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前回の続き
集合 ― サウナ施設前
夕方。
少しだけ冷えた空気。
ネオンがつき始める時間。
北斗、先に到着。
入口の横、壁にもたれて立ってる。
スマホ見てるふり。
でも視線は、何回も無意識に入口へ向く。
「……早すぎた」
自分でも分かってる。
落ち着かないから早く来た。
完全にミス。
その時――
「はや」
聞き慣れた声。
顔上げる。
樹。
ラフな格好で、ニヤニヤしながら近づいてくる。
樹「気合い入りすぎだろ」
北斗「違う」
即。
樹「いや早すぎ」
北斗「たまたま」
樹「嘘つけ」
軽く肩ぶつけられる。
北斗、軽く避ける。
北斗「うるせぇ」
樹「緊張してんの?」
北斗「してない」
樹「顔」
北斗「してない」
強めに言い切る。
樹、笑う。
樹「はいはい」
そのタイミングで――
「おつー」
風磨。
手振りながら来る。
風磨「揃ってんじゃん」
樹「北斗が早すぎるだけ」
風磨「珍しいな」
北斗「うるさい」
風磨、ニヤッとする。
風磨「分かりやす」
北斗「黙れ」
軽く舌打ち。
でも、空気はまだ軽い。
ここまでは。
風磨「で?」
風磨、周り見ながら。
風磨「主役は?」
樹「まだ」
北斗、無意識に入口見る。
その動き、2人とも見逃さない。
樹「見るねぇ」
北斗「見てねぇ」
風磨「今見た」
北斗「見てない」
否定が雑。
2人、笑う。
その時――
少し離れたところから、
「おつー」
柔らかい声。
振り向く。
きょも。
ゆるい空気で歩いてくる。
一気に場の空気が和らぐ。
樹「来た天使」
風磨「安心要員」
きょも「なにそれ」
笑いながら合流。
きょも「みんな早いね」
樹「北斗がな」
きょも、北斗見る。
きょも「楽しみだった?」
北斗「違う」
即。
きょも「ww」
軽く笑うだけ。
否定、深追いしない。
それが余計に図星っぽくて、
北斗、視線逸らす。
きょも「〇〇もうすぐだと思うよ」
その一言。
空気、ほんの少し変わる。
北斗の中だけ。
外は普通。
でも内側、
一気に音が遠くなる感じ。
「もうすぐ来る」
それだけで、
心拍が少し上がる。
樹「よし」
手叩く。
樹「全員揃うな」
風磨「逃げ場なし」
きょも「怖いこと言うね」
軽い会話。
でも。
その数秒後――
足音。
厚底じゃない。
スニーカーの、軽い音。
でも分かる。
北斗、無意識に顔上げる。
視線の先。
〇〇。
ラフだけど、
ちゃんと可愛い格好。
いつも通りなのに、
なんか違って見える。
距離、少しずつ縮まる。
一歩ごとに、
空気が変わっていく感覚。
〇〇「おつー」
普通。
ほんとに普通。
昨日も今日も何もなかったみたいに。
樹「おつ」
風磨「来たじゃん」
きょも「来てくれてありがと」
〇〇「きょもが行くって言うから!」
その一言。
北斗、少しだけ目伏せる。
やっぱりそうか、って。
分かってたのに、
ちゃんと刺さる。
でも。
〇〇の視線、
一瞬だけ北斗に向く。
〇〇「……おつ」
軽く。
短く。
でも確実に。
北斗「…おつ」
それだけ返す。
たったそれだけのやり取りなのに、
妙に意識してしまう距離。
風磨、ニヤつく。
樹「よし、行くか」
まとめに入る。
誰も反対しない。
そのまま入口へ。
並び、
自然とできる。
樹と風磨が前。
きょもと〇〇が真ん中。
そして――
一番後ろに、北斗。
少し距離を取る形。
でも、
完全に離れるわけじゃない。
〇〇の背中、
数歩先。
手伸ばせば届く距離。
届かない距離。
北斗「……近いな」
誰にも聞こえない声。
サウナのドアが開く。
熱気が、ふわっと外に漏れる。
この中に入ったら、
もう逃げ場はない。
視線も、
空気も、
全部共有される。
北斗、最後に一歩踏み出す。
その瞬間――
「何かが変わる」
そんな予感だけが、
妙にリアルだった。
ーーー
サウナ施設内 ― 脱衣所前
受付を済ませて、
そのまま奥へ。
暖かい空気と、少し湿った匂い。
会話はあるのに、
どこか全員、意識が内側にある感じ。
樹「じゃあここで分かれるな」
指さす。
男女の暖簾。
〇〇「りょーかい」
軽く返す。
きょも「あとでね」
風磨「逃げんなよ北斗」
北斗「逃げねぇよ」
即。
樹「ほんとか?」
北斗「うるせぇ」
軽く睨む。
でも、そのやり取りすら
少しだけ空気を和らげる。
一瞬だけ。
〇〇、暖簾の前で一度だけ振り返る。
全員を見て――
ほんの一瞬、
北斗と目が合う。
何も言わない。
でも、逸らさない。
そのまま、
ふっと視線外して、
女子側へ入っていく。
北斗、少しだけ固まる。
「……なんだよ今の」
分かんないまま。
樹「行くぞ」
背中押される。
男子側へ。
ーーーーー
男子更衣室
ロッカーの音。
服が擦れる音。
やけにリアルに聞こえる。
誰も最初は喋らない。
でも――
一番最初に口開いたのは、樹。
樹「で?」
いきなり核心。
北斗「で、なに」
服脱ぎながら、視線合わせない。
樹「どうすんの」
北斗「何が」
樹「分かってるだろ」
風磨「逃げんなって」
追撃。
北斗、軽く舌打ち。
北斗「別に何もしねぇよ」
樹「嘘つけ」
北斗「嘘じゃねぇ」
風磨「じゃあなんで来た」
その一言。
一瞬、動き止まる。
北斗「……」
答え、出ない。
いや、出せない。
きょも「会いたかったからだろ」
ド直球。
北斗「……は?」
誤魔化すように笑う。
北斗「意味分かんねぇこと言うな」
風磨「図星だな」
北斗「違う」
でも声、少し弱い。
樹「いいじゃん別に」
ロッカー閉めながら。
樹「好きなんだから」
空気、ピンと張る。
北斗、完全に止まる。
背中向けたまま。
数秒。
何も言わない。
風磨「否定しねぇんだ」
静かに言う。
北斗「……」
ゆっくり振り返る。
北斗「お前らさ」
少し低い声。
北斗「分かってるなら余計なことすんなよ」
本音。
樹「余計じゃねぇよ」
即。
きょも「止まってんのが一番ダメ」
風磨「このまま何もない方が終わるぞ」
北斗、目逸らす。
その未来が一番現実的で、
一番怖い。
北斗「……分かってる」
小さく。
認める。
樹「じゃあ動け」
北斗「簡単に言うなよ」
風磨「簡単じゃねぇからやるんだろ」
静かに刺さる言葉。
北斗、息吐く。
タオル肩にかける。
北斗「……無理だったら?」
ぽつり。
樹「その時考えろ」
風磨「やる前から逃げんな」
シンプル。
でも、それで十分。
北斗、軽く笑う。
北斗「ほんと性格悪いな」
樹「知ってる」
風磨「お互い様」
少しだけ空気が緩む。
でも核心はそのまま。
北斗「……分かったよ」
小さく頷く。
完全じゃない。
覚悟もまだ足りない。
でも、
逃げる選択は消えた。
ーーーー
サウナエリア前 ― 再集合
先に出てきたのは、樹と風磨。
ラフにタオルを首にかけて、
もうすでに“慣れてる空気”。
樹「暑」
風磨「まだ入ってねぇだろ」
樹「気分な」
くだらない会話。
でも視線は、入口の方。
次に出てくるのは――
きょも。
いつも通り、ふわっとした空気。
一気に場が柔らぐ。
風磨「安心感すご」
樹「ほんとそれ」
きょも「なにそれ」
笑う。
その直後――
男子更衣室の扉、
もう一度開く。
北斗。
少し遅れて出てくる。
タオル肩にかけて、
髪、少しだけ崩れてる。
いつもよりラフ。
でも――
明らかに、意識してる。
樹「遅」
北斗「普通」
風磨「顔固い」
北斗「うるせぇ」
きょも、少しだけ北斗を見る。
何も言わないけど、
分かってる顔。
その空気のまま――
女子側の扉が開く。
一瞬で、
全員の意識がそっちに向く。
出てくるのは〇〇。
タオル巻いて、
髪まとめて、
完全にオフの姿。
でも――
妙に目を引く。
一瞬、空気止まる。
誰もすぐに喋らない。
ほんの数秒。
その中で、
北斗だけが少しだけ目を逸らす。
直視できない。
〇〇「おまたせ」
普通に言う。
その一言で、
空気がやっと動く。
樹「おそ」
〇〇「今来たでしょ」
風磨「まぁ全員揃ったな」
