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放課後、君の音に触れる

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放課後、君の音に触れる

8 - 第8話 ふたりだけの旋律(カデンツァ)

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2025年06月19日

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美琴との修羅場から数日後——学校の音楽室は、あの日とは打って変わって静かだった。


陽斗と遼、ふたりきり。

ピアノの鍵盤にはまだ指が触れていない。


「……ほんとに、よかったのか? コンクール出ないって」


陽斗の問いに、遼はうなずいた。


「後悔はないよ。今は、誰かと競うより、お前とちゃんと音を合わせたい」


「俺と……?」


遼は真っすぐ陽斗を見た。


「お前の音は、荒削りで感情が剥き出しで、……でも、どこまでも優しい」


陽斗は、少し照れたように笑ってから、ピアノの横に腰掛けた。


「じゃあさ、今からその“優しい音”聞かせてやるよ」


遼が隣に座り、ふたりの指が鍵盤の上で重なる。

はじめはぎこちなく、次第に絡むように──


いつのまにか、音よりも鼓動の方が近く感じられていた。


ふと、陽斗が演奏を止める。


「な、なんで止めるの?」


「……遼が、近すぎて弾けない」


「えっ?」


「いや……こう、距離近すぎて。……その……キスとか、したくなるじゃん」


一瞬、空気が止まった。

遼はピアノから手を離し、陽斗を見つめたまま──


「……してもいいよ?」


陽斗の目が、驚きで大きくなる。


「え、まじで言ってる……?」


「……お前にだけは、触れられてもいいって思った」


息を飲むような沈黙の中で、陽斗はそっと、遼の頬に手を添えた。


そして──


重なる唇は、ピアノの旋律よりも柔らかく、確かな“恋”を奏でていた。



放課後の音楽室に、ふたりの奏でる小さな愛の音が静かに響いていた。


ふたりの“旋律”は、もう戻ることのない過去ではなく、

これから続いていく“恋のはじまり”を告げていた。

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