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〈kintoki side〉
nk 「旧校舎行ってみない?」
今日も相変わらず厚い雲が学校に覆い被さっては水たまりに雫を落とし続けている、気だるい朝だった。
いつものようにスマイルが教室にきては静かに眠そうな挨拶をする。そんな彼になかむが声をかけた
正直、こういう話はあまり乗る気じゃないだろうなと思っていた。スマイルは変に真面目なとこがあるから
sm 「旧校舎?あの噂になってる?」
nk 「行くって言ってもチラッと見るだけだけどさ」
sm 「大丈夫なのそれ。だって立ち入り禁止じゃなかった?」
kn 「まぁ、入り口付近なら平気じゃない?」
sm 「、、、。行く」
nk 「よし、今日の放課後行こうぜ」
意外だった。
少し悩んでいたようだけど長い髪から見えるそのアメジスト色の瞳がきらりと大きくなるのがみえた
…………………………………………………*
〈nakamu side〉
旧校舎は今の新校舎から少し離れにあって、あまり管理が行き届いていないんだろうと憶測できるほどに木は生い茂り、壁は茶ばんでいて、扉は錆がすごかった。
明かりも少なくて冷たい空気を纏うこの感じに背筋が伸びる感覚がする
nk 「じゃあ、開けるよ。」
ギィィッ
nk 「なに、これ」
sh 「これやばいよ」
扉を開けた先はほぼ闇に近くてあまり見えないが、窓から入る微小の明かりに照らされると見えたのは、紅い霧に覆われ、紅い水がスネの半分くらいの高さまで浸水?いや、この空間にだけ溜まっている。扉からは流れ出てこない。
こんな中、女子生徒はここに入ったのか?
その禍々しい光景に俺たちは自然と固まってしまう。
きっとこの中に入ったらダメだ
確証もないけれど本能が忠告している。ここで好奇心だけに従って進んでしまうほど俺はそこまで馬鹿じゃなかった。
nk 「だめだ、帰ろう」
br 「、うん。」
冷や汗をかき、顔は少し青ざめて肩が上がるような呼吸になっているのはみんなも同じだった
ただひとりだけ。
みんなが戻ろうと歩き始めても彼はずっと旧校舎を見ていた。
kn 「スマイル!」
きんときが声をかけようにも返事がない。
ただあの空間に釘付けになっているその眼は少し恐怖にすら思えた。
離れたところで彼がこちらへ来るのをまっていたその時、彼はやっと歩き始めた
旧校舎に向かって。
sh 「スマイル!?」
br 「あれやばいくない?」
誰もがそう感じた。あそこに行ってはダメだと止めなければ、と。
けれど思っているのにあの光景がフラッシュバックすると足がすくんで動かなくなってしまった
俺たちができるのは彼の名前を呼んで危険を知らせるだけ。それでも彼の耳には届いていないようだった
〈smile side〉
なんだろう、この感覚。
きっと中にはまだ何かがある。
不思議と身体が動く。
扉が近くなる。
水に触れてみたらという好奇心が湧く
フワッ
空気が揺らいだ
風が髪を撫でるように、あるいは羽が頬をくすぐるような優しく心地の良い風だ。
旧校舎には天使の梯子に照らされて、あかりが中を照らす。眩しくて、辺りは白い光と共に紅い霧は溶けて無くなった
すると校舎の中がよく伺える
チリンッ
あ、いた。多分あれだ
鈴の音が軽やかに響いて後ろ姿で髪をくくっている着物姿の女性。こちらに気がついていないようだ。声をかけてみよう
手を伸ばしたけれど俺の手に触れたのは違うものだった。
あぁ、お前はいつも俺の心配ばかりする
パシッ
ハァッ、ハァ、
sm 「きり、やん」
kr 「、、、、」ハァッ、ハァ
kr 「だから言っただろこの馬鹿っ!!」
その声にはっとして正気に戻った
sm 「きりやんごめっ」
kr 「危ないから行っちゃダメだってあれだけ言ったのに、なんでっ、、」
内臓が出そうなほど強く俺を抱きしめる彼は、顔は見えなかったけれど声も身体も震えていた
sm 「ごめん。」
全身の力が抜けて、瞼で視界が閉じられた
〈kiriyan side〉
nk 「スマイルっ」
kr 「平気だよ。眠っただけ」
ホームルームを終えていつもなら聞き慣れた声が廊下から聞こえてきて、空き教室とやらで暇を潰そうだなんて言いにくるのに今日はやけに静かだった。
なんだ、?変な感じがする
その違和感は正しかった。いつもトイレ掃除を行うはずのスマイルの姿はなくて、俺は気付けば学校中を走ってまわっていた
kr 「っ、、!?」
校庭に走り出すと強い刺激臭が鼻を刺してふらつき少し視界が歪んだ。その刺激に耐えながらも匂いの元になる場所へと走り出す。
旧校舎からだった。
するとそこには立ち尽くしたみんなと扉に入ろうとする彼の姿。手遅れになってしまう前にと俺は覚悟を決めるしかなかった
br 「え、きりやん、、」
br 「今のきりやんがやったの?」
kr 「今のって?」
kn 「あの天使の梯子みたいな明かり、って」
バレてしまった。
kr 「ちゃんと話したいから、いつもの場所行こ」