ぴこん🎵と舞花からのLINEが届く。
予定より少し早く出産し、女の子だったとの報告だった。
〈おめでとう!これから大変だから、病院にいる間に、しっかり体を休めてね〉
出産祝いは、退院して落ち着いた頃に行くことを付け足す。
《ありがとうございます。めちゃくちゃ痛かったけど、隼人君がずっとついていてくれたので、頑張れました》
〈そう!立ち合いできたのね〉
《これ見てください》
送られてきたのは、出産直後の親子3人のワンショットだった。
満面の笑みの舞花の横で、赤ちゃんと同じくらいのの泣き顔の佐々木がいた。
「うふふ、なんだかんだ言って、ちゃんとお父さんになりそうだな」
どこかおちゃらけた雰囲気だった佐々木は、すっかり父親の顔になっている。
《隼人君は、私が恥ずかしくなるくらい感動して泣いちゃってました》
〈うれしかったんだね!いいお父さんになりそうね〉
この感動をずっと忘れずにいてくれたら、きっといい家族になれるんだろう。
雅史は出産に立ち会ってはくれなかった。
_____新店舗立ち上げとかで立ち会ってくれなかったんだっけ
自分が圭太を出産した時のことを思い出した。
はじめは立ち会うと言ってくれていたのに、いざ予定日が近づくとそっけなくなったっけ。
父親学級にも一回行っただけだったし。
_____そうか、もともとそんな人だったんだ……
泣きじゃくっている佐々木の横の、幸せそうな舞花が羨ましくなった。
どうか、このまま幸せになってほしいと願う。
雅史がおかしな誘いをしても、父親としての立場でスルーしてくれるように。
「こんな写真見てると、そんな心配は取り越し苦労かな?」
「おかーたん、なあに?」
圭太が膝に乗ってきた。
「うわ、重くなったね。あのね、赤ちゃんだよ」
スマホの中の写真をじっと見る圭太。
「赤ちゃんもおじちゃんも泣いてるよ」
「そうだね、これはね、うれしくてたまらないから泣いてるんだよ」
「いたいいたいちがうの?」
「うん、幸せだよっていう意味」
「ふーん」
圭太の頭を撫でる。
_____この子の両親は、雅史と私なんだ
当たり前のことをいまさら認識する。
慰謝料を払わないと言ってきた雅史とのこれからのことは、考えられない。
けれど圭太のことを思うと……
何が正解なのかわからなくなってきた。
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