きょも「入る?」
軽く促す。
でも――
誰もすぐには動かない。
微妙な間。
距離。
視線。
全部がちょっとずつ噛み合ってない。
その原因は分かりきってる。
樹、軽くため息。
樹「はいはい」
空気を切る。
樹「まず一発目行くぞ」
強制的に流れ作る。
風磨「だな」
きょも「行こ」
自然に動き出す3人。
その後ろ、
〇〇と北斗。
一瞬だけ、並ぶ形になる。
距離、近い。
でも会話はない。
沈黙。
足音だけ。
〇〇、少しだけ横を見る。
北斗、気づく。
でも見ない。
その空気、数秒。
〇〇「……暑そうだね」
ぽつり。
やっとの一言。
北斗「……まぁな」
短く返す。
それだけ。
それだけなのに、
妙に意識が残る。
会話、続かない。
でも――
完全な無言よりはマシ。
ーーー
サウナ室前
樹「いくぞー」
ドアを押す。
一気に漏れる熱気。
風磨「うわ、もう暑い」
きょも「すごいね」
3人、慣れた感じでそのまま中へ入っていく。
北斗は一瞬だけ立ち止まる。
横に――〇〇。
〇〇「……」
無言でドアの中を覗く。
そして、
中の光景を見て――
ピタッと止まる。
〇〇「……え、ちょっと待って」
一歩も入らない。
樹「は?」
中から振り返る。
〇〇「いやいやいや」
手で制するみたいに軽く振る。
〇〇「なんで普通に上裸なの?」
ド直球。
風磨「サウナだから」
即答。
〇〇「分かってるよ!」
きょも、少し笑う。
きょも「そりゃそうだ」
〇〇「いやそうだけど!そうだけどさ!」
入口で完全に足止まってる。
〇〇「もうちょい段階あるでしょ!?」
樹「いらねぇよ」
〇〇「いるわ!」
テンポよくツッコむ。
そのやり取りを、
北斗は横で聞いてる。
笑いそうになるけど、
顔は作る。
なるべく普通に。
でも内心――
助かってる。
このやり取りのおかげで、
一瞬だけ意識が逸れるから。
風磨「ほら入れって」
樹「今さらだろ」
〇〇「今さらでも無理なもんは無理!」
でも、
逃げる気はない。
分かる。
きょも「大丈夫だって」
やわらかく言う。
きょも「すぐ慣れるよ」
〇〇「慣れたくないんだけど」
言いながらも、
少しだけ息吐く。
観念。
〇〇「……はぁ、もういいや」
覚悟決める。
一歩、踏み出す。
北斗と同じタイミング。
2人、並んで中に入る。
ーーー
サウナ室内
熱気、全身に当たる。
視界、少し白くなる。
中のベンチ。
樹が奥を指す。
樹「ここ座ろ」
風磨ときょも、自然に座る。
3人とも上裸。
当たり前みたいな顔。
その横で――
〇〇、立ち止まる。
改めて、全体を見る。
〇〇「……やっぱおかしいってこれ」
再ツッコミ。
樹「まだ言う?」
〇〇「言うよ!」
風磨「だからサウナだって」
〇〇「分かってるってさっきから!」
きょも「気にしすぎだよ」
〇〇「気にするでしょ普通!」
テンポいい掛け合い。
空気が一気に軽くなる。
その流れで、
〇〇もやっと座る。
位置は――
樹、風磨、きょも。
その並びの隣。
そして少しだけ離れて、
北斗。
自然と距離ができる。
でも完全には離れない。
中途半端な距離。
〇〇「……いやほんと慣れないんだけど」
小さく呟く。
樹「そのうち慣れる」
〇〇「慣れたくないって」
風磨「じゃあ目閉じとけ」
〇〇「それはそれで怖い」
きょも、くすっと笑う。
そのやり取りの中――
北斗だけ、静か。
一言も入らない。
視線は前。
でも意識は横。
〇〇の声、動き、
全部入ってくる。
〇〇、ふと気づく。
「……あれ」
横目で北斗を見る。
静かすぎる。
〇〇「……北斗?」
呼ぶ。
北斗、少し遅れて反応。
北斗「……なに」
〇〇「静かじゃない?」
核心。
樹と風磨、すぐ反応してニヤける。
きょもは静かに見てる。
北斗「普通だろ」
〇〇「普通じゃない」
即。
〇〇「さっきから全然喋ってないじゃん」
北斗「……暑いだけ」
誤魔化し。
風磨「嘘つけ」
樹「分かりやす」
北斗「うるせぇ」
低く返す。
でも強くない。
〇〇、じっと見る。
その距離感。
その違和感。
〇〇「……変なの」
ぽつり。
でも、それ以上は踏み込まない。
きょも「まぁ最初だしね」
樹「そのうち壊れる」
風磨「時間の問題」
北斗「壊れねぇよ」
即。
〇〇「何それ」
少し笑う。
その笑い声で、
空気がまた少しだけ柔らぐ。
でも――
北斗の中は逆。
どんどん、逃げ場がなくなる。
横を見れば、
すぐそこに〇〇。
近い。
近すぎる。
でも、
触れられない距離。
誤魔化せない時間が、
ゆっくり始まっていく。
ーーーー
じわじわと、温度が上がる。
最初は「暑いな」くらいだったのに、
数分も経たないうちに、
空気が重くなる。
肌にまとわりつく熱。
呼吸するたびに、体の内側まで温まっていく。
樹「……きたな」
ぽつり。
風磨「早いって」
でも額にはもう汗。
きょも「ほんとだ、すごいね」
首元に汗が流れる。
〇〇も、
最初は平気な顔してたけど――
〇〇「……やば、暑」
小さく呟く。
頬、ほんのり赤い。
こめかみに汗。
タオルで軽く押さえる。
その仕草、
無意識に目に入る。
北斗。
視線、逸らす。
でも一瞬で焼き付く。
「……見んな」
心の中で自分に言う。
でも無理。
視界に入る。
すぐ横にいるから。
距離、近いから。
風磨「〇〇もう来てるじゃん」
〇〇「普通に暑いって!」
樹「まだ序盤だぞ」
〇〇「嘘でしょ」
きょも「無理しないでね」
〇〇「うん」
短く返す。
でも、
完全に余裕ではない。
呼吸、少し深くなる。
汗が、首筋を伝う。
その“変化”が、
やけにリアルに見える。
北斗、拳軽く握る。
視線、前。
でも意識は完全に横。
自分も暑いはずなのに、
それ以上に――
変な緊張。
心拍が上がる。
熱のせいだけじゃない。
樹「北斗」
急に呼ばれる。
北斗「……なに」
樹「大丈夫?」
ニヤついてる。
北斗「何が」
風磨「顔」
北斗「普通だろ」
きょも、少しだけ北斗を見る。
でも何も言わない。
分かってるから。
北斗の状態。
〇〇も、ちらっと見る。
北斗、気づく。
目、一瞬合う。
すぐ逸らす。
〇〇「……そっちもじゃん」
ぽつり。
北斗「は?」
〇〇「普通に汗やばいよ」
指摘。
北斗、少し固まる。
無意識だった。
自分ももう、かなり汗かいてる。
北斗「……暑いからな」
短く返す。
〇〇「いやそれはそう笑」
少し笑う。
その笑い声が、
また近くで響く。
距離、近い。
音も、空気も、
全部がダイレクト。
逃げ場がない。
風磨「そろそろ一回出る?」
樹「まだいける」
きょも「俺ももうちょっと」
〇〇「……いやちょっと迷う」
正直な反応。
樹「無理すんなよ」
風磨「倒れんなよ」
〇〇「倒れないって」
言いながらも、
少しだけ前かがみになる。
呼吸整える。
その瞬間――
ほんの少し、
バランス崩れる。
北斗、反応する。
一瞬、手が動く。
触れる寸前で止める。
空中で止まる手。
誰にも気づかれてない。
でも、
自分だけが分かってる。
「……何やってんだ俺」
ゆっくり手を戻す。
でも、
その一瞬で確信する。
無理だ。
この距離で、
何も感じないのは無理。
〇〇「……もうちょいだけ頑張る」
小さく言う。
きょも「無理しないでね」
〇〇「うん」
北斗、横目で見る。
汗、流れてる。
でも顔は、ちゃんと前向いてる。
逃げてない。
その姿が、
余計に刺さる。
北斗「……すげぇな」
小さく呟く。
誰にも聞こえないくらいの声。
でも、
その言葉に込めた感情は、
自分でも分かるくらい
重かった。
熱と、距離と、感情。
全部が混ざって、
もう――
ごまかせる状態じゃなくなっていく。
ーーーー
熱がピークに近づく。
空気が重い。
呼吸が少しずつ深くなる。
樹「……そろそろ出るか」
さすがに判断。
風磨「だな」
きょも「いいタイミングかも」
〇〇「……助かった」
正直な一言。
少し笑いも混ざる。
全員、ゆっくり立ち上がる。
一気に立つと危ないから、
慎重に。
北斗も立つ。
少しふらつきかけて、
すぐ持ち直す。
視界の端で、
