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【 おひるね 】
ある日の昼下がりのことだった。蒼井がいつも通り泊まりに来てて、蒼井を膝の間に座らせてふたりでテレビを見てたら、視界の下のほうで蒼井の頭が揺れ始めたのが見えた。いくら中身は高校生だとはいえ身体は子供だし、眠いのだろうな。そう思って頭を撫でたり、髪を梳いたりしたら、しばらくしたら瞼が落ちた。寝たのかな。それからまたしばらく柔らかい髪をなでたり、触り心地の良い頬を撫でたりして、心地よさそうにして寝ている蒼井を眺める。なんだかいろんな感情が込みあがってきたけれど、一番は、なんというか、
(こんな小さい子相手に恋愛感情抱いてるって、やっぱりやばいよなあ…)
いや、仕方がないことだともうわかっている。中身はあくまで前の蒼井と一緒なわけだし。それに、高校生の時好きだった人を三十超えた今でも好きな時点でマトモじゃないわけで。25ぐらいのときにお見合いをさせられそうになって、つい家出してきちゃったし、今でも蒼井が死んだときの夢も二人で仕事してた時の夢もしっかり見るし。蒼井の遺品いくつかまだ持ってるし。…いや、ヤバいやつじゃん、僕。なんか、うん、わかってたけど。改めて自覚すると本当に気持ち悪いなあ、僕。
ヤバいって自覚はあるから、今回も蒼井にいうつもりはないし。…来世また会えたら、その時はまあ運命だと思って告白しようかなあ。この思考がすでに重いのかな。
あー、蒼井あったかい。子供体温ってやつだ。ゆたんぽみたい…ねむくなってきた。蒼井の額と頬に一回ずつ軽く唇を落として、もう一度頭をなでる。これは親愛のキスだから。セーフ。
「…好きだよ、蒼井。」
ぽつりと垂れた劣情は、部屋に溶けて消えていく。そのまま、僕は眠りについた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
ある昼下がりのことだった。会長のわがままで膝の間に座ってテレビを見てたけど、なんだか今日はすごく眠い。視界がぼやけて、でも他人の家で寝るのも申し訳ない気がして、頑張って意識を保っていた。…のだけど、僕が眠いことを知ってか知らずか、会長が頭をなでてくるから、つい力が抜けてしまって、視界が閉じられてしまった。それからまたしばらく、頭をなでられている心地よさに身を委ねていたら、だんだん会長の動きが緩くなってついに止まってしまったから、どっか行くのかな、なんて思っていたその時。何か暖かくて柔らかいものが額と頬に当たった気がして、少し意識が戻ってしまった。おそらくキス…だろうが、なんで今そんなことをしたのか。考えているうちに、会長がぽつり、と。
「好きだよ、蒼井」
…は????
何、何のいたずら??そう思って思わず目を開けてしまって、そのままの勢いで上を向いて会長の顔を覗き込む。しかしもう寝てしまったようで、いくら声をかけても会長は起きなくて、真意はわからなかった、けど。声が、ひどく優しかったから。
きっとそういうことなんだろうな。
…まあ、僕も鬼じゃないし。きっと会長は聞かれたくなかっただろうから、言わないでやることにする。それに、会長が逮捕されるのは本意じゃないし、泊まり先がなくなっても困るし。
とりあえず、このまま寝て風邪をひいてしまわないよう、ブランケットでも持ってきてやろう。そう思って、僕は寝室へ走った。