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テラーノベル(Teller Novel)
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(ウソだろ! さっきまで俺の寝室で、卑猥なことをしていたヤツの態度とは思えない。少しは慌てるとかしないのかよ)

「アンドレア様、なにかお困りでしょうか?」

らしくないくらいに動揺した俺を見たからか、カールにいつもの調子で訊ねられたことで、この状況に困り果ててしまった。

「アンドレア様?」

「カールは……その、どこに行ってた?」

「プレザンス家の家系図やら歴史関連の類を、書庫で探しておりました。リリアーネ様が、お勉強をしたいそうです」

そう言い切ったカールの手には、それらがあって、五歳年下の妹のために用意したのが明白だった。

「アンドレア様、本日のお茶会で困ったことがありましたか? なんだかお顔の色が優れないようですが……」

「俺よりも、おまえの方が心配だ」

「私ですか?」

「なにか、ガマンしていることはないのか?」

好きな気持ちをひた隠し、俺に仕えるのは無理をしているのがわかる。

「我慢なんてそんなこと、なにもございません。優秀なアンドレア様にお仕えすることができて、本当に幸せですよ」

ふわっと柔らかい笑顔を浮べて、うまく誤魔化されたことで俺は心を痛め、俯いて両目を閉じた。これから告げることを聞いたら、カールが苦悩するであろうセリフを口にする。

「俺が伯爵家当主になって、見合い相手と結婚し、子だくさんになったら、俺の面倒よりも、子どもらの面倒をカールが見ることになるかもな」

(俺を好きなカールが、嫌なことだと思う未来を言ってやったが、さてこれにたいして、どう答える?)

「見目麗しいアンドレア様のお子様がたくさんなんて、目の保養になりそうです」

とても嬉しそうにほほ笑むカールに、俺は顔を上げて首を横に振った。

「好きでもない相手と結婚なんて、俺はしたいと思わない」

本音を言った俺に、カールはやるせなそうな表情で諭すように告げる。

「しかし伯爵家繁栄のためには、そうしなければなりません」

「そうだな……。俺にはその道しかないんだから、しょうがないよな」

脇に控えた両手を、ぎゅっと握りしめた。こんなくだらないやり取りをさっさと終えて、カールを解放したいのに、淡い期待がそれを押し止める。

「アンドレア様、好きでもない相手と結婚したくないということは、どなたか好意を抱いているお方が、いらっしゃるのでしょうか?」

「いるとしたら、おまえはどう思う?」

「どう思うと言われましても……」

俺の返答で、カールの瞳が落ち着きなく左右に揺れた。

「カールこそ、誰か好きなヤツがいるんだろ?」

「えっ?」

「最近、気持ちの浮き沈みが激しいと思ってさ。なんていうか、一喜一憂してる感じ」

ここ最近のカールを思い出し、あえて指摘したら、胸に抱えていたものを小脇に移動させ、頭を深く下げる。

「アンドレア様の瞳に、いたらないわたしが映っていたとは、大変申し訳ございません」

「謝ってほしくて言ったんじゃない。俺と違って、おまえは執事だろ。しかも、男爵という爵位もある。好きなヤツがいたら、いっしょになりやすいだろうなと思って、聞いてみただけだ」

話しかけながら肩に手を添え、頭をあげさせた。カールのまなざしは相変わらず困惑な気持ちを滲ませており、俺に聞かれた質問に答えたくないのが、手に取るようにわかる。

「俺はカールが好きだ」

心を込めて告げた。静まり返る廊下に俺の声が響き、カールが息を飲む。

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