〇〇も同じタイミングで立つのが見える。
でも今は見ない。
見たら余計に意識する。
樹「はい、水風呂直行な」
風磨「一発目な」
きょも「冷たそうだね」
〇〇「え、待ってそれ無理かも」
すでに弱気。
樹「行ける行ける」
〇〇「いや無理」
風磨「大丈夫だって」
軽く背中押す流れ。
そのまま全員、
外へ出る。
水風呂エリア
外気、少しだけひんやり。
でも体はまだ熱いまま。
その状態で見る水風呂――
かなり冷たそう。
〇〇「……無理」
即。
樹「早いって」
風磨「まだ入ってねぇ」
きょも「気持ちいいよ」
〇〇「絶対嘘」
でも、
樹はもう足入れてる。
樹「ほら来いよ」
風磨も続く。
風磨「はい一気」
きょももゆっくり入る。
きょも「わ、冷たい」
でも気持ちよさそう。
残るは――
〇〇と北斗。
〇〇、縁にしゃがむ。
水に手つける。
〇〇「っ、冷た!」
すぐ引っ込める。
北斗、少し横に立つ。
距離、近い。
でもさっきより、
少しだけ空気が変わってる。
同じ“外”に出た感じ。
〇〇「これ無理でしょ」
北斗「……最初だけだろ」
ぽつり。
〇〇、少しだけ見る。
〇〇「入れる?」
北斗「……まぁ」
短く。
そのまま、
先に足入れる。
一気じゃない。
ゆっくり。
でも止まらない。
そのまま肩まで入る。
小さく息吐く。
北斗「……っ、冷た」
でもすぐ――
北斗「……気持ちいい」
本音。
その様子を見て、
〇〇、少しだけ迷う。
樹「ほら来いって!」
風磨「いけるいける!」
きょも「ゆっくりでいいよ」
〇〇「……はぁ」
観念。
ゆっくり足入れる。
〇〇「っ……!」
肩すくめる。
でも、
止まらない。
北斗、横で少しだけ見る。
何も言わない。
ただ、
ちゃんと入るのを確認する。
〇〇、ゆっくり腰まで。
〇〇「むりむりむり…」
小声で連呼。
でも、
そのまま――
肩まで入る。
〇〇「っ……!」
一瞬、息止まる。
でも、
数秒後。
〇〇「……あれ」
表情変わる。
〇〇「ちょっと気持ちいいかも」
樹「だろ?」
風磨「はい成功」
きょも「よかったね」
少し笑う。
その空気の中――
北斗、静かに息吐く。
さっきまでの熱、
一気に引いていく。
でも。
横には〇〇。
距離、変わらない。
水の中で、
さらに近く感じる。
肩、数センチの距離。
触れない。
でも、
意識は完全にそこ。
〇〇、ふと横見る。
北斗と目が合う。
今度は――
逸らさない。
〇〇「……ほんとだね」
小さく言う。
北斗「……なにが」
〇〇「最初だけってやつ」
少し笑う。
北斗も、少しだけ笑う。
北斗「……だろ」
短い会話。
でも、
さっきより自然。
距離は近いまま。
空気もまだ特別。
でも――
ほんの少しだけ、
“普通”に戻り始めてる。
しばらく浸かって、
体の熱が引いていく。
風磨「……きたな」
低く呟く。
樹「ととのってんじゃん」
風磨、ふっと笑って――
濡れた髪をかきあげる。
水滴が首から落ちる。
きょもも、軽く前髪を上げる。
きょも「すっきりするね」
樹はタオルで雑に拭く。
〇〇「……すご」
その様子見て、
少しだけ笑う。
〇〇「なんか“それっぽい”」
風磨「それっぽいってなんだよ」
〇〇「いや、サウナ慣れてる人の感じ」
樹「実際慣れてるしな」
きょも「気持ちいいでしょ?」
〇〇「……うん」
素直に頷く。
さっきより顔、柔らかい。
完全に緊張は解けてないけど、
確実に“慣れてきてる”。
その横で――
北斗。
無言でタオルを首にかける。
髪、少し濡れて額に落ちてる。
手で軽く払う。
その仕草も、どこかぎこちない。
自分でも分かってる。
まだ余裕なんてない。
風磨「もう一回いくか」
樹「だな」
きょも「いこ」
流れは自然。
〇〇、一瞬だけ迷う。
〇〇「……え、もう?」
樹「今が一番いいタイミング」
風磨「ここで行かないと意味ない」
〇〇「スパルタすぎる」
でも、
嫌そうではない。
少し考えて――
〇〇「……行く」
決める。
きょも「いいね」
軽く笑う。
そのまま全員、
立ち上がる。
床に落ちる水滴の音。
足音。
また、あの熱い空間へ。
ーーー
サウナ室前
ドアの前。
一瞬だけ、
全員止まる。
樹「2ラウンド目な」
風磨「ここからだぞ」
〇〇「もう言い方が怖い」
きょも「大丈夫大丈夫」
軽い空気。
でも、
1回目より明らかに距離が近い。
心理的にも。
その中で――
北斗。
ドアに手かける前、
一瞬だけ横を見る。
〇〇。
さっきより落ち着いた顔。
でも、
油断すると崩れそうなバランス。
北斗「……いける?」
ぽつり。
初めて自分から。
〇〇、少しだけ驚く。
でもすぐ、
〇〇「……まぁなんとか」
小さく笑う。
北斗「無理すんなよ」
短く。
それだけ。
でも――
ちゃんとした言葉。
〇〇、ほんの一瞬止まる。
〇〇「……うん」
それだけ返す。
そのやり取り、
樹と風磨、しっかり見てる。
ニヤけそうなのを堪えてる顔。
きょもは、
何も言わずに微笑むだけ。
樹「はいはい行くぞ」
わざとらしく空気切る。
ドア開ける。
また一気に、
熱気。
さっきより熱く感じる。
体が慣れた分、
深く入ってくる熱。
風磨「うわ、くるな」
髪をまたかきあげる。
樹「いいねぇ」
きょももタオルで軽く拭く。
〇〇「……さっきよりやばい」
正直な感想。
でも、
逃げない。
ちゃんと座る。
位置は――
さっきとほぼ同じ。
でも今回は、
ほんの少しだけ
北斗との距離が近い。
無意識。
北斗、気づく。
でも何も言わない。
ただ、
心拍がまた少し上がる。
風磨「これだよな」
樹「2回目からが本番」
きょも「分かる」
〇〇「いやもう十分本番なんだけど」
ツッコミ入れつつも、
少し笑ってる。
その笑い声、
また近くで響く。
北斗、横目で一瞬だけ見る。
汗、もう出始めてる。
でも顔はさっきより自然。
その変化が、
やけに嬉しく感じる。
北斗「……慣れてきたじゃん」
ぽつり。
〇〇「……まぁね」
少しだけ得意げ。
〇〇「でもまだキツい」
北斗「だろうな」
短く笑う。
その会話、
すごく自然。
さっきより距離が近いのに、
少しだけ楽。
でも――
熱はどんどん上がる。
汗も増える。
空気も濃くなる。
そしてまた、
誤魔化せない時間が
ゆっくりと深くなっていく。
ーー
熱、さらに上がる。
汗、さっきより一気に出る。
空気も濃い。
風磨「……これこれ」
満足そうに息吐いて、
また髪をかきあげる。
その動きで、
腕の筋肉がしっかり浮く。
〇〇、ふと視線向けて――
〇〇「……ちょっと待って」
じっと見る。
風磨「なに」
〇〇「え、やばくない?」
ド直球。
樹「何が」
〇〇「風磨の腕」
その一言で、
全員の視線が風磨へ。
風磨「普通だろ」
〇〇「普通じゃないって」
ちょっと近く見るみたいに前かがみ。
〇〇「えぐいってこれ」
風磨、軽く笑う。
風磨「鍛えてるからな」
樹「ドヤるな」
風磨「事実だろ」
きょも「たしかにすごいね」
素直に頷く。
風磨、また軽く肩回す。
筋肉、さらに強調される。
〇〇「え、ちゃんとジム行ってる?」
風磨「行ってる」
〇〇「だよね」
納得顔。
その流れで――
〇〇の視線、横にずれる。
樹。
じーっと見る。
樹「……なに」
〇〇「いやさ」
一瞬ためて――
〇〇「細すぎない?」
即。
風磨「出た」
きょも、吹きそうになる。
樹「は?」
〇〇「いやマジで」
遠慮ゼロ。
〇〇「対比やばいって」
風磨見て、樹見て、
〇〇「同じ人類?」
樹「失礼すぎるだろ」
風磨「たしかに並ぶとおもろい」
樹「お前も乗るな」
きょも「でも細いよね」
優しく追撃。
樹「悪いかよ」
〇〇「悪くはないけど」
ちょっと笑いながら、
〇〇「守ってくれなさそう感すごい」
樹「余計なお世話だわ」
全員笑う。
空気、一気に和む。
風磨「北斗は?」
急に振る。
北斗「は?」
風磨「どっち派」
樹「確かに」
〇〇も見る。
北斗、少しだけ詰まる。
この流れ、
逃げられない。
北斗「……普通じゃね」
無難。
樹「一番つまんねぇ」
