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「子宮を取らないと危険な状態です。」
いきなりそんなことを言われてすぐ判断できる能力は俺には備わっていなかった。
数時間前。いつものように俺の恋人、陽太は仕事に出かけた。そして1本の電話が来る。
「橘株式会社の山田です。陽太さんが階段から落ちてしまい病院へ搬送されました。ワシタカ病院に搬送されました。」
「陽太が!?ひなは、ひなは大丈夫なんですか!?」
「私は現場を見ていないのですが、落ちたときに腹を打ったらしく……」
「わかりました。今すぐワシタカ病院に行ってきます」
「承知しました。では」
陽太、陽太、お願いだ。生きていてくれ。生きていてくれるならそれ以上望まないから_
病院に着いた。看護師に声をかけ陽太の元へ行く。担当医が淡々と話し始めた。俺は今にも溢れ出そうな涙をぐっと堪え聞いた。
「陽太さんはお腹…子宮を強打してしまい中で出血、腫れをおこしています。」
「子宮を取らないと危険な状態です。陽太さんはオメガですよね。子供は産めなくなりますが……」
「ひなたのいのちを最優先でお願いします。」
心はぐしゃぐしゃだった。最近は特に子供が欲しかった陽太。俺が忙しくってなかなかセックスするタイミングもなくてこの間話し合ったばっかりだ。ひなたは泣きながら俺に訴えてきたんだ。「赤ちゃん欲しい。俺たちだけの赤ちゃん……。」
なんてタイミング。この先陽太は赤ちゃんを産めなくなる。でも、、それでも陽太の命が1番だ。
「お願いします。」
そして医師は紙を出した。これにサインすれば手術が行われる。こんな、紙切れにインクを特定の形に伸ばすだけで、俺たちの夢は消えるのだ、なんて酷いのだろう、たかが紙切れでも……命の保証が着いてくる。俺はインクを特定の形に伸ばして提出した。
「チカッ」
手術開始から数時間後、手術中と書かれたランプが緑に変わり医師が出てくる。
「手術は成功です。陽太さんは麻酔がまだ切れてないので数時間後に目を覚まします。」
「ありがとうございます。」
頭を低く、さげる。
「あ、1つ、子宮がなくなってもヒートが高確率で来ます。ですが術後は薬は服用出来ないのでご注意を」
「わかりました。気をつけます」
数時間後、陽太は目を覚ました。
「ん、、……」
「ひなたっ!起きたか」
「りゅうくん……?あれ?僕階段から落ちて、病院に運ばれたってこと?」
「そうだよ。ひなは助かったんだよ。」
助かった。間違いじゃないけど……心苦しい
「そっか…よかった。まだ竜太朗くんと一緒に居れて」
「俺も陽太と一緒にいれてうれしいよ。」
「えへへっぎゅーしよ」
「うん……」
術後の体を気にして優しくハグをする。幸せだ。俺の判断に間違えなんてない。、そう言い聞かせた。
陽太が退院した。子宮を取ったことまだ言えていない。俺ですら整理しきれていない。陽太はもっと無理だろう。そう考えた。