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【原作の展開】> 『監獄のデザイア』第二章『新緑の粛清(しゅくせい)祭』。
監獄学校『ディスペア』の伝統行事である全校対抗・野外生存演習(別名:サバイバル収奪戦)。
原作では、過酷な森の中に放り出された生徒たちが食料やポイントを奪い合い、殺伐とした死闘を繰り広げる。
裏で目覚めた暗黒の支配者ルシアンは、魔獣を暴走させて全校生徒を絶望の淵に叩き落とし、勇者アーサーたちを全滅させようと画策する惨劇の章であった――。
【ルシアン視点の実際】
「……なるほど。『新緑のピクニック感謝祭』か!」
俺――ルシアン・ヴァルハイトは、校内の掲示板に貼られた羊皮紙を見上げ、満面の笑みを浮かべた。
前世の記憶が蘇ってからというもの、この学校はマジで最高だ。
魔導ルルンバ(ルンバ的なやつ)のおかげでアイリスちゃんの雑務は激減したし、毎日放課後においしいお茶とクッキーを楽しめている。
そして今日発表された学校行事。
広大な森を解放して行われる全校イベントだ。
(『サバイバル収奪戦』って書いてあるけど……要するに『学校主催の野外ピクニックレクリエーション』ってことでしょ? 監獄学校なのに親睦会まで用意してくれるなんて、なんてホワイトな学校なんだ!)
俺の脳内お花畑フィルターは、物騒な漢字の並びをすべて爽やかな青春イベントへと自動変換していた。
「アイリスちゃん! 今週末の行事、一緒に回ろうよ!」
「え……? でも私、特例で裏方の食材運搬係になっちゃって……」
「大丈夫! 俺が運搬を手伝うよ! ついでに森の奥の綺麗なシークレットスポットで、手作りお弁当食べよう!」
「手作りお弁当……! うん、私、頑張ってルシアンくんの分も作ってくるね!」
(勝った。俺の青春ラブコメ、完全に始まったわ)
俺が脳内でウエディングベルを鳴らしまくっていると、横から青ざめた顔のミーナちゃんが突っ込んできた。
「アイリス正気!? あれ『収奪戦』だよ!? 生徒同士で食料とポイントを奪い合う殺し合いのイベントだよ!? なんで『ピクニック行こう♪』みたいなノリになってんの!?」
「ミーナちゃん、大丈夫だよ。ルシアンくんが荷物持ってくれるって言ってるし!」
「荷物の問題じゃないのよ!! ルシアン、あなた絶対何か企んでるでしょ!? 去年は死傷者が出た行事なのよ!?」
「えっ、去年は食中毒でも出たの? 野菜はしっかり洗わなきゃだね」
「会話が噛み合わなさすぎて頭痛くなってきた……!!」
ミーナちゃんは頭を抱えて走り去っていった。
相変わらず賑やかな子だなあ。
【原作の展開との対比(シェイド&ジローの解釈)】
一方その頃、地下の隠れ家。
「シェイドの旦那……ほんまにこれでええんか……?」
関西弁の情報屋ジローは、額から冷や汗を流しながらシェイドに書類を手渡していた。
そこには、ルシアンから命じられた『演習用の事前準備リスト』が記されていた。
* **【命令1】演習エリア内の凶暴な魔獣を全頭、大人しい小動物に差し替えよ。**
* **【命令2】他生徒がアイリスのいるエリアに侵入しないよう、広大な結界を張り巡らせよ。**
* **【命令3】森の一番景色が良い高台に、最高級のレジャーシートと日傘を設置せよ。**
「……フフフ、見事だジロー」
シェイドは冷酷な笑みを浮かべ、書類を愛おしそうになぞった。
