今日は珍しく一人だった。
いつも数人はいる美術室。
今日はたった一人で独占してる気分。
時間なんて目にもくれず、昨日描いた絵に色付けをしていた。今日はサッカー部はオフなので、ちょうど良かった。
いつも通り大量の赤い絵の具をパレットに出して、他の色を少量足して赤に差分を作っていく。
少しでも自分の目に映る特別なフィルターもどきがかかる君の姿を絵に表せるようにと。
ur「え、っとー、、、」
集中しているのは気持ちよかった。
独り言を言ってもいい。歌を歌ってもいい。
そんな誰も入ってこない空間で大好きな絵を描き続けられる幸せと言ったらこれ以上の幸せはないと思う。
しかし、この空間に人が入るのは容易であり、その瞬間だってすぐ来るのだった。
ガチャ
のあ先輩かな。なおきりさんかもしれない。だとしたら俺にすぐ声をかけてくるはずだし、違うのかな。
あ、もしかして、それ以外の美術部員かな。放課後の美術室なんて美術部員以外出入りすることなんてないだろう。
?「あの、先生いますかー??」
ur「へ、?」
知らない声、誰だろう。本当にその思考は一瞬だった。知らない人なら、誰だろう。振り返ってみよう。こんな簡単な思考も一瞬でできてしまった。
振り返ってみると知ってる顔。俺がいつも見てる顔。なんなら、今も思い出して描いていたところだ。
まずい、直感で思った。
とりあえず、答えないと。
ur「え、あっ居ないです。」
?「そっか、、、あ、戻ってきたらさ言っといて欲しいんだ。」
ya「三年生の赤部ゆあんが尋ねてきましたって。」
ur「はい。」
ya「ありがとー!!!」
本人だよね。何度も見たから分かる。あの整った顔立ちに明るい笑顔、程よくついてる足の筋肉、少し控えめな腕の筋肉も、全て窓越しに見ていた君だった。
俺の絵見られてなかったのかな。
なら俺にとっちゃ好都合だけど。
見られていたのなら、俺はもう終わりだ。気持ち悪い人間として彼の中で印象づいてしまう。いや、しまった。の方が正しいか。
見られてないのを願う。
ya「え、あの絵って俺じゃない?めっちゃ似てるんだけど、、、。」
美術の先生が職員室にいなかったから、美術室かな。と思って行ってみた。
すると、きっと上履きの色的に一年生の子がひとりで絵を描いていた。ひとつ後輩か。一人で頑張ってるのに邪魔しちゃ悪いかなと思いながらも、先生がいるか聞いてみた。
ふと視界に入った、彼が描いていた絵。
単色、しかも赤が主体で使われていたので気になって見てみた。
すると、躍動感のある絵で、サッカーボールも描いてある。え、この赤い目と髪型、そして何よりも背番号が俺だ。
彼がどんな思いで描いてくれているのかは分からないけど、綺麗と思ってくれているのであれば、凄く嬉しい。
ya「出来れば、また見に来たいな、」
彼が見ている美しい世界にいる俺はどんな色をしているのだろうか。
気になって仕方がなかった。
yaくんが認知しましたね。まだ知り合いとも言えない関係、顔見知りくらいなのが、これからどうなるのかー!!!
コメント
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えええさいっこうめっちゃすき🫵🏻💞💞 鼻歌うたってるのも可愛いすぎないか!? そしてyaくんが年上!!!先輩後輩大好き😖 続きたのしみー!!