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20
あまね🍡💠
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十五年前――。
ZEROへ届いた脅迫状。
その一件は、警察にも届け出られた。
だが――。
「現時点では悪質ないたずらの可能性もあります。」
警察は慎重な姿勢を崩さなかった。
蓬萊は静かに頭を下げる。
「よろしくお願いします。」
警察署を出ると、義一が口を開いた。
「……警察だけじゃ難しいかもしれません。」
蓬萊は頷く。
「ええ。」
「ですが、私たちも冷静でいなければなりません。」
-–
数日後。
ZEROが講演会を開く予定だった公民館。
朝早く訪れた詩織は、その光景に立ち尽くした。
「……えっ。」
壁一面に赤いスプレーで落書きがされていた。
『能力教育反対』
『ZEROは消えろ』
『能力社会こそ未来だ』
机や椅子は倒され、配布予定だった資料も床へ散乱している。
さらに――。
入口付近には黒く焼け焦げた跡。
資料の一部が燃やされていた。
幸い火はすぐに消えていたため、大きな火災にはならなかった。
しかし。
その場にいた誰もが理解した。
これは偶然ではない。
明確な敵意だった。
-–
連絡を受けた義一は、すぐに現場へ駆け付けた。
床を確認する。
窓。
出入口。
鍵穴。
周囲の足跡。
一つずつ丁寧に調べていく。
「正面から侵入した形跡はありません。」
「窓も壊されていない……。」
義一は焼け跡の前でしゃがみ込む。
「火を付けた後。」
「すぐに消したのか……。」
蓬萊が近付く。
「何か分かりましたか?」
義一は首を横に振る。
「証拠らしいものは残っていません。」
「ですが。」
「犯人は、この建物の構造を理解しています。」
「計画的です。」
蓬萊の表情が曇る。
-–
その頃。
イコル・ヤーレン研究所。
博士は新聞を見つめていた。
『ZERO活動拠点で器物損壊』
『能力教育反対の落書き』
博士は静かに立ち上がる。
その足でZERO本部を訪れた。
「蓬萊さん。」
蓬萊は驚いた表情を見せる。
「博士。」
博士は荒らされた資料を見渡し、小さく息を吐いた。
「理想を守るには。」
「理想だけでは足りません。」
蓬萊は黙って聞いている。
博士は続けた。
「警備も必要です。」
「活動を続けるなら。」
「皆さん自身の安全も守ってください。」
蓬萊は静かに頷いた。
「……ありがとうございます。」
-–
同じ頃。
政府。
能力犯罪対策準備室。
担当者が報告を始める。
「能力関連事件は現在二十九件。」
「そのうち、器物損壊や脅迫事件が急増しています。」
別の担当者が資料をめくる。
「偶発的な事件ではありません。」
「明らかに増加傾向です。」
会議室には重苦しい空気が流れていた。
-–
夕方。
山奥。
木を切る音が響く。
ザンッ。
ザンッ。
一本の大木がゆっくりと倒れる。
若い男が汗を拭った。
真面目そうな表情。
作業服姿。
腰には仕事道具。
男は倒れた木を見つめ、小さく笑う。
「能力って、本当に便利だ。」
その手が軽く動く。
目には見えない刃が飛ぶ。
離れた枝が音もなく切り落とされた。
男は満足そうに頷く。
「これが進化だ。」
「なのに……。」
「ZEROの連中は、それを否定する。」
男は新聞記事を握り締める。
そこには、
『ZERO 能力教育講演』
という見出し。
男は静かに新聞を丸めた。
「俺が。」
「間違いを教えてやる。」
その瞳には、静かな狂気が宿っていた。
-–
夜。
ZERO本部。
メンバーたちは重い空気に包まれていた。
「ここまでされるなんて……。」
「本当に活動を続けるんですか?」
蓬萊は一人ひとりの顔を見つめる。
「続けます。」
「ここで諦めれば。」
「子どもたちへ伝える場所がなくなってしまう。」
静かな決意だった。
義一も頷く。
「俺も警備を続けます。」
「必ず皆さんを守ります。」
蓬萊は微笑んだ。
「ありがとうございます。」
-–
深夜。
義一は一人でZERO本部周辺を巡回していた。
街灯だけが夜道を照らしている。
ふと足を止める。
地面には一本の煙草。
まだ新しい。
義一は周囲を見渡す。
「……誰かいた。」
静かな夜風が吹き抜ける。
その少し離れた建物の屋上。
一人の男が義一を見下ろしていた。
義一は、その視線にまだ気付いていない。
男は小さく呟く。
「次で終わりだ。」
夜の闇が、その姿を静かに包み込んだ。
第63話へ続く
コメント
1件
ああ、ここに来て一気に不穏な空気が濃くなってきたな…。十五年前の脅迫状から始まって、公民館の落書きや放火跡、そして政府の対策室の会話——「見えない敵」というタイトルがじわじわ効いてくる構成だった。 特に気になったのは、山奥の作業服の男のシーン。あの「能力って本当に便利だ」という言葉と、ZEROへの敵意が並行して描かれることで、単なる反対派じゃなくて「能力者自身がZEROを敵視している」構図が浮かび上がってきた。博士が「警備も必要だ」と言ったのも、ただの助言じゃなくて何か知っているからこその警告にも思える。 それに、義一が気づいていない屋上の存在。次の展開がすごく気になる。