「ボスは『収奪戦』という極限状態を利用し、学校中の魔獣兵器を全滅させ、結界によって生徒たちの動きを完全に封殺するおつもりだ。そして高台に陣取り、混乱する学校を上から高みの見物で支配する……! なんという悪魔的かつ完璧な計画……!」
**(『ちゃうわ!!!!』)**
ジローは心の中で声が枯れるほど叫んだ。
**(ただの『アイリスちゃんと二人きりでピクニックしたいから、邪魔なモンスターと他の生徒をシャットアウトしろ』っていう職権乱用やろがい!! なんで誰もこの男の恋煩いを止めへんねん!! 胃に穴空くわ!!)**
「……ジロー、至急『最高のピクニックセット』の手配を頼む。ボスの深謀遠慮を滞らせるな」
「ほ、ほんまに命がけで手配してきますわぁぁ(泣)」
【行事当日:アーサー視点】
「クソッ……! なんだこの異常事態は……!?」
演習開始直後、勇者アーサーは森の中で剣を構え、恐怖に打ち震えていた。
本来なら凶暴なランクA魔獣が襲いかかってくるはずの『死のエリア』。
そこにいたのは――ふわふわした毛並みの、可愛らしいウサギの群れだった。しかも手入れが行き届いている。
「魔獣たちが……一瞬で無力化され、洗脳されている……!? 一体誰がこんな真似を……!?」
その時、森の奥から圧倒的な【絶望のプレッシャー】が漂ってきた。
アーサーが恐る恐る木々をかき分けると、そこには森で最も見晴らしの良い高台があった。
そこだけ重力が違うかのような神聖かつ禍々しい気配。
豪奢なレジャーシートの上で、影の支配者ルシアンが、モブ少女アイリスとお重を広げていた。
「あーん、ルシアンくん。卵焼き、上手にできたかな……?」
「う、美味すぎる……! アイリスちゃん天才……!!」
(ッ……!!)
アーサーの全身に鳥肌が立った。
(間違いない……! 奴は演習のルールをねじ曲げ、学校の全魔獣を一瞬で無力化し、この広大な森を自らの【領域】へと変えたのだ……! そしてあの少女の手料理に見せかけた『古代の禁術食材』を口にすることで、更なる力を蓄えている……!!)
ルシアンがふと高台から見下ろし、アーサーと目が合った。
ルシアンは爽やかに手を振る。
(『貴様らの小競り合いなど、俺のティータイムの余興に過ぎん』……そう言いたいのかルシアン……!!)
ルル
105
502
200
「くそっ……! 今の俺たちでは、奴が張った『絶対不可侵の甘々結界』を突破することすらできない……! 撤退だ……!」
アーサーは悔し涙を流しながら、森の暗闇へと姿を消した。
【ルシアン視点】
「あ、アーサーくんだ。あっちでお弁当食べてるのかな? 青春だねぇ」
「ふふ、本当ですね。ルシアンくん、サンドイッチも食べてね」
「ありがとうアイリスちゃん! あ、見て! 空がすっごくキレイだよ!」
森を渡る心地よい風。アイリスちゃんの作った美味しいお弁当。
遠くで他の生徒たちがなぜか絶叫しながら逃げ回っている気もするが、きっと鬼ごっこでもして盛り上がっているのだろう。
(『監獄のデザイア』の学校行事、めちゃくちゃ楽しいな!)
自分が圧倒的なラスボスパワーで『過酷なサバイバル演習』を『完全なるイチャイチャピクニック』に上書きしたことなど露ほども知らず、俺はアイリスちゃんと最高の週末を過ごすのだった。
コメント
1件
うわあ、これめっちゃ面白かったです! 原作の殺伐展開を「ピクニック感謝祭」と脳内変換するルシアン、最高すぎる……。シェイドが「深謀遠慮」と誤解してるのに、ジローだけ正しく「恋煩いの職権乱用」って気づいてる構図がたまらない。アーサー視点の「甘々結界」も、完全に勇者が悪役視点で誤読してて面白い。設定のズレを笑いに変える構成、見事でした!