✦『夏祭りで、風間君の浴衣に心臓ぶっとぶ回』
夕方の商店街。
オレンジ色の空がゆっくりと群青へ変わる時間。
かすかべ防衛隊の集合場所には、
すでにねねちゃんとまさおくん、ボーちゃんが到着していた。
「……で、あの二人まだ?」
ねねちゃんが腕を組む。
「なんか準備に時間かかるって……」
まさおくんは苦笑い。
──その意味はすぐにわかった。
「お待たせ〜!」
人混みの向こうから、
威勢よく手を振って走ってくるしんちゃん。
いつも通りのしんちゃん。
ただ、その後ろに——
「……こ、これで変じゃないかな……」
浴衣姿の風間君。
紺色の浴衣に白い帯。
整えた前髪。
うなじがいつもより見えてる。
ちょっと落ち着かない仕草。
しんちゃんは、風間君のそばを離れない。
(なんだコレ……
いつもより100000倍かっこいいんだゾ……)
心臓が、跳ねた。
「ちょっ……し、しんのすけ君、離れ……!」
「いや〜離れられないゾ〜。今日の風間君イケメンすぎるから〜」
「や、やめろ……!!
ここ、防衛隊いるから……!」
ねねちゃんはため息をつく。
「付き合ってるの隠す気ゼロでしょ、あんた達。」
まさおくんは目を潤ませている。
「風間君……超似合う……!」
ボーちゃんは無表情で一言。
「……ほぼ……王子。」
風間君は真っ赤。
「言わないで……!!」
しんちゃんはというと、
その赤さを見つめながらニヤァ……。
(風間君、かわいすぎじゃない?
もう今日帰りたくないゾ……)
✦ 屋台をめぐるふたり
ヨーヨー釣り。
かき氷。
金魚すくい。
人混みの中、
自然に手が触れる。
「あっ」
風間君が一度目を見開いて、
次の瞬間そっと指を絡めてくる。
(やばい……今日の風間君……
全部かっこいい……)
しんちゃんの心臓が爆発しそう。
まさおくんが後ろでボソッと呟く。
「わぁ……これはもう……
放っておくとキスしちゃうやつじゃん……」
ねねちゃんがツッコむ。
「ここでそんなことさせるか!」
✦ 浴衣の帯トラブル
射的コーナーの前。
風間君の帯が緩みそうになり、
風間君が焦る。
「えっ……待って……やだ……ほどけ……」
しんちゃんがとっさに後ろへ回る。
「風間君、動かないで。」
「な……なんで君が直すの……!」
「オレが結んだ方が絶対しっかりするゾ。」
風間君の背中にしんちゃんの手が触れた瞬間。
(やべ……近……っ)
風間君の顔は真っ赤。
夏の夜より熱い。
ねねちゃんは耐えきれず叫ぶ。
「もう!!!
完全にデートじゃんそれ!!」
まさおくんは両手で口を覆う。
ボーちゃんもつぶやく。
「……いま……告白レベルの距離。」
風間君は帯を直されながら震えた声で言う。
「……こ、こんなところで……!」
「風間君の浴衣がほどける方が問題だゾ?」
しんちゃんが笑う。
(も……無理……好きすぎる……)
✦ 花火の下、完全に恋人
夜空に大きく花火が上がる。
ドーン、と鳴るたびに、
風間君の肩が少し揺れる。
しんちゃんは自然と、
その肩にそっと手を回した。
「風間君。」
「……ん。」
「今日の浴衣……
今までで一番好きだゾ。」
「……っ……!?」
風間君の耳が真っ赤に染まる。
「す、好きって……
そんな真顔で言うな……!」
「本当のことだもん。」
風間君は唇を噛んで、
しんちゃんに寄りかかった。
「……もう……ほんと……
君にだけは敵わない……」
しんちゃんはふわっと微笑んで、
風間君の手をぎゅっと握る。
(この夏祭り、ずっと終わらなきゃいいのに。)
花火の光がふたりの影を寄り添わせた。
その姿を、幼馴染たちは後ろからそっと見守る。
「……なんかもう、守られる必要ないよね。」
ねねちゃんが笑う。
「むしろ……
守るのは……風間君の方だね。」
ボーちゃんも頷く。
まさおくんは涙ぐんでいた。
「良かった……!二人が幸せで……!」
夏の夜は熱くて、
胸がいっぱいで、
忘れられない思い出になった。
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