TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

『循環の迷宮』探索の3日目、午後は5階からスタート!


5階は風もそれなりに吹いていて、3階と同じように川が流れていた。

天井からはたまに水滴が滴っているけど、気になるほどではないかな。


パシャッ


「――お?」


不意に音のした方を見てみれば、魔物らしき魚が飛び跳ねていた。

バーナビーさんが言っていたこの階の魔物……触りすぎると生臭くなるという、ある意味ではやっかいな魔物だ。


そんな魔物の一匹が川から飛び出して、ぴちぴちと跳ねながら地面を移動している。


「……陸を移動しているとか、何だかアグレッシブな魚ですね」


「そうですね……。それにしても、隙だらけですよね……」


「それじゃルーク、倒しちゃおうか」


「はい」


ザシュッ!


魚の魔物は、ルークの一撃で倒された。


「……特に何事もなく」


あっさり息絶えた魔物を眺めていると、徐々にその身体が消えていく。

ドロップは何も無かったし、このダンジョンに入って以来のまったく盛り上がらない戦闘――


「……いや、殺気が膨れ上がったね」


「そうですね。アイナ様、エミリアさん、ご注意ください」


「え? 殺気って――」


私が口にした瞬間、川から凄まじい勢いで魚の魔物が跳ねて飛んできた。


「ひょわっ!?」


エミリアさんは変な声を出しながら、かろうじて避けている。

それを皮切りに、魚の魔物が大量に姿を現して、次々と私たちに飛び込んでくる。


「もしかして、最初の魔物を倒したから!?」


「多分ね! エミリアさんも迎え撃って!」


「は、はい! シルバー・ブレ――っどぉ!?」


エミリアさんの詠唱が終わる前に、魔物がエミリアさんの顔にぶつかった。

……うわぁ、かなり痛そう。


「エミリアさん、大丈夫ですか!?」


「だ、ダメです……。生臭い……」


そっち!?


思わず頭の中でツッコミながら、エミリアさんに引っ付いた魔物を杖で払う。

実際のところ、杖で追い払えるくらいだから……そんなに強いわけでも無さそうだ。


しかし、問題はその量だ。1匹1匹は強くないけど、集団になったら強い……そんな魔物なのだろう。

それに大量に湧いた魔物のせいで、辺りが生臭くなってきたような――


「……ああ、この臭い……。ちょっと苦手かも……」


「さっきまでは綺麗な空気だったのにね!

でも、文句は後まわし。エミリアさん、早く手伝って!」


「は、はぁい……」


ようやく起き上がったエミリアさんは、自身にヒールを掛けながら戦線に戻った。

少し顔周りの臭いを気にしているようだけど、それには触れてあげないのが優しさだろう。


その後しばらく大量の魔物と戦い続けていると、その数は徐々に減っていった。

かなりの量を倒したはずだけど、倒してしばらくすると消えちゃうから、数はよく分からないんだよね。


「……よし、これで最後ね」


リーゼさんが最後の1匹に止めを刺すと、ようやく静かな空気が訪れた。……若干、生臭いけど。


「はぁ、お疲れ様でした」


「アイナさーん……、何か臭いを取るようなアイテムはありませんか……?」


エミリアさんが、泣きそうな声で言ってくる。


「えーっと、以前こっそり作った石鹸くらいですかね……」


アイテムボックスから石鹸とタオルを出して、エミリアさんに渡す。


「ありがとうございます! ちょっとそこの川で――

……洗おうと思いましたけど、ここの水って大丈夫でしょうか。

さっきの生臭い魔物がいたわけですし……」


「言われてみれば、生臭い成分が溶けているかもしれませんね」


「そ、それは嫌です……! アイナさん、お水もください!」


水の在庫は減ってきているんだけど、今回は仕方が無いか。

とりあえず、まずはエミリアさんを綺麗にしてしまおう。


「はい、お水もどうぞ。

残りが少なくなってきたので、そろそろ補充をしておかないと」


「明日で間に合うなら、6階の滝で調達しませんか?

この階のお水でも出来るでしょうけど、気分的に嫌なので……」


エミリアさんが珍しくワガママを言う。


「そうですね。今日の分は大丈夫なので、明日にしますか。

滝の水ならいろいろな意味で綺麗でしょうし、気も滅入ることは無いでしょうし」


「まぁ、どちらにしても先に進まないとね」


「そうですね。

……あ、そうだ。ドロップの確認をしておこうかな」


倒した大量の魔物はすでに全部消えており、地面には小さい宝石や鱗のようなものが落ちている。

とりあえずそこら辺のものをかんてーっ。


……うーん。これは結構宝石が多いかな……?

あ、これは――


──────────────────

【虹色の鱗】

七色に輝く貴重な鱗

──────────────────


……初めて見るものを発見! これは価値があるのかな?

値段を鑑定すると、およそ金貨1枚くらいのようだった。


そんなに安くはないけど、そんなに高くもない。……何とも絶妙なところだ。


「ドロップは魔物の強さに比例する、なんていう話もあるからね。

これくらいの強さだと、これくらいのものしか落とさないのかな?」


「一応この鱗、金貨1枚くらいみたいですけど……高いのが出ても、これくらいなんですかね?」


「それだとしたら、実入りの少ない階だよねぇ。

6階はちらっと見るくらいだから、実質ここが最後の階になるんでしょ?」


「そうですね……。

でも宝箱があります! 宝箱に期待しましょう!」


「5の倍数階の宝箱には良いものが入っているという話もあるし、期待することにしようか」


「はい、きっと良いものがありますよ!」


ドロップがダメなら、きっと宝箱の中身が優秀!

この世界はきっと、そういう感じでバランスが取れているに違いない。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




5階を散々歩き回った結果、なんと宝箱を発見することは出来なかった。

魔物の群れとは何回か戦ったものの、そちらでも特に良いものは落とさず……。


つまりこの階で一番高価なものは、最初に拾った『虹色の鱗』になる。

それ以外には宝石のドロップも少しあったが、小さく細かいものなので、売値としては安いものばかりだった。



「――アイナさん、みなさん、お疲れ様です!」


6階への階段があるスペースで出迎えてくれたのはバーナビーさんだった。


「お疲れ様です! ああー、5階も終わってしまいましたか……」


「おや? どうかしましたか?」


「実質、私たちの最後の階だったんですけど――

……宝箱はありませんでしたし、ドロップも全然だったんです」


「ああ、この階のドロップはしょっぱいですからね……。

逆に、宝箱には結構良いものが入っていたりするんですよ」


「宝箱……。

一縷の望みではあったんですが、1つも見つけられず……」


「ははは、ダンジョンなんてそんなものです。

でも何回も通っていれば、いつかは欲しいものも手に入れられるでしょう。だからこそ私たちは――」


「リーダー! くっちゃべってないで、ご飯の準備~!!」

「あとで話せば良いだろう。夜は長いんだから」

「……アイナさんたちも、野営の準備しなきゃでしょ……」


バーナビーさんの話が長くなりそうになった途端、向こうのパーティの面々がツッコミを入れ始めた。

このパターンもずいぶん慣れてきたなぁ……。


「す、すいません!

それではお互い野営の準備をして、それからまたお話をしましょう!」


「そうですね。あ、お隣のスペースは空いていますか?」


「大丈夫です! ささ、どうぞどうぞ」


私たちはバーナビーさんに促されて、彼らの隣に設営させてもらうことにした。

近くに設営が出来たら、それだけで交流もしやすくなるからね。

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

61

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