風磨「逃げたな」
〇〇「ずる」
軽く責められる。
北斗「知らねぇよ」
苦笑。
でも、
その空気が少し楽。
〇〇「でも北斗もさ」
ふと見る。
北斗、固まる。
〇〇「意外とちゃんとしてるよね」
さらっと。
一瞬、時間止まる。
風磨「お」
樹「きた」
きょも、静かに見る。
北斗「……なにが」
平然装う。
〇〇「いや、バランス」
視線、少しだけ逸らしながら。
〇〇「細すぎでもないし、ゴツすぎでもないし」
北斗「……」
言葉、出ない。
〇〇「ちょうどいい感じ」
軽く言う。
でもその一言、
思ってるより重い。
北斗「……そうかよ」
それしか返せない。
でも、
ほんの少しだけ
口元緩む。
樹と風磨、
完全に気づいてる顔。
樹(小声)「分かりやす」
風磨(小声)「終わりだなこれ」
きょも、くすっと笑う。
〇〇は気づいてない。
普通に前向いてる。
でも――
北斗の中は、
さっきよりさらに
ごまかせない状態になっていく。
熱と、
距離と、
たった一言で。
一気に全部、
持っていかれていた。
風磨「……そろそろ出るか」
低く一言。
樹「限界くる前な」
きょも「いいタイミング」
〇〇「……助かる」
さっきより息が上がってる。
全員、ゆっくり立ち上がる。
汗が一気に流れる感覚。
床に落ちる水滴の音。
北斗も立つ。
視界が少し揺れるけど、すぐ整える。
そのまま、外へ。
今度は自然。
〇〇「……2回目の方がいけるね」
北斗「……慣れただけだろ」
〇〇「それね」
少し笑う。
その笑い、
さっきより力抜けてる。
北斗も、ほんの少しだけ笑う。
北斗「……ちゃんと入ってんじゃん」
〇〇「なめてたでしょ」
北斗「ちょっとな」
〇〇「ひど」
軽く返す。
でも嫌な感じじゃない。
そのやり取り、
樹と風磨、横でニヤけてる。
樹(小声)「距離縮まってんな」
風磨(小声)「分かりやす」
きょもは、
何も言わずに静かに見てる。
分かってるから。
無理にいじらない。
水の中、
静かな時間が少し流れる。
熱は引いていくのに、
別の熱は残るまま。
北斗「……」
一瞬だけ視線落とす。
この距離。
この空気。
今なら、
何か言える気がする。
でも――
言わない。
まだ。
タイミングじゃない。
ただ、
隣にいるだけでいいと思ってる自分がいる。
〇〇「……ね」
ぽつり。
北斗、顔上げる。
〇〇「あと何回やるのこれ」
現実的な質問。
北斗「……さぁな」
少し笑う。
北斗「多分まだあるだろ」
〇〇「えー…」
嫌そうにしつつも、
完全拒否じゃない。
その反応に、
北斗、少しだけ安心する。
この時間が、
もう少し続くってことに。
体の熱がすっと引いていく。
外気が気持ちいい。
全員、ふぅっと息を吐く。
樹「……いいな」
風磨「きたなこれ」
きょも「すごいね」
〇〇も、さっきより落ち着いた顔。
でも――
少しぐったり。
〇〇「……無理」
ぽつり。
樹「は?」
〇〇「3回目、無理」
即宣言。
風磨「早」
きょも「まあまあ」
〇〇、タオルで顔押さえながら。
〇〇「もう十分やったでしょ」
樹「ここからだって」
〇〇「いやもういいって」
本気で拒否。
風磨「あと1回で完成するのに」
〇〇「完成しなくていい」
即。
樹「逃げたな」
〇〇「逃げたっていい」
珍しくはっきり。
きょも、少し笑う。
きょも「無理しなくていいよ」
〇〇「だよね」
即乗る。
風磨「きょも甘いな」
きょも「体調優先でしょ」
樹「まぁそれはそう」
渋々納得。
〇〇、少しだけホッとする。
でも――
どこかで分かってる。
「逃げた」って言われたの、
ちょっとだけ引っかかってる。
その時。
北斗、静かに口開く。
北斗「……やめとけ」
全員、少しだけ見る。
北斗「無理して入るもんじゃねぇだろ」
シンプル。
でもちゃんとした言葉。
〇〇、一瞬だけ固まる。
その言い方。
〇〇「……うん」
小さく頷く。
樹と風磨、
目だけで会話してる。
(今のいいな)みたいな顔。
きょもは静かに見てる。
風磨「じゃあ〇〇は休憩な」
樹「俺らは行くか」
流れ決まる。
〇〇「いってらっしゃい」
軽く手振る。
さっきより少し元気。
でも完全じゃない。
北斗、立ち上がる。
一緒に行く流れ。
でも――
一瞬だけ止まる。
〇〇を見る。
座ったまま、
タオル持ってる姿。
少しだけ疲れてる顔。
でも無理はしてない。
北斗「……大丈夫か」
小さく。
〇〇「大丈夫」
すぐ返す。
〇〇「ちょっと休めば戻る」
北斗「……そっか」
それ以上は言わない。
でも、
少しだけ迷う。
行くか、
残るか。
その一瞬。
樹「北斗ー」
呼ばれる。
樹「置いてくぞ」
風磨「早くしろ」
北斗「……今行く」
返す。
でも、
もう一度だけ〇〇を見る。
〇〇、気づく。
目、合う。
〇〇「行ってきなよ」
軽く言う。
〇〇「ちゃんと3回目やりな」
少し笑う。
北斗「……お前が逃げたのに?」
〇〇「うるさい」
軽く返す。
そのやり取り、
少しだけ自然。
北斗「……すぐ戻る」
ぽつり。
〇〇「うん」
短く。
それだけ。
でも、
ちゃんと成立する会話。
北斗、やっと背中向ける。
樹と風磨ときょもと合流。
3ラウンド目へ。
〇〇は一人、
休憩スペースに残る。
静かな時間。
さっきまでの熱が嘘みたいに、
ゆっくり引いていく。
でも――
心の中は、
まだ少しだけ熱が残ってる。
〇〇「……なんなんだろ」
小さく呟く。
理由は分からない。
でも、
さっきの北斗の一言。
「やめとけ」
それだけが、
妙に残っていた。
サウナ室内(3ラウンド目)
ドアが閉まる。
また一気に熱。
でもさっきより、静か。
〇〇がいないだけで、
空気の質が少し変わる。
樹「……行ったな」
ぽつり。
風磨「逃げたな完全に」
軽く笑う。
きょも「無理してなかったからいいと思うけどね」
優しいフォロー。
北斗は何も言わない。
座る。
タオルを首にかけて、
前を見る。
でも――
頭の中は、さっきまでの〇〇。
樹「てかさ」
急に口開く。
樹「初じゃね?」
風磨「なにが」
樹「〇〇とサウナ」
その一言で、
空気が少し変わる。
きょも「……たしかに」
小さく頷く。
きょも「こういう完全オフの状態で一緒にいるのも、あんまりないかも」
樹「だよな」
風磨だけ、肩すくめる。
風磨「俺は普通だけど」
樹「お前はな」
風磨「同じメンバーだし」
温度差。
風磨だけは、いつも通り。
特別なものとして見てない。
でも――
他の3人は違う。
樹「いや、普通にさ」
少し前かがみになって、
樹「びっくりしたんだけど」
風磨「何が」
樹「雰囲気」
きょも「分かる!」
即共感。
北斗、少しだけ視線動く。
樹「いつもと違くね?」
きょも「うん!」
きょも「なんか、柔らかいっていうか」
言葉選びながら。
樹「そう、それ!」
風磨「いつももあんなもんだろ」
樹「いや違うって!」
樹「なんかさ、力抜けてる感じ」
きょも「仕事の時と全然違うよね」
北斗、無言のまま聞いてる。
でも全部、同じこと思ってる。
樹「あとさ!」
少しニヤける。
樹「普通にさ、あれな」
風磨「なに」
樹「色気やばくね?」
直球。
一瞬、空気止まる。
きょも、苦笑い。
きょも「まぁ…それは否定できない」
風磨「は?」
ちょっと笑う。
風磨「今さらだろ」
樹「いや今さらだけどさ」
樹「サウナで見ると余計にだろ!」
きょも「分かる」
静かに頷く。
樹「タオル巻いてるだけでさ」
樹「腕とか脚とか、普通に出てるじゃん」
風磨「だから?」
樹「細すぎ」
即。
きょも「白いしね」
ぽつり。
その言葉、
妙にリアル。
樹「そう、それ」
樹「なんかさ、普段あんま意識してなかったけど」
樹「今日ちょっとびっくりした」
風磨「お前らが意識しすぎなだけだろ」
あくまで冷静。
風磨にとっては“いつもの〇〇”。
でも――
樹ときょもと北斗は違う。
きょも「でもさ」
少し考えてから。
きょも「北斗とか特にきつくない?」
軽く振る。
一瞬。
全員の視線、北斗へ。
北斗、止まる。
北斗「……は?」
