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桃草蓬が唾切のいる部屋に辿り着いたとき、守もいた。
蓬はすぐに戦う体制をとったが守に止められた。
「お別れをしたいんだったら、支部の外の方が良いですよ」
「…ご忠告、痛み入るっす」
寂しそうに笑う守を警戒しながら蓬は唾切の肩を担ぐ。
(何か、この鬼…既視感がある)
落ちてくる瓦礫を守が退かしながら外へ出る。
守が世間話でもするように言った。
「桃樫波って桃太郎、分かります?」
その名前は、唾切も、上司だった真中も、もちろん蓬も、新人時代にお世話になった人物であった。
優しく、強い。そして、 鬼と駆け落ちしたと噂になっていた人物だった。
(既視感は、これっすか)
変に納得しながら蓬は「はい」と答えた。
「では、彼と仲の良かった桃太郎は?」
守は全てを見通すように聞いた。
蓬は少しどもってから答える。
「…_っす」
守はその答えを聞いて「ありがとうございます」と丁寧にも礼を言った。
「ここからは別の道です。また会いましょう」
「あんた、もしかして…」
にこりと笑ってから「お元気で」と背を向けて歩き出す守を、蓬は引き止めることができなかった。