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きっと。多分。
俺の最期は、独りぼっちなんだろう。
「……星が綺麗だなァ……」
静かな草原、星空はまだ紺色に染まりきってはおらず、ピンク、そして紫などのグラデーションがかかっている夜空。
俺は国には帰らず、手ぶらで草原を歩いていた。
「……ウン、……大丈夫」
自分に言い聞かせるように、そう呟く。
手はかすかに震えを持っているのがわかった。それを誤魔化すようにポケットの中に手を突っ込む。
もう春だと言うのに、夜はまだ寒い。息を吐けばそれは白くにごった空気となり空へと消えていく。
一通。我々国で、手紙を出した。
《拝啓 仲間へ》
直球に、そう書き出された文はものの二、三行で終わっている。
そして、最後の文には
《仲間がいれば、怖くない》
そんな、薄っぺらい言葉を残し、俺は今この草原を歩いている。
あの手紙が届くのは明日だろう。そして、明日には本部に着いているだろう。
そう。本部に。
「……俺なら、できる」
俺は歩く足を早めた。
しばらく歩き、もう空も暗く、月明かりだけが唯一の光となっていた。
俺は大体半分となる、日常国をすぎたあたりの廃墟の瓦礫に座り、休憩をとっていた。この廃墟は確か昔の、ずっと昔の古い学校の跡地だ。もう跡形もなく、小さく残った壁や瓦礫しかない。だがいい休憩場所にはなった。
そんな時だった。
「……何処に行こうとしてるの?緑くん」
ふと、聞き覚えのある、そんな声が背後から聞こえた。
振り向けば、黄色いパーカーにオレンジ色の髪を揺らしたぺいんとさんが立っていた。
「……いつの間に居たノ?」
「通り掛かったんだ。寝れなくてさ……運営国、真反対でしょ。……どこに行こうとしてたの?」
言い訳は許さない。黄色の瞳がそう物語っていた。
「……ぺいんとさんには、関係ない」
「……深くは聞かない。……だけど、前言ったよね。」
『何かあったら、俺を頼ってほしい。…って』
優しい、そんな声色でぺいんとさんはそう言った。
だが、俺はまた、前と同じことを言う。
「……っなんで」
言った、つもりだった。
「…なんで、そんな….」
視界は、段々と歪んで、西陽はキラキラと視界で光っていた。
「…緑くん、ずっと一人で色々と頑張ってたの、実は知ってるんだ。……だから、俺にも手伝わせてほしい。」
この人の声には、なにかの魔法でもかかっているのだろうか。
「……ぺいんとさんを、巻き込みたくない……、死ぬのは俺だけでイイ」
俺の、その言葉に少し驚いたのか、一瞬戸惑うも直ぐに言い返してくる。
「俺にも、手伝わせて。」
真っ直ぐと見つめる黄色い瞳に、緑色が映る。
俺は一言、こう言った。
「……絶対、死なないデネ。……ぺいんとさん」
「……!うん、絶対死なねえよ!」
夏の炎天下、青空を背景に大きく咲く向日葵のように。
ぺいんとさんのその笑顔は、眩しく、希望のある笑顔だった。
そんな希望を、汚してはダメだ。
「……ぺいんとさん」
「……本当に、本当に俺に着いてきて、イイノ?」
「……うん。俺だって、一つの国の補佐だからね。」
________
全てを、話した。
警戒心が一度でも解けてしまえば、驚く程に自分の口からはボロボロと色々な情報が出てきた。ぺいんとさんは静かに相槌を打ちながら、聞いていた。
「……そっ…か……。……そんなことが……」
悔しそうに俯き、手を握りしめた様子から、次には慈悲をかけるような眼差しとなり、此方を見た。
「……緑くんは凄いなぁ。……それで、今から本部に行くんだ?」
「……ウン。リーダーの首取る」
「強いね(笑)」
ぺいんとさんは静かに写真を見つめ、何かをかんがえているようだった。
写真。レウさんの、最期の写真。悲惨な遺体に、何か俺に情けの言葉をかけようとでも思っているのだろうか。
「……そうだね。リーダー、殺そ。」
思っていたのとは違う、そんな返しに少し驚いた。
自分が思っているよりも、ぺいんとさんはそこまでそのような事にショックを受けたりはしない性格なのだろうか。
「……いや、ちょっと待って!やっぱし一旦キレるね。」
それだけ言い、うーんと唸るように頭に思い浮かべているのであろうリーダーを睨みつけている。
嗚呼、やはりこの人はそういう人だ。
「……ハハ、ナニソレ(笑)」
「ちょ、真剣だよこっちは!?」
この人は、このままでいて欲しい。
俺は立ち上がり、また草原を歩き始める。
ぺいんとさんも、急いで立ち上がり隣へと小走りに走ってきた。
明日、俺の命日になろうと、その時、その瞬間は。もしかしたら、孤独では無いのかもしれない。