とぼける。
樹「いや無理だろあれは」
風磨「分かりやすすぎ」
きょも、少しだけ笑う。
きょも「ずっと静かだしね」
核心。
北斗、舌打ちしかけてやめる。
北斗「……暑いだけ」
またそれ。
樹「それ2回目」
風磨「便利だなその言葉」
北斗「うるせぇ」
でも、
否定しきれない。
さっきの光景。
頭から離れない。
濡れた髪。
タオル姿。
汗で少し赤くなった顔。
そして――
距離。
近すぎた。
北斗「……別に」
小さく。
北斗「普通だろ」
言い聞かせるみたいに。
樹「無理あるって」
風磨「バレバレ」
きょもは何も言わない。
ただ、少しだけ優しく見る。
分かってるから。
北斗の状態。
北斗、目閉じる。
熱が強くなる。
でもそれ以上に、
頭の中がうるさい。
さっきまで隣にいた〇〇。
今は外にいる。
それだけで、
少しだけ静かになるのに――
逆に、余計に鮮明に思い出す。
北斗「……ほんと」
小さく呟く。
樹「なに」
北斗「……めんどくせぇ」
本音。
風磨、笑う。
風磨「だろうな」
樹「楽しそうだけどな」
北斗「全然」
即。
でもその顔、
少しだけ――
余裕が崩れていた。
樹「……よし、出るか」
限界手前で判断。
風磨「ちょうどいいな」
きょも「いい感じかも」
北斗、無言で立ち上がる。
汗が一気に流れる。
さっきより静かな空気のまま、
4人、そのまま外へ。
外気に当たった瞬間、
全員、軽く息を吐く。
でも体はまだ熱い。
樹「ラストいくぞ」
そのまま迷いなく入る。
風磨も続く。
風磨「っ……くるな」
きょも「冷たい…でもいいね」
肩まで浸かる。
北斗も、遅れず入る。
水に触れた瞬間――
北斗「……っ」
一瞬、息止まる。
でもそのまま沈む。
肩まで。
冷たさが一気に広がる。
そして――
スッと、整う感覚。
樹「……きたな」
風磨「完成だな」
きょも「すごいねこれ」
静かな時間。
水の音だけ。
北斗、目閉じる。
さっきまでの熱と、
頭の中のざわつきが、
少しずつ引いていく。
でも――
完全には消えない。
〇〇のこと。
さっきの距離。
言葉。
全部、残ってる。
北斗「……はぁ」
小さく息吐く。
それを見て、
樹が少しだけ笑う。
樹「顔、戻ったな」
北斗「うるせぇ」
でも声は落ち着いてる。
風磨「分かりやすかったからな」
きょもは何も言わず、
ただ軽く微笑む。
更衣室へ
体の水気を軽く拭いて、
そのまま男子更衣室へ。
ロッカーの音。
タオルで髪を拭く音。
さっきまでの緊張は、
だいぶ抜けてる。
樹「いやーよかったな」
風磨「完璧」
きょも「気持ちよかった」
それぞれ着替え始める。
北斗も、無言で服を手に取る。
Tシャツを着る。
肌に布が触れる感覚、
なんか少しだけ現実に戻る感じ。
樹「〇〇どうしてるかな」
ぽつり。
風磨「もう休憩してんじゃね」
きょも「たぶん外いるよね」
北斗、手止まる。
ほんの一瞬。
また、意識が戻る。
「外にいる」
その事実だけで、
少しだけ心拍上がる。
風磨「迎え行くか」
樹「だな」
きょも「行こ」
自然な流れ。
北斗、最後にロッカー閉める。
小さく息吐く。
北斗「……」
整ったはずなのに、
また少しだけ崩れる感覚。
でも――
さっきよりはマシ。
逃げる気はない。
北斗「行くか」
小さく呟いて、
3人の後ろについて歩き出す。
ドアを開ける。
外の空気。
そして――
その先に、
〇〇がいる。
更衣室を出て、休憩スペースへ向かう通路。
樹「どこいんだろ」
風磨「外じゃね?」
きょも「ベンチとかかな」
歩きながら視線を巡らせる。
その時――
樹「あれ」
少し足止まる。
視線の先。
休憩スペースの端。
ベンチ。
〇〇がいる。
でも――
一人じゃない。
見知らぬ男。
ラフな格好で、距離が近い。
いかにも軽そうな雰囲気。
話しかけてる。
〇〇、座ったまま。
笑ってる。
でも――
どこか距離がある笑い方。
風磨「……誰」
樹「知らね」
きょも、少し表情変わる。
きょも「ナンパ?」
小さく。
北斗、完全に止まる。
視線、そこに固定。
状況、一瞬で理解する。
男「一人?」
軽いノリ。
〇〇「いや、連れいる」
即答。
でも柔らかい言い方。
角立てないように。
男「待ってる感じ?」
〇〇「まぁそんな感じ」
曖昧に濁す。
距離、少しだけ取る。
でも露骨に避けない。
“バレないように”の距離感。
男「サウナ好きなの?」
〇〇「まぁ普通に」
会話は成立してる。
でも、
完全に乗ってるわけじゃない。
ただ――
北斗の目には、
それでも近く見える。
妙に。
樹「……どうする」
小さく。
風磨「まだ様子見でよくね」
冷静。
きょもは静かに見てる。
でも――
北斗だけ違う。
空気が一気に変わる。
さっきまで整ってたもの、
全部崩れる。
男「てかさ、めっちゃタイプなんだけど」
軽く笑いながら。
ストレート。
〇〇、一瞬だけ止まる。
でもすぐ、
〇〇「そういうのいいから」
やんわり返す。
強くはない。
でも線は引く。
そのやり取り。
北斗の中で、何かが引っかかる。
“タイプ”
その言葉。
しかも、
見た目、チャラい。
でも――
どこかで思う。
「……あいつ、こういうの好きそう」
勝手な想像。
勝手な不安。
樹「北斗」
小さく呼ぶ。
北斗、返事しない。
視線、動かない。
男「連れ来るまでちょっと話そ?」
〇〇「いや大丈夫」
少しだけ距離取る。
でも立たない。
完全に拒否もしない。
“バレないように”
そのバランス。
きょも「そろそろ行く?」
静かに言う。
樹「だな」
風磨も頷く。
でも――
北斗、動かない。
一歩、踏み出せない。
見てる。
ただ、見てる。
頭の中、
さっきまでの時間と、
今の光景が混ざる。
サウナでの距離。
水風呂での会話。
そして今――
知らない男と話してる〇〇。
北斗「……」
小さく息吐く。
次の一歩。
踏み出すかどうか。
その選択だけが、
妙に重くなっていた。
男「連れ来るまでさ――」
そう言いながら、
距離を詰める。
そして――
手が伸びる。
〇〇の腕へ。
その瞬間。
「――やめろ」
低い声。
同時に、
男の腕が止まる。
掴まれてる。
北斗の手。
しっかりと、逃がさない力。
男「は?」
振り向く。
北斗、真っ直ぐ見てる。
さっきまでの静けさはもうない。
完全にスイッチ入ってる。
北斗「触んな」
短く。
でも、はっきり。
空気、一瞬で変わる。
〇〇、驚いて見る。
北斗の背中。
すぐ目の前。
男「誰だよお前」
少しイラついた声。
でも、
北斗、一歩も引かない。
むしろ少しだけ前に出る。
〇〇との間に、
自然に入る形。
完全に守る位置。
北斗「連れだよ」
視線、外さない。
北斗「分かるだろ、そのくらい」
静か。
でも圧がある。
男、少しだけたじろぐ。
北斗の雰囲気。
さっきまでの軽い空気とは違う。
明らかに“踏み込んでくるタイプ”。
男「……ちっ」
舌打ち。
手、引く。
北斗もゆっくり離す。
でも視線は外さない。
男「最初から言えよ」
〇〇に向かって言う。
〇〇「言ってたけど」
冷静に返す。
男、何も言わず、
そのまま去っていく。
少しの沈黙。
空気、まだ張ってる。
北斗、やっと力抜く。
小さく息吐く。
振り返る。
〇〇、少し驚いた顔のまま。
でも――
ちゃんと見てる。
北斗を。
北斗「……大丈夫か」
さっきより少し低い声。
〇〇「……うん」
小さく頷く。
でも目、逸らさない。
そのまま数秒。
何も言わない時間。
樹と風磨、
少し離れたところで見てる。
きょもも静かに。
誰も入らない。
北斗、少しだけ視線逸らして、
ぽつり。
北斗「……ああいうの、ちゃんと断れよ」
少しだけ不器用な言い方。
〇〇、少しだけ笑う。
〇〇「断ってたでしょ」
北斗「……弱い」
即。
〇〇「は?」
北斗「伝わってねぇ」
少しだけ強く。
でも、
怒ってるわけじゃない。
ただ、
守れなかったかもしれない可能性に、
少しだけイラついてる。
〇〇、少しだけ黙る。
その言葉、
ちゃんと刺さる。
でも――
