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詩の回想
天界の冷たい法は、人間に恋をした私から翼を捥ぎ、この泥濘のような現世へと叩き落とした。
神の座を追われ、ただの「人」になった私を待っていたのは、絶望という名の病だった。
けれど、奏だけは、ボロボロになった私を見つけ出し、その小さな手で私の泥を拭ってくれた。
「大丈夫だよ、詩。僕が君を守るから。君が神様じゃなくなっても、僕は君を愛し続けるから」
その言葉だけで良かった。それだけで、私は人として生きていけるはずだったのに。
運命は、どこまで私を嘲笑うのか。
私の追放に抗い、私の命を繋ぎ止めるために、奏はあろうことか「死神」と契約を交わした。
私の目の前で、光を失っていく奏の瞳。
奏「詩、泣かないで。これで・・君は、助かる・・・」
違う。私が欲しかったのは、永遠の命なんかじゃない。君のいる、ただの明日だった。
奏が息を引き取った瞬間、私の心の中で何かが真っ二つに割れた。
許さない。奏を奪ったこの世界も、天界の法も、すべて。
私は奏の亡骸を抱きしめ、禁忌の手帳を開いた。
たとえ、数多の魂を「燃料」として喰らう悪鬼に成り果てたとしても。
この「終わらない放課後」の中で、私はあの子を……私の愛を、永遠に閉じ込めておくと決めた。
黄金色の夕日は、あの日から一ミリも動いていない。
私は、百年間。
ずっと、ずっと、この動かない空の下で、もう二度と笑わないあの子の影を見つめ続けている。
どうしてだろう。私が望んだのは、あなたの幸せだけだったのに・・・・