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最高です!
はい、神作。
にぇへへへへへ(´^ิ益^ิ`) ええのぉ……
大きなショッピングモールの自動ドアが静かに開くと、外の光が中に差し込む。
カラフルな看板、通路に行き交う人々──
全てが新鮮で4人の瞳が一斉に輝き、思わずテンション高めに声を漏らした。
「すげー!!」
「これが外の世界…!」
ばぁうは周りをキョロキョロ視線をやりながら興奮気味でメルトも子供の様にぴょんぴょん跳ねて、てるとの腕にしがみつく。
「‥人、すごい沢山。」
「うーん、まずは散策だよな?でも何処から行けば…?」
やなとは人の多さに圧倒されててるとの袖口を少し掴む。あっとも落ち着いてはいるが、流石に動揺した表情で腕を組む。
「…やっぱり休日は混んでるねー、」
てるとは週末は少し混雑しているかなぁと思っていたが、予想を超えてしまう。普段休日の日もほとんど家から出ないし、元々人混みの多いところにあまり外出しない。
今日は同居猫4匹…元い、この4人の彼らとの外出デビューの日。やっぱり初日に人が多いところは避けるべきだったかな?とてるとは思ったが、彼らの物珍しいそうな目で周りをキョロキョロしながら散策する姿はとても楽しそうだ。
「なぁ見ろよ!あれ動いてるぞ!」
ばぁうが勢いよく飛びつきそうな勢いで、デジタルサイネージのアニメCMを指差す。
「こんなのテレビと変わんないよー」
メルトが笑いながら袖を引っ張るが、その目もキラキラしている。
やなとは、食品サンプルの前で固まっていた。
「……これ、本物…?」
「それは見本。本物じゃないよ。」
「え、ほんと?全部本物そっくり」
ふわっとした口調なのに、顔はものすごく真剣で、てるとは思わず吹き出した。
「お前ら落ち着いて。ばぁう、店内は走るな。危ないだろ」
あっとの冷静さは流石だなぁと感心して見ているとこちらに微笑み返してくれた。
「てるちゃん、ごめんね。騒がしくて」
「ううん。あっとが居てくれるし、安心だよ」
「てるちゃん!あっと!早く来いってー!これ乗ってみよー!」
ばぁうが指を指す先にエスカレーターがあり、てるととあっとは目を合わせてやれやれといった表情でみんなの後に着いていく。
4人はそれぞれ、てるとの後ろに並んでエスカレーターへ踏み出した。床が動いていることに驚愕しながら上へ上がる。
「…えっ…えっ待って!あの人たち見て」
僕たちより前の列に乗っている数人の女の子たちがこちらを見て騒ぎ出した。
「きゃっ、カッコよすぎぃ…え、モデル?」
「えっ、あんなイケメン見たことないんだけど‥!」
自分の後ろでエスカレーター初体験を楽しむ4人は、それに気付いていない。
ショッピングモールに辿り着く前も周りから何度か視線を感じることがあった。そう、彼らはマジでビジュが良い。長い脚、綺麗な顔立ち、立ち姿のバランス――どれを取っても人目を引くくらい目立つ。
エスカレーターを降りると、先程騒いでいた女の子たちが押し寄せてきた。てるとは「うわっ」と思わず一歩下がる。
「突然すみませんっ‥お兄さんたちカッコ良いですねっ!」
「今日はお買い物に来たんですかー!?」
「あの‥っ一緒に、写真撮りませんっ?!」
ぐいぐい突撃してくる女の子たちに4人は若干引き気味な様子だった。
「……なんだよ、これ」
普段強気なばぁうが、女の子たちが腕を掴んだ瞬間だけ、ぴくっと肩を跳ねさせ引いている。慣れなさすぎて逆に睨みつけ気味。
「手ぇ離せって。……近いんだよ」
でも女の子たちは怯まず、むしろ「かっこいい!」「強気なところめっちゃ好きー!」とさらに騒ぐ。
「うわっ、ちょっと落ち着いてっ」