〇〇「……助けてくれてありがと」
素直に言う。
北斗、止まる。
その一言。
一瞬、言葉詰まる。
北斗「……別に」
視線逸らす。
でも、
耳、少し赤い。
〇〇、少しだけ見る。
その反応。
さっきまでの空気と違う。
北斗の中で、
何かがはっきり変わった瞬間。
そして――
〇〇の中でも、
少しだけ、
見え方が変わり始めていた。
男が去って、
少しだけ残る空気。
その張り詰めた感じの中――
「おつかれー」
軽い声。
風磨。
いつものテンションで近づいてくる。
その後ろに樹ときょも。
一気に空気が戻る。
風磨「なに、今の」
軽く覗き込む。
〇〇「ナンパ」
あっさり。
樹「分かりやす」
きょも「大丈夫だった?」
〇〇「うん」
短く頷く。
でも視線は一瞬、
北斗の方に向く。
それを、
3人とも見逃さない。
風磨、ニヤッとする。
風磨「北斗が守った感じ?」
樹「かっけぇじゃん」
即いじり。
北斗「うるせぇ」
低く返す。
でもさっきほどの鋭さはない。
少しだけ戻ってる。
きょも、優しく入る。
きょも「間に合ってよかったね」
北斗「……まぁな」
短く。
〇〇「普通にびっくりした」
少し息吐く。
風磨「まぁああいうのいるからな」
慣れてる口調。
〇〇「だから来たくなかったんだよね」
ぽつり。
樹「それは初耳」
〇〇「人多いとこ苦手」
さらっと言う。
でも、
少しだけ本音。
北斗、ちらっと見る。
その言葉、
頭に残る。
風磨「じゃあ余計来てよかったじゃん」
〇〇「なんで」
風磨「北斗いるし」
即。
一瞬、空気止まる。
北斗「おい」
樹、笑い堪えてる。
樹「それな」
きょも、少しだけ苦笑。
〇〇「……は?」
〇〇、少しだけ困る。
でも完全否定もしない。
その微妙な間。
北斗「変なこと言うな」
軽く流そうとする。
風磨「事実だろ」
樹「さっきの見たらな」
北斗「うるせぇって」
でも、
さっきみたいな強さじゃない。
〇〇、少しだけ視線逸らして、
ぽつり。
〇〇「……助かったけどね」
小さく。
でもちゃんと聞こえる。
北斗、固まる。
また。
その一言。
樹「ほら」
ニヤける。
風磨「2回目だぞ今の」
北斗「数えんな」
低く言う。
でも、
隠しきれてない。
きょも「じゃあさ」
空気を少し変えるように。
きょも「少し休んで帰る?」
〇〇「そうしたい」
即。
樹「だな」
風磨「賛成」
流れ、自然に落ち着く。
ベンチに座る。
さっきより距離、少し近い。
無意識に。
〇〇と北斗も、
完全に離れない位置。
でも、
さっきとは違う。
変な緊張じゃなくて、
少しだけ“意識してる距離”。
会話は普通。
でも、
ところどころ視線が重なる。
すぐ逸らす。
でもまた戻る。
樹と風磨、
完全に察してる顔。
きょもは静かに見守る。
誰も無理に触れない。
でも、
さっきの出来事で――
確実に何かが動いた。
その空気だけは、
全員が分かっていた。
ーーーーーーーーー
〇〇 side
――休憩スペース、ひとり。
2ラウンド終わって、
体は軽いのに、
ちょっとぐったりしてて。
ベンチに座って、
ぼーっとしてた。
「……気持ちいい」
小さく呟く。
風、ちょうどいい。
目閉じかけた時――
「一人?」
声。
開ける。
知らない男。
「……あー」
一瞬で理解。
ナンパ。
内心、
「やだな」
でも顔には出さない。
〇〇「いや、連れいる」
やんわり。
男「待ってる感じ?」
〇〇「まぁそんな感じ」
適当に合わせる。
ここで強く断ると、
逆に目立つ。
バレる可能性上がる。
それだけは避けたい。
男「サウナ好きなの?」
〇〇「普通に」
会話はする。
でも、
深く入らせない。
距離、少しずつ取る。
でも露骨にはしない。
「めんどくさいな」
正直、それだけ。
男「てかさ、めっちゃタイプなんだけど」
「……はい来た」
内心でため息。
〇〇「そういうのいいから」
軽く返す。
でも強くは言わない。
ここで強く出たら、
面倒になる。
分かってるから。
男「連れ来るまでちょっと話そ?」
〇〇「いや大丈夫」
少しだけ距離取る。
でも――
完全には振り切らない。
“芸能人バレ回避モード”
自然に、
普通の女の子として、
角立てないように。
その時。
男の手、動く。
腕に触れようとする。
「……は?」
一瞬、
体が反応する前に――
「――やめろ」
低い声。
止まる。
男の腕。
誰かに掴まれてる。
視線、上げる。
北斗。
目、真っ直ぐ。
空気、さっきまでと全然違う。
「……え」
ちょっと、びっくりする。
こんな顔、あんまり見たことない。
北斗「触んな」
短い。
でも、強い。
そのまま、
自分の前に入る。
自然に。
守るみたいに。
「……なにそれ」
一瞬、思う。
でも声には出ない。
男とのやり取り、
正直あんまり入ってこない。
全部、
北斗に持っていかれてる。
背中、近い。
距離、ゼロ。
さっきまでサウナで一緒にいたのに、
全然違う距離に感じる。
男が去る。
静かになる。
北斗、振り返る。
北斗「……大丈夫か」
低い声。
さっきより少し柔らかい。
〇〇「……うん」
普通に返すつもりなのに、
少しだけ間ができる。
なんか、
ちょっとだけ心拍上がってる。
北斗「……ああいうの、ちゃんと断れよ」
少し強め。
〇〇「断ってたでしょ」
いつも通り返す。
北斗「……弱い」
その一言。
少しだけ引っかかる。
でも――
分かる気もする。
「確かに」
って思ってる自分もいる。
〇〇「……助けてくれてありがと」
自然に出た。
北斗、止まる。
視線逸らす。
「……分かりやす」
ちょっと思う。
でも言わない。
その時、
風磨たち来る。
空気、一気に戻る。
でも――
さっきの感じ、
消えない。
風磨「北斗いるし」
その一言。
「……は?」
ってなる。
でも、
否定しきれない。
さっきの光景があるから。
〇〇「……助かったけどね」
小さく言う。
これも自然に出た。
ベンチに座る。
みんなで。
会話は普通。
笑ってる。
でも――
意識、ちょっと変。
横。
北斗いる。
さっきまでと同じ人なのに、
なんか違う。
さっきの背中、
頭から離れない。
「……なんだろ」
自分でも分かんない。
恋とか、
そういうのじゃない。
まだ。
でも、
ただの“戦友”って言い切るには、
ちょっとだけ違う感覚。
〇〇「……」
ふと横見る。
北斗も、
ちょうどこっち見てた。
一瞬、目合う。
すぐ逸らす。
でも――
さっきより、
ちょっとだけ、
その一瞬が長く感じた。
さっきからちょっと変な感じするけど、
正直、
そこまで深く考えてない。
〇〇「……まぁいっか」
すぐ切り替える。
タオルで髪わしゃわしゃ拭きながら、
普通に戻る。
樹「このあとどうする?」
風磨「飯行く?」
きょも「いいね」
話、進んでく。
〇〇「行く行く」
即。
全然元気。
さっきまでのナンパとか、
もうだいぶどうでもいい。
〇〇「お腹すいた」
素直。
風磨「回復早」
樹「さすがだな」
きょも、少し笑う。
きょも「何食べたい?」
〇〇「肉」
即答。
樹「分かりやす」
風磨「サウナ後に肉は強いな」
〇〇「今ならいける」
謎の自信。
北斗、横で少しだけ笑う。
その空気、
もうほぼいつも通り。
〇〇、ふと北斗見る。
さっきのこと、
一瞬だけ頭よぎる。
でも――
〇〇「……ありがとね、さっき」
軽く。
重くならないように。
北斗「……別に」
短く返す。
それで終わり。
深くならない。
〇〇「助かったわー普通に」
明るく言う。
〇〇「一人だったらめんどかった」
北斗「……なら最初から断れ」
〇〇「断ってたってば」
軽く言い返す。
このテンポ。
完全にいつも通り。
北斗も、それ以上言わない。
風磨「で、どこ行く?」
話戻る。
樹「近くでいいだろ」
きょも「混んでないとこがいいね」
〇〇「焼肉ある?」
樹「ある」
〇〇「じゃあそこ」
即決。
風磨「決まりだな」
立ち上がる流れ。
〇〇も立つ。
体、だいぶ軽い。
〇〇「サウナありだね」
ぽつり。
きょも「でしょ?」
