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「もう、いいよね」
その一言で、空気が変わった。
俺はゆっくりとスマホを取り出す。
震える指で画面を開いた。
「全部、残ってる」
再生ボタンを押す。
——「土下座しろよ」
——「動画撮っとくわ」
教室に、自分たちの声が流れた。
一瞬、静まり返る。
「……は?」
さっきまで笑っていた連中の顔が固まる。
「そんなの証拠にならねえよ」
それでも、強がる。
でも——
「それ、うちの顧問弁護士に送るね」
彼女が、前に出た。
「……は?」
「あと、この学校の理事。うちの父だから」
その一言で、
空気が完全に止まった。
「ま、待ってくれ……」
「出来心だったんだ……」
さっきまでの余裕は消えていた。
誰も、笑っていない。
——やっと、終わった。
「ねえ」
隣から、声がする。
「昔、覚えてる?」
「……え?」
「迷子になって、泣いてた私に」
「声かけてくれたよね」
頭の奥に、記憶がよみがえる。
小さな公園。
泣いていた女の子。
——あの時の。
「……お前、まさか」
彼女は、少しだけ笑った。
「やっと見つけた」
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
教室を見渡す。
さっきまでの空気とは、まるで違った。
誰も、もう笑っていない。
「……これからは」
自然と、言葉が出た。
「ちゃんと、自分で生きる」
彼女が、隣に立つ。
——もう、一人じゃない。