あっとは急に女の子たちの距離が近くなってきたことに慌てる。その様子に「お兄さん可愛い」「声めっちゃ良いですね」とぐいぐい。
「ちょっと、うるさい。囲むのやめて。」
メルトはあからさまに不機嫌といった表情で言っても、「え、寧ろ可愛い」「顔立ち綺麗すぎ」とさらに距離が縮まってメルトは溜息を吐く。
「えっと‥そんなに近づかれるとちょっとびっくりしちゃうよ」
やなとは笑顔を向けながら少し引き気味だが、「え、カッコ可愛い♪」「これから何処行くのぉ?」と話しかけてきてぐいぐい攻めてくる。
女子たちに囲まれ、前後左右から話しかけられる4人。てるとはその横で見守りながら、少しハラハラしていた。女子たちは一向に引こうとせず笑顔で距離を詰めてくる。そのたびに4人は少しずつ後退していて「……これ、完全に囲まれてるな……」と、てるとは心の中で呟いた。
ここは、間に入って無理矢理にでもこの場を離れるしかないと悟りてるとは息を吐き、行動しようとした。
すると、その横で取り囲んでいた女子たちのグループの中から、今度は2人の男性がこちらに近づいてきた。
「ねぇ、君可愛いね」
てるとは眉をひそめ、首をかしげる。
でも2人は明らかにてるとに興味を示していて話しかけてくる。
「え。このイケメンくん達と歩いてるってことは恋人とかじゃないんでしょ?」
「あの‥」
「俺マジでタイプだわ。ねぇ、これから一緒に遊ぼうよ」
てるとは目を丸くして近づいてくる2人に対して後退る。「僕は男なんですけど……」と慌てて説明しようとしたその瞬間、4人の空気が一変した。
ばぁうがてるとの前に出て相手を威嚇するように睨みつける。
「おい、こいつに近づくな‥手出したら、分かってるよな?」
ばぁうは腕を軽く組み替え、低く、鋭く声を放つ。
「……あのね、物理的距離っていう概念、知ってる?今まさに距離が近すぎる」
あっとの声は落ち着いているけれど、冷静の中に静かな怒りが含んだような圧がある。
「てるとくんは僕のだから。お前らが冗談だと思って近づいてるなら考え直して」
声のトーンは甘いけれど、言葉に反して圧倒的な支配力がある。
「ねぇ、てるきゅんににそういうことするの、やめてくれない?見ての通り困ってるから。」
やなとはふわっと声は柔らかいけど、目は真剣に光っている。
てるとはその背後で、4人に囲まれている安心感に胸がじんわり温かくなる。
男2人は青ざめて、「す、すみません……女の子だと思って……!」と声も震えて、逃げるように後退る。周りの女の子たちもその光景に一瞬沈黙するが、黄色い声を上げていた。
「行くぞ」
ばぁうの低く響く声が耳に入る。
そのまま僕の腕を軽く掴むと、キャーキャー騒いでいる女の子たちに気付かないフリをして、腕を引いて走り出した。
ばぁうが先頭で人混みを縫い、あっとが後ろを確認しながらルートを指示する。メルトは後ろの連中に舌を出して挑発する様な仕草で離れて、やなともバイバーイ!と悪気もなく笑顔で放った。
ナンパ男たちを振り切った後、俺たちは少し落ち着いた通路にたどり着いた。人混みを抜けて息を整えると、4人は自然と僕の周りに集まる。
「よし撒いたな」
「てるちゃん、大丈夫?」
「あいつらのせいで喉乾いた〜」
「ふふ、ちょっと追いかけっこみたいで楽しかったー」
普段のふわっとした雰囲気や飄々とした姿とのギャップにてるとは驚いたが、守られている安心感が胸にじんわり広がる感覚があった。
4人は元の雰囲気に戻って再び周りを散策し始めた。
人混みの中を歩くたび、4人の影が並んで揺れた。
ショーウィンドウの明かりが横顔を照らし、雑貨屋のカラフルな光や、フードコートから流れる美味しそうな匂いが通り過ぎるたびにふわりと香る。
