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【原作主人公の視点】> 『監獄のデザイア』第一章終盤。
監獄学校『ディスペア』に転入してきた正義感あふれる主人公・アーサー。
彼は転入早々、校内に蔓延する異様な気配と、裏で蠢く暗黒の支配者【ルシアン】の存在を察知。
全ての黒幕を打倒し、この歪んだ監獄学校を解放するため、密かに単独捜査を開始する……はずであった。
【実際のアーサー視点】
「……くそっ! なんだこの不気味な違和感は……!?」
監獄学校『ディスペア』の高等部校舎。
廊下の物陰に身を潜めながら、俺――アーサーは額の冷や汗を拭った。
この学校は何かが狂っている。
俺が転入してきた目的は、この絶望に満ちた監獄学校を支配する悪を挫き、虐げられた生徒たちを救い出すことだ。
転入初日、俺の類まれなる【直感(センス)】が警鐘を鳴らした。
この学校の最奥、触れてはならない地下深くに、**世界を滅ぼし得る【絶対的な悪(ルシアン)】**が目覚めたのだと。
(あのお方はついに動き出した……! この学校の全インフラと権力機構を、一瞬で裏から掌握したんだ!)
俺の推測を裏付ける『恐怖の現象』は、すでに校内で次々と起きていた。
まず、あの暴力と恐怖で全生徒の頂点に君臨していた生徒会長レオンハルト。
あの男が、ある日突然**「私は……私はただの無力な虫ケラです……」**と虚ろな目で呟きながら、学園のルールを全面改正したのだ。
さらに、学校中の過酷な雑務が、一夜にして謎の魔導兵器によって「自動化」された。
表面上は生徒たちの負担が減ったように見えるが、違う。騙されるものか!
(奴の狙いは……生徒たちから『反逆の意思』と『生存本能』を削ぎ落とし、ぬるま湯の平穏で骨抜きにすること……! なんという恐ろしく洗練された精神的支配術だ……!!)
俺は拳を強く握りしめた。
そして今日、俺はついに【黒幕の暗躍現場】の特定に成功したのだ。
(中庭の木陰……! あんな目立つ場所を暗躍の拠点にするとは、俺たちへの挑発か……!?)
俺は呼吸を殺し、植え込みの隙間から中庭の様子を覗き込んだ。
「ッ……!! あれが……あの男が【隠しラストボス】ルシアン・ヴァルハイト……!!」
一見すると、どこにでもいそうな優しげな黒髪の少年。
だが、騙されはしない。彼の周囲を取り巻く大気が、重力すら歪むほどの圧倒的な殺気と魔力を孕んでいるのを俺の【直感】は感じ取っていた。
(な、なんだあの禍々しいオーラは……!? 触れただけで魂が削られるような圧を感じる……!!)
そして、ルシアンの目の前に置かれたテーブル。
そこには、怪しく湯気を立てる黒い液体(※最高級のアッサムティー)と、謎の魔導符術が刻まれたとおぼしき茶色の小塊(※最高級のクッキー)。
(ま、まさかあれは……人間の精神を汚染し、完全な奴隷へと変える『禁忌の呪物』か……!?)
さらにその向かいには、犠牲者と思われる可憐なモブ少女――アイリスが座っていた。
(しまっ……! もう洗脳の儀式が始まっているのか!? あの哀れな少女は、自分が何を食べさせられているのかも分からず、うっとりと笑わされている……!!)
「クソッ……助けなきゃ……! でも、今飛び出せば俺ごと消される……!」
俺が葛藤で歯を食いしばっていた、その時だった。
ルシアンが、怪しい笑顔を浮かべながら手に持ったクッキーをアイリスの口元へと運んだ。
**『アイリスちゃん、あーん♪』**
(なッ……!?)
俺の脳内に、衝撃が走った。
(『あーん』……!? 違う! あれは古代語の呪文だ! **【ア・ーン】**の音階によって相手の精神障壁を破壊し、不可逆の精神隷属契約を結ぶ悪魔の契り……!!)
アイリスは言われるがまま、無防備にそのクッキーを一口かじった。
「わぁ、とっても美味しいですルシアンくん……♪」
**「……終わった……」**
俺は絶望のあまり、膝から崩れ落ちそうになった。
手遅れだ。あの可憐な少女は今、完全なる『悪の傀儡(ラブスレイブ)』へと成り果ててしまったのだ。
(なんて恐ろしい男だ……! 暴力でも脅迫でもなく、『とびきりの甘味と笑顔』で人を精神から支配していく……! これが……これが監獄の真の支配者、ルシアンのやり方なのか……!!)
ルシアンはこちらの視線に気づいたのか、ふっと俺の方へ顔を向け、眩しいほどの爽やかな笑顔を向けてきた。
(くッ……!? 『次はお前の番だ』と目線で脅迫してきただと……!?)
「待ってろよルシアン……! 今は……今の俺では勝てない! だが絶対に、お前が築こうとしている『ピンク色のディストピア』から、この学校を救ってみせる……!!」
俺は血が滲むほど唇を噛み締めながら、暗闇の中へと静かに撤退していった。
(ん? なんか遠くの植え込みから、すごく真剣な目でこっちを見てる男の子がいるな……)
「アイリスちゃん、あそこにお友達かな? 一緒にクッキー食べるか聞いてこようか?」
「え? ううん、誰もいないみたいだけど……? それよりルシアンくん、あーんってしてくれたの、ちょっと恥ずかしかったよ……///」
「ご、ごめん! つい可愛くて……!///」
(うおおお照れてるアイリスちゃん超絶可愛い!! 原作主人公(アーサー)のことなんて一瞬でどうでもよくなったわ!!)
ルル
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コメント
1件
あらためて読んだよ、この第3話!アーサーの過剰な解釈が面白すぎて笑っちゃった(笑)「あーん」が古代語の呪文って…正義感強すぎる主人公の思い込みが可愛いし、ルシアンがただの甘やかし男子ってギャップが最高だよ。最後のルシアン視点で「アイリスちゃん可愛い!」って思考になった瞬間、もう好きすぎる。監獄学校なのにクッキーで人心掌握しようとしてるの、めっちゃツボです🤍続きが気になるけど、このままのテンションでいてほしいな〜