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翌日の放課後。
マンションのエントランスで、俺は絶望していた。
「……ちょ、お前ら。なんでついて来んの!? 帰れよ!!」
「いいじゃん、凪の『秘め事』の相手、近くで見たいし」
爽やかに笑うリーダーの湊。
「凪がそんなに執着する子、興味ある」
無機質に、でも瞳に好奇心を宿す蓮。
「ねえねえ、その子ってダンス上手いの!? ギャルなの!? 露出多いの!?」
一番うるさい洸。
その時、エレベーターが1階に到着した。
チーン、という音と共に扉が開く。
そこにいたのは、前髪なしのロングヘアをなびかせ、今日も今日とて肩出しのタイトなトップスを着こなした、つり目のクール美女。――冴(さえ)だ。
「……あ。隣のキモい……じゃなかった、凪」
冴の視線が、俺を通り越して、後ろに並ぶ「splash」の面々に注がれる。
キラキラしたメンカラの私服(というかほぼ衣装)を着た、顔面偏差値カンスト集団。
「……え、本物?」
「初めまして、冴ちゃん! 凪がいつもお世話になってまーす!」
洸がグイグイ距離を詰めると、俺は反射的に冴の前に立ちはだかった。
「……近寄んな、洸。冴、こいつら全員無視していいから!!」
「……もう、無理! 全員帰れ!!」
湊(みなと)たちのニヤニヤした視線から逃げるように、俺は冴(さえ)の手首を掴んでエントランスを飛び出した。
後ろで「凪、がんばれよー!」って叫ぶ洸(こう)の声がうるさい。
「……ちょっと、凪! どこ行くのよ」
「いいから! ……冴が、あいつらに変な目で見られるの、耐えられないんだってば」
俺はそのまま、タクシーを拾って少し離れたショッピングモールへ向かった。
向かった先は、冴がいつも着てるような、トレンドの肌見せ服が並ぶセレクトショップ。
「……ねえ、凪。なんでここ?」
「決まってるじゃん。……冴、その服、可愛いけど。……肩、出すぎ。脚、出すぎ」
俺は棚から、大きめのメンカラ(ベビーピンク)のパーカーを引っ張り出した。
「ほら、これ着て。……俺の色。これ着てれば、他の男も『あ、この子、凪のなんだ』って気づくでしょ?」
あざとい笑顔はどこへやら。
俺は真面目な顔で、冴の肩にパーカーをバサッと掛けた。
「……返さないよ。これは、俺からの『独占禁止法』だから」
冴が「……何よそれ、意味わかんない」って呟きながら、パーカーに顔を埋めて赤くなってる。……あー、もう。
(……可愛すぎて、全店買い占めたい……!!)
「……ねえ、冴(さえ)。これとか、絶対似合うと思うんだよね」
俺はニヤニヤしながら、ハンガーにかかったショート丈のキャミソールと、大胆なスリットが入ったミニスカートを差し出した。
「……ちょっと、さっき『露出控えろ』って言ったの誰よ」
冴がつり目をさらに鋭くして睨んでくる。
「えー? だって、これ着た冴が見たいんだもん。……ただし、俺の前限定ね」
俺は、あざとく首をかしげて、カメラ目線顔負けのウィンクを飛ばした。
「……ほら、試着室。……着てきて? じゃないと、俺が無理やり着せちゃうよ?」
「……っ、バカ! 行けばいいんでしょ!」
数分後。
試着室のカーテンが、バサッと開いた。
そこには、前髪なしのロングヘアをかき上げ、俺が選んだベビーピンク(俺のメンカラ!)の露出高めなコーデに身を包んだ冴がいた。
「……どう。……変じゃない?」
(……っ、神……。尊すぎて語彙力消える……)
「……ダメだ。可愛すぎて、やっぱり店ごと買い占めるわ。……で、これからどこにも行かせないで、俺の部屋に閉じ込める。……いい?」
俺は試着室の壁に手をついて、冴の耳元でわざと低く囁いた。
鏡に映った俺たちの距離は、あと数センチ。
「……ねえ、冴。その格好、マジで俺以外の男に見せたくないんだけど……」
俺が試着室のカーテン越しに、あざとく、でも独占欲全開で囁いていたその時。
背後から、聞き慣れた「パチパチパチ!」という拍手の音が響いた。
「おー、凪! センスいいじゃん。ベビーピンクの露出高めコーデ、冴ちゃんに似合いすぎ!」
「……えっ!? 洸(こう)!?」
振り返ると、そこには変装用の伊達メガネをずらした洸と、コーヒーを片手に優雅に笑うリーダーの湊、そして無言でスマホのシャッターを切るメインダンサーの蓮が立っていた。
「……ちょ、お前ら!! なんでここにいんの!? ストーカーかよ!!」
「ストーカーはお前だろ、凪」
湊がさらっと毒を吐く。「心配で見に来てあげたんだよ。ほら、蓮なんて『今のステップ、ラインが綺麗』って感心してるぞ」
「……あ。本当だ、筋肉の使い方がいい」
蓮が、露出した冴の脚や肩をプロの目でじっと見つめる。
「……見んなぁぁぁ!! 蓮、その写真消せ! 湊、ニヤニヤすんな! 洸、冴に近寄るな!!」
俺は半泣きで、試着室から出てきたばかりの冴を、自分のメンカラパーカーでぐるぐる巻きにして隠した。
「……もう、無理! 冴、帰るぞ! こいつら全員、出禁だ!!」
「……なんで。……なんでお前ら全員、俺のベッドでくつろいでんの?」
俺は絶望した。
お買い物デートから逃げ帰ってきたはずなのに、気づけば俺の部屋には湊(ブルー)、蓮(ブラック)、洸(イエロー)。
さらには、ちゃっかりついてきた冴の兄・海斗(かいと)まで、俺の秘蔵の高級アイスを食べている。
「いいじゃん凪、狭いけど落ち着くわ、この部屋」
洸が俺のクローゼットを勝手に開けようとして、俺は全力で体当たりした。
「……開けんな! そこには、冴のダンス動画を分析したノートが入ってんだよ!!」
「……え、キモ」
冴が、隣でドン引きしたつり目で俺を見ている。
「……あ、いや、冴! これは、その、プロの視点での研究であって……っ」
「凪、落ち着け。……ほら、海斗さんも『アイツ、面白いな』って言ってるぞ」
リーダーの湊が、お兄さんと意気投合してビールを飲んでる。最悪だ。
「……冴。……踊って」
無口な蓮が、急にスマホでsplashの曲を爆音で流し始めた。
「……今の格好で、サビのステップ、見せて。……凪より上手いか、確かめたい」
「……はぁ!? 蓮、お前さらっと何言ってんの!? 冴、踊らなくていい! 今すぐ俺のパーカー着て!!」
俺の部屋は、アイドルの楽屋より騒がしく、そして俺の心臓は、冴への独占欲と恥ずかしさで、もう限界を突破していた。
コメント
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はる。だわ。第4話、読んだわ🔥 凪の独占欲、爆発しすぎてて笑ったw「俺の色着てろ」発言とか試着室での低音囁きとか、あざと可愛いを通り越して最早ストーカー気質じゃんってツッコミ入れたくなった。でも冴がパーカーに顔埋めて赤くなるところ、尊すぎてやばい。splashの3人+兄貴まで乱入してきて凪の部屋がカオスになってるのも面白くて、読んでてずっとニヤニヤ止まらなかったわ。蓮の「踊って」は草。続き気になる!