一緒に興味のあるものを食べてみたり、それぞれが気になる店に自然と足を止めて静かに眺めたり、不思議そうに手に取ったり、そしてまた歩き出したり。
賑やかなモールの中で、俺たちだけがゆっくり時間を進めているようだった。
「そろそろ出よっか」
モールをひと通り回り終えて店内の空気よりも外の風が恋しくなっていた。
出口を抜けた瞬間、夕方の風が頬を撫でる。
街の喧騒が背後に遠ざかっていくのを感じながら、
4人は自然と歩幅を合わせて歩きだした。
大通りを抜けて川面が見えた瞬間、さっきまでの雑踏が嘘みたいに静かになった。
「んー、風が気持ちいい」
風に揺れる草の音と、ゆっくり流れる水の匂い。ショッピングモールの喧騒を背に、僕たちはそのまま河川敷へと足を向けた。
ばぁうがポケットに手を入れたまま言う。
「騒がしいとこも嫌いじゃないけどさ。こういう静かな場所は落ち着くな。」
あっとは川沿いのベンチを指差し、
「ちょっと休憩する?ほら、てるちゃん座って」
と、いつも通り優しく気遣ってくれた。
メルトは草むらを覗き込みそのまま寝転がる。
「やばーい、眠れそう。てるとくんも隣においでよ」
メルトがいたずらっぽく笑う。
やなとは空を見上げて
「……なんかさ、変だよね。前は四つん這いで歩いてたのに、今はこうしててるきゅんの隣に歩いてんの」
と照れたように言う。
「……あ、ばぁう。見て。蝶々」
メルト指先がそっと空を差す。河川敷に差しこむ夕日を受けて、蝶の羽が金色に透けていた。
ばぁうは軽く目を細める。
「……きれいだな」
「いや、あれ……めっちゃ“追いかけたくなる動き”してない?」
「…確かに。」
メルトは体を前に倒し、すでに獲物を狙う猫みたいに姿勢を低くしている。
「……お前な、その姿勢やめろ」
「なんで?」
「猫みたいじゃん。」
「だって本能だし」
ばぁうが呆れたようにため息をついた。
蝶がふわっと方向を変えてばぁうとメルトの瞳が、反射的にその軌道を追う。
「どっちが先に捕まえられるか競争ね」
「え、だる」
「じゃあ、“捕まえられない”ってことでいい?」
「…は?」
メルトは完全に挑発している。
目を細め、口元にいたずらな笑みを浮かべながら囁いた。
「どうせばぁうには無理だよ。僕が先に――」
その瞬間、ばぁうが草を蹴って走り出した。
「メルト、駆けっこなら負けねぇぞ!」
「あっ!……ずるくない!?ばぁう待って!」
風を切って走るばぁうのすぐ上を、蝶がふらふら漂う。まるで2人を誘っているみたいに。
メルトもすぐに追いかける。
「ほらっ、こっち飛んだよ!ばぁう、上!!」
「言われなくても見えてる!!」
草むらが一気に弾け、追いかける2人の影が並んで跳ねる。人間の姿なのに、動きはまるで猫みたいに。
蝶はゆるやかに上昇し、またふわりと下降する。
そのたびに2人は体を伸ばし、ジャンプし、追い続ける。
てるとは呆れつつ笑っていた。
「……え、なに、あれ……」
あっとが腕を組む。
「完成にスイッチ入っちゃったね」
てるととあっとは、少し離れたところからばぁうとメルトが蝶々を追いかける姿を眺めていた。
すると、風に揺れる草の間、やなとがしゃがんで何かをじっと見ている。
「…やなと?」てるとはやなとに近づいて声をかけると、彼の腕の中には小さな灰色の子猫がいた。
震えるその体を、やなとは優しく抱きしめている。
「この子、親猫とはぐれちゃったみたいで。」
「え、猫の言葉分かるの?」
「うん。…お母さん何処行ったんだろう。」
普段はふわふわしているやなとが、今はまるで小さな命を守る決意を抱えたかのように見えた。
「待って」
あっとが一歩前に出て、慎重に河川敷を観察している。地面や草むら、川の流れの向こうまで視線を巡らせ、何かを探しているようだ。
「……この辺にいるかもしれない」あっとが低く呟く。