〇〇「でも3回目は無理」
樹「逃げたやつが言うな」
〇〇「うるさい」
軽く笑う。
そのまま歩き出す。
並びは自然。
樹と風磨が前。
きょもと〇〇が真ん中。
北斗が少し後ろ。
でも、
完全に離れてるわけじゃない。
〇〇、歩きながらふと思う。
「なんか今日、ちょっと変だったな」
でも――
深く考えない。
〇〇「ま、いっか」
すぐ終わり。
今はそれより、
〇〇「早く肉食べたい」
そっちの方が大事。
その軽さが、
逆に空気をちょうどよくしてる。
北斗は後ろから見てる。
その背中。
何も考えてなさそうで、
でもさっきのことは確実にあった。
そのギャップに、
少しだけ笑う。
北斗「……ほんと」
小さく呟く。
北斗「分かんねぇやつ」
でもその声は、
どこか少しだけ楽しそうだった。
外の空気、ちょっと涼しい。
サウナ後だから余計に気持ちいい。
〇〇「お腹すいたー」
先頭で言う。
樹「さっきも言ってた」
風磨「ずっと言ってる」
〇〇「だってほんとにすいてるもん」
きょも、少し笑う。
きょも「何が一番食べたい?」
〇〇「タン」
即。
樹「はい出た」
風磨「王道すぎ」
〇〇「最初はタンでしょ」
譲らない。
歩きながら、
完全に食べるモード。
さっきの出来事、
ほぼ頭にない。
北斗は少し後ろ。
その会話聞きながら、
ふっと笑う。
「……切り替え早すぎ」
小さく思う。
でもそれが〇〇。
変に引きずらない。
それがいいところでもあって、
たまに――
少しだけもどかしい。
店に到着。
樹「ここな」
〇〇「いいじゃん」
すぐテンション上がる。
中に入る。
店員に案内されて、
個室。
丸テーブル。
自然と席決まる。
樹と風磨が横並び。
きょもがその隣。
〇〇、その向かい。
で――
北斗が〇〇の隣。
距離、近い。
座った瞬間、
〇〇「あ、涼しい」
エアコンに反応。
すぐそっち。
北斗、少しだけ横見る。
さっきより自然に近い距離。
でも、
〇〇は全然気にしてない。
メニュー開く。
〇〇「え、全部美味しそう」
即テンションMAX。
樹「さっきまで死んでたやつとは思えない」
風磨「回復力えぐい」
きょも「元気でよかった」
〇〇「もう完全復活」
ドヤ顔。
北斗、思わず笑う。
〇〇、それに気づく。
〇〇「なに」
北斗「いや、早すぎだろ」
〇〇「でしょ」
なぜか誇らしげ。
そのやり取り、
自然。
さっきの変な空気はほぼない。
店員「ご注文お決まりですか?」
樹「とりあえずタン5人前」
〇〇「最高」
風磨「あと適当に頼むか」
どんどん注文進む。
〇〇、メニュー見ながら、
横にちょっと寄る。
北斗との距離、さらに近くなる。
無意識。
〇〇「これ美味しそうじゃない?」
北斗の方に見せる。
北斗「……あー、いいんじゃね」
普通に返す。
顔、近い。
でも〇〇は気にしてない。
北斗だけ、
ちょっと意識してる。
「……近いって」
内心。
でも離れない。
そのまま。
〇〇「じゃあこれも頼も」
すぐ決定。
話、進む。
肉が来る。
焼き始める。
ジュウって音。
いい匂い。
〇〇「やば」
完全に食に集中。
トング持つ。
〇〇「私焼く」
樹「珍しいな」
風磨「信用していい?」
〇〇「するしかない」
強気。
きょも、笑う。
〇〇、真剣に焼く。
ちょっとだけ不器用。
北斗、横で見てる。
北斗「それまだ早い」
ぽつり。
〇〇「え、うそ」
北斗「もうちょい」
自然に指摘。
〇〇「……はい先生」
軽く言う。
北斗「先生じゃねぇ」
でも普通に教える。
その距離。
その空気。
もう完全に“いつも通り”。
でも――
さっきの出来事がある分、
ほんの少しだけ、
何かが変わってる。
それを一番分かってないのは、
多分――〇〇本人だけ。
ーーー
ジュウゥゥ……
肉の焼ける音。
煙といい匂い。
〇〇「できた!」
ちょっと早い。
北斗「まだ」
即。
〇〇「え、もういいでしょ」
北斗「赤い」
〇〇「大丈夫大丈夫」
そのまま取ろうとする。
北斗、トング軽く止める。
北斗「ダメ」
〇〇「えー」
子どもみたいな反応。
樹「完全に飼い主と犬」
風磨「それな」
きょも、笑ってる。
〇〇「誰が犬」
北斗「お前」
即。
〇〇「は?」
でもちょっと笑ってる。
そのまま、
北斗が焼き直す。
〇〇、横でじっと見る。
〇〇「いつ食べれる?」
北斗「あとちょい」
〇〇「長い」
北斗「待て」
〇〇「無理」
このやり取り、
完全にテンポできてる。
樹「夫婦かよ」
風磨「完成してるな」
きょも「いいね」
〇〇「違うから」
即否定。
北斗も何も言わない。
でも、
ちょっとだけ空気詰まる。
一瞬だけ。
でもすぐ――
〇〇「もういい?」
また戻る。
北斗「……いい」
やっとOK。
〇〇「やった」
すぐ食べる。
〇〇「……うま」
顔、緩む。
風磨「幸せそうだな」
樹「単純」
〇〇「うるさい」
でも笑ってる。
そのまま、
みんなも食べ始める。
会話も普通に続く。
きょも「今日どうだった?」
〇〇「サウナ?」
きょも、頷く。
〇〇「思ったより良かった」
素直。
樹「だろ?」
風磨「ハマるぞ」
〇〇「いやでも3回目は無理」
まだ言う。
北斗、少し笑う。
北斗「逃げたやつが」
〇〇「うるさい」
軽く小突く。
その距離、近いまま。
自然。
でも、
その瞬間だけ、
北斗の手止まる。
触れられたとこ、
ちょっと意識する。
でも顔には出さない。
〇〇は気づいてない。
次の肉に夢中。
〇〇「これ焼いていい?」
北斗「いいけど、ちゃんと見ろよ」
〇〇「はいはい先生」
北斗「だから先生じゃねぇ」
また同じやり取り。
樹と風磨、
完全に楽しんでる。
樹「いいなこの感じ」
風磨「見てて飽きない」
きょも、静かに笑う。
〇〇「なにが」
樹「いや別に」
ニヤニヤ。
〇〇、意味わかってない。
普通に焼き続ける。
北斗、横で見ながら、
ふとさっきのこと思い出す。
ナンパの男。
腕、掴もうとした瞬間。
あの時の自分。
今のこの空気と、
全然違う。
北斗「……」
少しだけ息吐く。
横見る。
〇〇、笑ってる。
肉で。
「……なんだよそれ」
小さく思う。
でも、
その無防備さに、
少しだけ救われてる自分もいる。
〇〇「次これね!」
テンション高め。
北斗「はいはい」
普通に返す。
その距離。
その空気。
さっきよりも自然で、
でも確実に前より近い。
誰もはっきり言わないけど、
少しずつ、
何かが変わっていってる時間だった。
ーーーー
肉もだいぶ進んで、
お腹も満たされてきた頃。
会話、どんどんラフになる。
風磨「てかさ」
ぽつり。
風磨「今日の〇〇、最初やばかったよな」
〇〇「なにが」
樹「サウナ入った瞬間の顔」
きょも、思い出して笑う。
きょも「あれ面白かった」
〇〇「ちょっと待って」
〇〇「そんな顔してた?」
風磨「してた」
即。
樹「“終わった…”みたいな顔」
完全再現。
〇〇「してないって!」
風磨「してたって」
きょも「目がこう…」
ちょっと細めて真似する。
〇〇「やめてそれ!」
北斗、横で吹き出す。
〇〇「北斗も笑ってるじゃん!」
北斗「いや、似てる」
〇〇「最悪」
でも自分でもちょっと笑ってる。
樹「で、水風呂な」
風磨「あれもやばかった」
〇〇「なに!」
樹「“むりむりむり…”って」
小声で再現。
完璧。
一瞬の沈黙――
全員「wwwww」
大爆笑。
〇〇「言ってないって!」
風磨「言ってた!」
きょも「めっちゃ言ってた」
北斗、完全に笑ってる。
〇〇「やだもう!」
恥ずかしそうに笑う。
でも止まらない。
樹「しかもさ」
さらに畳みかける。
樹「最後“あれ気持ちいいかも”って」
風磨「手のひら返しな」
また再現。
全員「wwwww」
〇〇「違うって!!」
笑いながら否定。
でも完全にバレてる。
きょも「でも可愛かったよ」
さらっと。
〇〇「フォローいらない!」
でもちょっと嬉しそう。
北斗、まだ笑ってる。
〇〇、それ見る。
〇〇「そんな笑う?」
北斗「……いや」
息整えながら。
北斗「お前、分かりやすすぎ」
〇〇「は?」
