…って思う。
ちゃんと蓋…した筈なのにな…
そう思っていると、日本が僕に問いかけた。
「それで…話とは?」
…きた
冷静に冷静に…そう自分に念じながら僕はあるものを日本に差し出した。
「これ、日本に渡そうと思って。…医学部の入学祝い」
受け取った日本は、とてもびっくりしていた。
この顔が見たかったから頑張ってこれを用意したんだけど。
「すごい…綺麗な向日葵の花束…」
「こんな真冬にどうやって…?」
「僕の家の温室で育てたんだ。外の気候と完全に真反対になるように気温と湿度を調節してさ」
僕がそう言うと、日本は…泣き始めた。
「えっえっ!?なんか僕やっちゃった!?」
「違いますよ…ただ、嬉しくて」
そう言った日本は、向日葵を抱えながら口を開いた。
「ありがとうございます…カナダさん」
「お礼なんていらないよ…僕たちは『幼馴染』だから…さ?」
そう言って、僕はその場を後にした。
「日本はあの向日葵に込めた想いに、気づいてくれるかな?」
家に帰って、一人暮らしになった部屋の中で誰にともなく呟いた。
「いや、どちらでもいいか」
日本が想いに気づいても、気づかなくても…どうせ結果は変わらない。
日本は兄さんと…アメリカと結婚するんだから。
でも…
「やっぱり…失恋って辛いなぁ…」
捨て去ったはずの君への想いは…どんどん肥大していくし、この痛みもきっと一生消えないだろう。
でも、この痛みは…きっと、自分の想いを最後まで伝えられなかった臆病な自分への罪なんだろう。
「ちゃんと…気持ちを伝えれば良かったな…」
そうすれば、この胸の痛みも、少しは軽くなったのかな…?
そう思いながらそっと涙を振り払うように眼をとじた。
ーこうして、僕の最初で最後の恋は終わったー
初ノベルむずかった…
コメント
1件
コメント失礼します 加日をありがとうございます!切なくて健気で太陽を追っかけてるカナダくんが最高でした…日本くんの悪意ない優しさとかも最高に解釈一致です!! ひまわりがすごく綺麗な使い方をされていて萌え倒しました… 推しカプ供給感謝です🫶💕