「鳴き声とか、足跡とか、少しでも手がかりを探すんだ」
「うん、俺も探してみる」
あっととやなとが協力して親猫を探す。
あっとは地面に目を落とし、慎重に足跡や鳴き声の方向を確認する。
「ここ…微かに足跡が残ってる。」
「あ、確かに!ここに小さな足跡があるね!」
てるとは後ろから、2人の息の合った動きを眺める。あっとの冷静さと、やなとの好奇心がうまく噛み合っている。ただの散策だった河川敷が、急に小さな冒険のようになった。
「あ、鳴き声聴こえた!」
やなとが耳を澄ます。あっとはすぐに草むらを確認し、指差す。
「静かに行け。親猫を驚かせるな」
やなとはそっと子猫を抱くやなとの腕のほうを見て、にっこり笑う。
「大丈夫、もうすぐ会えるよ」
2人は草むらの間を慎重に進み、川沿いまで歩を進める。てるとも後ろからついていき、母猫の姿が現れる瞬間を待つ。
そして、草陰から母猫がひょっこりと姿を現した。
子猫の気配を感じ、低く甘えるように鳴きながら寄り添う。
あっとは静かに頷き、やなとは嬉しそうに子猫の腕を差し出す。
「ゆっくり……そのまま差し出せ」あっとの声が落ち着いて耳に届く。
母猫は鼻先で子猫を確認すると、すぐに体を寄せて包み込んだ。
やなとは腕を下ろし、安堵の笑みを浮かべる。
「あぁ、よかった……」
あっとも一歩下がり、無言で確認するように親子猫の様子を見守る。
「これで安心だ」
2人の動きと親猫を見つけた瞬間の表情を見て、自然と胸が温かくなる。猫だった頃の感覚も、人間になった今も変わらずに残っている。そして2人の優しさが滲んできててるとは嬉しくなって微笑んだ。
「あの頃を思い出しちゃって」
「ん?」
「俺も捨て猫だった頃、あの子猫みたいに震えてた。……てるきゅんに拾われて、初めは知らない匂い、知らない場所で、すごく怖かったんだ……」
やなとの普段の柔らかい雰囲気とは少し違う、懐かしさと少しの緊張が混ざった表情。
「でも、てるきゅんは優しくて怖がってる俺に無理に触れてこなくて、そっと近くに居てくれて……すごく安心出来るようになったんだ」
えへへと照れくさそうに笑うやなと。あっとも少し目を細めて頷く。
「俺も覚えてる。一緒に過ごすしていく内にてるちゃんの優しい声と笑顔に癒されて、いつの日か俺もてるちゃんを支えたいって思ってた。」
僕は自然と二人の顔を交互に見て、言葉にできない温かさに胸を締めつけられる。
「やばい、泣いちゃうよそんなこと言われたら」
「でも、本当のことだよ」
「今日も俺たちのために外に出てくれてありがとう」
「ちぇ、逃げられた」
ばぁうとメルトが追い回すのを諦めて、二人が息を弾ませながら戻ってきた。
「はは、つい夢中になっちゃったよー」
メルトは髪をかき上げ、笑顔を弾けさせながら声を上げた。
「……やっと戻ってきたか」
「待ってたんだよー二人共」
2人の満足そうな笑みにあっととやなとも思わず微笑んで返した。僕もそんな4人の輪が広がる光景を見ていて微笑ましくなった。自然の音と彼等の笑い声が混ざり合って、何だか特別な時間のように感じた。
「そろそろ帰ろうか」
てるとが優しく声をかける。
「楽しい時間はあっという間だな、」
「そうだねーそろそろお腹空いてきたし」
「またこんな風にお出掛けしたいね!」
「また今度な」
彼ららしいそれぞれの温度差が、逆に“家族感”みたいなものを感じさせてくれる。家に帰るだけなのに、なんだか胸がくすぐったくなるような感情にてるとは幸せを感じていた。
「てると、早く来いよ」
夕焼け色に染まった河川敷で、4人は土手の上に揃って立ち、こちらを振り返りながら待っていた。てるとが駆け寄ると、4人の表情は自然と緩んでそのまま揃って歩き出した。
家族愛(^ ^)ちゅき