北斗「顔に全部出てる」
〇〇「出てない」
即否定。
樹「出てる」
風磨「100%」
きょも「出てるね」
全員一致。
〇〇「最悪なんだけど」
でも笑ってる。
そのまま、
笑いが止まらなくなる。
誰かが笑うと、
また誰かがつられて。
〇〇も、
お腹抱えるくらい笑う。
〇〇「もう無理!」
涙出るレベル。
北斗も珍しく声出して笑ってる。
その顔見て、
〇〇また笑う。
〇〇「北斗が一番笑ってるじゃん!」
北斗「お前のせいだろ」
〇〇「人のせいにすんな!」
また笑う。
樹「やばい腹痛い」
風磨「久々こんな笑った」
きょも「いいねこういうの」
ほんとに、
ただ楽しい時間。
さっきまでの微妙な空気とか、
全部どっか行ってる。
〇〇「今日来てよかったわ」
ぽつり。
自然に出る。
その一言。
北斗、少しだけ反応する。
北斗「……だな」
小さく。
でもちゃんと同意。
その空気のまま、
また誰かがくだらないこと言って、
また笑って。
止まらない。
ただの仲間の時間。
でも――
確実に、
前よりちょっとだけ、
特別になってる時間だった。
ーーー
皿もほぼ空。
肉のペースも落ちて、
空気はゆるい。
樹「……食ったな」
風磨「食った」
きょも「満足」
〇〇「もう無理」
背もたれにぐったり。
でも顔は満足そう。
北斗、横で水飲む。
静かな余韻。
さっきまでの笑いが嘘みたいに、
ちょっと落ち着いた空気。
樹「そろそろ出る?」
風磨「だな」
きょも「いい時間だしね」
自然な流れ。
〇〇「帰るかー」
ちょっと名残惜しそう。
でも素直に立つ。
会計は樹と風磨がさっと動く。
〇〇「え、出す」
樹「いいって」
風磨「今日は俺ら」
〇〇「いやいや」
軽く揉める。
結局――
樹「次でいい」
一言で終了。
〇〇「……じゃあ次出す」
素直に引く。
外へ出る。
夜の空気。
さっきより少し冷たい。
〇〇「さむ」
腕さする。
きょも「風邪ひくよ」
軽く笑う。
樹「じゃあここで解散でいいか?」
風磨「だな」
自然に輪になる。
いつもの解散の感じ。
でも、
ちょっとだけ今日特有の余韻。
〇〇「楽しかった」
素直に言う。
風磨「だな」
樹「また行こ」
きょも「次は3ラウンドね」
〇〇「それは無理」
即。
笑い。
空気、柔らかいまま。
一人ずつ、
「おつ」「また」
軽く手振る。
風磨と樹が先に離れる。
きょもも、
〇〇に軽く手振って
〇〇「またねー」
手振って歩き出す。
北斗も反対方向――
に行こうとして、
一瞬止まる。
「……あ」
同じ方向。
タイミング、完全に一緒。
〇〇も気づく。
〇〇「……あれ」
少し振り返る。
目、合う。
数秒。
〇〇「同じじゃん」
普通に言う。
北斗「……だな」
ちょっとだけ気まずい間。
でも――
どっちもそのまま歩き出す。
並ぶ形。
距離は少しだけ空いてる。
でも遠くはない。
夜の道。
静か。
さっきまでの騒がしさが嘘みたい。
〇〇「……今日さ」
ぽつり。
北斗「ん?」
〇〇「サウナ普通に良かった」
北斗「だろ」
〇〇「でも3回目は無理」
北斗「まだ言うか」
〇〇「言う」
少し笑う。
その空気、
だいぶ自然。
歩幅もなんとなく揃ってくる。
〇〇「北斗はさ」
北斗「なに」
〇〇「よくあんな平気で入れるよね」
北斗「慣れてるだけ」
〇〇「すご」
素直。
少し間。
また歩く音だけ。
〇〇、ふと横見る。
北斗、前見てる。
その横顔、
街灯で少し照らされる。
「……」
一瞬だけ、
さっきのこと思い出す。
でも――
深く考えない。
〇〇「ね」
北斗「ん?」
〇〇「さっきのやつさ」
ナンパの話。
北斗、少しだけ反応する。
〇〇「普通にめんどかったわ」
軽く言う。
北斗「……だろうな」
短く。
〇〇「ありがとね、ほんと」
また軽く。
北斗「……いいって」
同じやり取り。
でも今は、
さっきより静か。
〇〇「なんかさ」
続ける。
北斗、ちらっと見る。
〇〇「ちょっとびっくりした」
北斗「なにが」
〇〇「北斗」
そのまま。
北斗、止まる。
〇〇「なんか、普通にかっこよかった」
さらっと。
重さゼロ。
でもストレート。
北斗「……」
言葉詰まる。
〇〇、もう前見てる。
特に深い意味なく言ってる顔。
北斗「……そうかよ」
それしか出ない。
でも、
耳ちょっと赤い。
〇〇「うん」
普通に頷く。
また沈黙。
でも、
さっきまでと違う。
少しだけ、
意識が混ざる沈黙。
〇〇「お腹いっぱいすぎて眠い」
急に話変える。
北斗「早すぎ」
〇〇「帰ったら即寝る」
北斗「風呂入れ」
〇〇「サウナ入ったからいいでしょ」
北斗「ダメだろ」
〇〇「めんどい」
またこの感じ。
完全にいつもの会話。
北斗も、少し笑う。
歩きながら、
少しずつ距離縮まる。
無意識に。
〇〇「ここ曲がる」
自分の分かれ道。
立ち止まる。
北斗も止まる。
〇〇「じゃあね」
軽く。
北斗「……おう」
短く。
〇〇「またね」
手振る。
そのまま歩いていく。
北斗、少しだけ見送る。
さっきの一言、
頭に残る。
「かっこよかった」
北斗「……」
小さく息吐く。
北斗「反則だろ」
ぽつり。
誰もいない道。
そのまま、
自分も別方向へ歩き出す。
今日一日、
終わったはずなのに――
なんか、
終わってない感じだけが残っていた。
ーーーーーーーーー
北斗 side
――家、夜。
ドア閉めて、
靴脱いで、
そのまま部屋に入る。
静か。
さっきまでの空気が嘘みたい。
北斗「……はぁ」
ソファに座る。
そのまま後ろに倒れる。
天井見る。
目閉じると――
勝手に思い出す。
朝から。
樹と風磨の顔。
「サウナ行くぞ」って流れ。
正直、
最初は普通だった。
ただのいつものノリ。
でも――
〇〇が来るって聞いた時点で、
ちょっとだけ違った。
北斗「……」
目、開ける。
天井ぼんやり見ながら。
サウナ。
あの空間。
距離。
近すぎた。
水風呂も。
横にいるのが当たり前みたいで、
でも全然当たり前じゃなくて。
北斗「……無理だろ」
小さく呟く。
思い出すだけで、
ちょっとだけ心拍上がる。
それから――
ナンパ。
あの瞬間。
腕、伸びたの見えた時。
何も考えてなかった。
気づいたら動いてた。
北斗「……」
手、軽く見る。
掴んだ感覚、
まだ残ってる気がする。
北斗「触んな」
あの時の自分の声。
正直、
自分でもちょっと驚いてる。
あんなはっきり出ると思ってなかった。
でも――
あれは迷わなかった。
北斗「……当たり前か」
ぽつり。
当たり前。
そう言い聞かせる。
でもその後。
〇〇の顔。
「ありがと」
普通に言ってきて。
しかも、
あとでまた言ってきて。
北斗「……何回言うんだよ」
少し笑う。
でも、
ちゃんと残ってる。
あの感じ。
焼肉。
あれはもう、
普通だった。
いつも通り。
笑って、
バカみたいな話して。
でも、
たまにふとした瞬間、
距離近くて。
北斗「……」
少しだけ顔しかめる。
思い出す。
隣。
メニュー見せてきた時。
小突かれた時。
全部、無意識。
あいつは何も考えてない。
だから余計に――
北斗「めんどくせぇ」
本音。
でも嫌じゃない。
むしろ、
楽しかったのは事実。
北斗「……」
少し間。
そして最後。
帰り道。
同じ方向。
あれも、
ちょっとだけ意外だった。
静かで。
変に気まずくなくて。
普通に話して。
で――
「かっこよかった」
北斗「……は?」
思い出して、
一人で言う。
北斗「なんだよそれ」
顔、少ししかめる。
でも、
耳の奥がちょっと熱い。
北斗「……軽すぎだろ」
あいつらしい。
深い意味ない。
分かってる。
分かってるのに――
残る。
北斗「……」
ソファから起き上がる。
水飲む。
一口。
喉通る感覚で、
少し落ち着く。
でも完全には消えない。
今日一日。
全部。
サウナも、
ナンパも、
焼肉も、
帰り道も。
全部に〇〇がいる。
北斗「……」
小さく息吐く。
北斗「やっぱ」
少しだけ笑う。
北斗「めんどくせぇな」
でもその声、
どこか少しだけ――
楽しそうだった。