晴明が目を開けたのは、まだ夜の気配が残る静かな時間だった。
薄暗い部屋に、外の雨音だけがぽつぽつと聞こえている。
天井をぼんやり見つめて、しばらく何も考えられなかった。
体はまだ熱く、喉がひりひりして痛い。
けれど、この部屋が“どこ”なのか、はるあきには分からなかった。
晴明『……くらい……』
小さく呟いた声が、すぐに静けさに吸い込まれていく。
誰も答えない。
少し怖くなって、布団の端をぎゅっと掴んだ。
喉、かわいた……。
隣で二人が寝ている。
でも、呼んだら怒られるかもしれない。
お母さんはいつも、「勝手にしゃべるな」って言ってた。
だから、声を出すのが怖かった。
……おみず、ほしい。
そう思って、ゆっくりと体を起こす。
頭がふらふらして、足がしびれてる。
でも、なんとか立ち上がって、畳の上をよろよろ歩いた。
障子を開けると、廊下の明かりがぽうっと灯っていた。
ひとけはない。
雨の匂いが、少しだけ入りこんでくる。
はるあきは、壁づたいに小さく歩いた。
ふらついて、足音はほとんどしない。
台所らしき場所を見つけて、戸を少し開ける。
暗い部屋の中に、湯呑みがいくつか並んでいた。
でも、どうしたらいいのか分からなかった。
高い棚の上にある水瓶を見つけても、届かない。
晴明『……とどか、ない……』
小さな声で呟いたとき、後ろで床がきしんだ。
道満「……おい、なにしてんだ」
低い声にびくっと体をこわばらせる。
振り返ると、そこにいたのはあの時の顔が怖い人。
寝起きなのか、片手で頭をかきながらこちらを見ている。
道満「……おまえ、起きてたのか。熱、下がってねぇだろ」
晴明は口をぱくぱくさせたけど、言葉が出なかった。
怒ってるのか、怖いのか、分からない。
その視線に怯えて、指先をぎゅっと握る。
晴明『……の、ど……』
ようやくそれだけ言えた。
道満は一瞬きょとんとしたあと、ふっとため息をついた。
道満「……水か。待ってろ」
短くそう言って、棚の奥からコップを取り出した。
水瓶を傾ける音がして、冷たい水が注がれる。
それを受け取って、ごくり、と飲む。
喉を通る冷たさが、胸の奥まで落ちていった。
晴明が顔を上げると、道満は腕を組んでこちらを見ていた。
けど、目はさっきよりずっとやわらかかった。
晴明『……ありあと』
道満「礼はあとでいい。ほら、戻れ。風邪ひくぞ」
その声はぶっきらぼうなのに、不思議とあたたかかった。
晴明は小さくうなずいて、また廊下を歩き出した。
背中越しに聞こえる雨音が、すこしだけやさしく聞こえた。
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好き可愛い!やばい!!!!! 続きが待ち遠しいよー!
学晴好きぃぃぃぃぃぃぃぃ(* ˘ ³˘)♡*晴明くんの「ありあと」可愛すぎ🤦♀️