ついにこの時が来てしまったか……
せっかく美桜と甘いひとときの余韻を楽しんでいた時に恐ろしい電話がかかってきた。出るまで鳴り止まない恐怖の電話だ。【姫咲】(きさき)と表示されている画面を見て大きな溜息が出るが、震える指で通話ボタンを押す。
『隆一!!! 招集よ!! 明日朝からうちに来なさい』
聞きたくない声とフレーズがキーーーンと耳を突き抜ける。
「うるさ……いや、無理だから、っておい、ちょっと」
……切られた。全身がズーンと一気に重たくなる。
明日は美桜と結婚指輪を買いに行く予定なのに。それでも行かなきゃヤバイ、と本能が感じとる。
布団がもそりと動き布団の隙間から俺を覗き見る美桜。控えめに言って可愛すぎる。それなのに俺は今から明日の予定をドタキャンしようとしているなんて本当に最低だ。罪悪感で一杯になるが、意を決して美桜に断りを入れる。
「あ、ごめん。起こしちゃったね」
「ううん、大丈夫だよ。電話大丈夫?」
「あー、それなんだけどさ……」
理由を言わずに指輪を買いに行くのは来週でもいいかと聞いたら全く躊躇わずにいいよ、と言われちょっと凹んだ。でも俺が明日行く場所はどうしてもバレたくない。見られたらとんだ痴態を晒す事になるのだから。
明日行きたくねぇ……と思いながら美桜を抱きしめて眠りについた。
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