もう、無理だ”
これはある春のお話。
「ん〜何時、?」
私が起きた時間には時計は7時を回っていた。
「え!?ちょヤバっ」
私は急いで支度し、勢いよく家を飛び出した
母親に行ってきますの一言も言わずに
里川中学校 3年生 蒼海 宇宙(あおうみ そら)
茶髪の髪が風に揺れる
坂をスピードよく降りていく。
目の前には大きな桜の木が堂々と
立っていたまだ花は咲かせて居ないけど、
とても綺麗だった
「宇宙〜!おまたせ」
と、いつも一緒に登校している
友達の幸野 月(こうの つき)の姿が見えた。
私もニコッと笑って
「おはよ〜待ってないよ今来た」
と返した。
いつも学校まで一緒に行く仲ではあるが、
そんなに仲良くもない。
親友とまでは行かないぐらいの友達仲だ。
「宇宙、そろそろ春だね」
と、月が呟いたのと同時に
月のポニーテールが風に揺られた
「うん、春だね。出会いと別れの季節だ」
そう言ったら月は少し顔を下げた
「うん、どんな出会いがあるかな!」
前を向き月はそう言った。
気がつけば目の前は学校。
見慣れた景色が続いていた。
生徒の歩く靴の音
みんなに挨拶する元気な声
昨日あったことを話す友達の声
そして、ひっそりと風に揺れる木々の音
「じゃ!宇宙またね」
月は手を振って教室に入っていった
「うん、じゃあね」
私も反対側の教室に早歩きで入る。
クラスはまだ静かで、人数が少ない。
「おはよ!宇宙ちゃん!」
声をかけられた。
「おはよ彗ちゃん」
声をかけてきたのは、
私の出席番号の1個前の
藍里 彗ちゃん。(あいざと すい)
相変わらず元気な声を響かせる
「あ!奈美ちゃーん」
彗ちゃんは手を振って行ってしまった。
私は準備を済ませ渡り廊下に出た。
風が気持ちよく、心が落ち着く。
「あれ、先客かな?」
横に背の高い男の子がこちらを覗いていた。
「あ、ごめんなさい」
「いやいいよ話し相手欲しかったし」
とても話しやすい人だ。
名前が出てこない
全員の名前は覚えたはずなのに、
「君、三組の子だよね。蒼海 宇宙ちゃん」
クラスも名前も当てられてびっくりした。
関わったこともなかったのに
「まぁ、そうだよ」
彼はニコッと笑った
「やっぱり?見た事あったんだよね」
と、こちらの顔を覗いて言った。
すごく距離感が近い人だと思った。
「そろそろ教室に戻る時間だね」
私はすぐ時間を終わらせたかった。
「そうだね、戻ろうか」
私は首を縦に振って、
彼の前を早歩きで歩く。
クラスが違うから名前を思い出せなかった。
全員覚えたはずなんだけど、
とか思いながら私は席に着く。
窓際の前から3番目。
私の居場所となった場所。
時刻は8時を回った先生が教室に入って来た。相変わらずの誇らしげな顔、
毎日見るこっちの身にもなって欲しい。
私たち三組の担任。
与沢 大知先生。(よざわ たいち)
学年の社会科担当。
相当みんなにはウザがられている。
もちろん私も、担任と同じ空気を
吸いたくないぐらい嫌っている。
ホームルームが始まっても
少しザワ付きが収まらない。
それもそうだ問題児が
5、6人集まったのだから。
私は窓の外を見た。
毎日同じ景色を窓から見ている。
先生の話も多少は聞いている。
親友と言えるほどの友達がいないから、
聞き逃すと誰にも聞けないのだ。
授業中もよく居眠りをする。
そのせいでテストの結果もだだ下がり。
評価も落ちてきた。
自業自得。それは分かっている。
ただこんな私にも頑張ることはある。
部活動。
私はオーケストラ部に入ってる。
中学なら吹奏楽部が主流だろうけど、
人が多すぎて吹奏楽部から
オーケストラ部に変更になった。
そのおかげ、弦楽器も増えて
たくさんの管打楽器が購入された。
私は、サックスを担当しているけど、
もう1人の子がとても上手く、
追いつくことが出来ない。
その子は部長。
とても負担が大きいのに練習に
絶対力を入れる。
そこが私との違いなのだろう。
そう考えているうちにもう
5時限目まで終了していた。
1日そんなことしか考えられない
つまらない日々だ。
「蒼海さん!」
渡り廊下でであった彼の姿があった。
私はニコッと笑い
「どうしたの?」
と返した。
「あのさ、まだ僕の名前言ってなかったって思って来てみたんだ」
たったそれだけで、と思ってしまった。
彼はとても目を輝かせていた。
彼にとっては重要なことなのだろう。
「改めて僕の名前は丸井 千秋だよ」
(まるい ちあき)彼は名乗った。
名前を聞いてハッとした。
彼はリストに入っていなかった。
「丸井くんね。よろしく」
私はそう流しておいた。
なぜだろう。
職員室の名簿を何度も何度も読み返しても
彼の名前は一切記入されていなかった。
静かな帰り道。
私は彼のことをかんがえた。
生徒なのに何故か名簿に
記入されていなかったそんなことは
有り得るのか、
「んー。難しいよ〜!」
私は後ろを振り返った。
登ってきた長い階段の上からの景色は
とても綺麗で夕日が青い空を
赤く染めていた。
思わず見とれてしまうくらいそれは
綺麗で大きな空のキャンバスに
赤い絵の具で上書きしたかのようで
吸い込まれる美しさだった。
彼のことは頭の隅っこに投げ捨てていた。
私はひたすら歩き、
家に着いた
「ただいま」
「あ、おかえり宇宙」
母親が顔を出してそう言った。
私は一言“うん”といって
部屋に一直線。
そのままベットに飛び乗った。
大好きだったアイドルも最近は冷めてきて、
大好きだったゲームもあまりしなくなった、
大好きだったことがどんどん離れていく
あんなに楽しかったのに。
「ぁぁあ!なんでこうなっちゃうの、、」
私は涙を流した。
心のどこかでもう無理だという
言葉が何度も繰り返される。
どんなに上書きしても
また上書きが消えて
何度も何度も繰り返される。
「宇宙〜ご飯だよ」
母親の声が家に響き渡る。
「はーい今行くー」
私も届くように返事をした。
お風呂も晩御飯も歯磨きも終わり、
あとは寝るだけとなった。
寝る前に
学校のことを考えると
とても息が苦しくて、ベットから落ちた。
ヒリヒリと痛む肩、
けど、こんなのは初めてでは無い。
母親には隠しているけど、
本当はもっとあった。
無視しすぎて考えていなかった。
ベットから落ちるのは久しぶりだった。
滅多に落ちないし、
そんなたくさん落ちてたら
ベットじゃない方が安全だ。
寝れる気がしなかったから
マンガ本を積上げて朝まで読んだ。
朝まで何かをするのは当たり前になり
起きるのすら努力しなくなった。
「あー、疲れた」
それが私の口癖でよく、変わりなさいと
言われていた。
ベットに戻りスマホで色々していると
いつの間にか眠りについていた。
よく朝と夜の性格が違うと言われる。
そんなことを考えながら
夢の中へひとりで堕ちて行った。
「あれ、寝てたんだ」
起きた時には時計は7時を指していて
慌てて飛び上がった。
また昨日と繰り返しの朝。
母親はもう仕事に出ている。
そこが昨日とは違った。
今日、ドアを開けようとしても
足が動かなかった。
全然思うように動いてくれない。
その瞬間扉の前で私は
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