プルルルルルルッ
「はい、立花です。」
「あ、アーヤ?良かった出てくれて。」
ある金曜日、小塚君から連絡が来た。
「どうしたの?何か事件?」
「実はそうなんだ。今回は美門が見つけた事件らしいんだけど。詳しいことは、明日カフェテリアで話すそうだよ。」
「分かった。…でも翼が事件見つけて来るのって珍しいよね。」
「そうだね。何か美門だからこそ分かることがあったのかも。」
「なるほど。確かにそうかも。」
「じゃあ明日カフェテリアで。」
「うん。」
カフェテリア
「今回の依頼人は美門だ。美門この事件の説明をしろ。」
若武が翼に言う。
「ん。2日前に練習試合で遠征があったんだ。」
翼は塾が運営するサッカーチームに所属しているんだ。サッカーが上手な上に透明感があって男の子なのに天使みたいな容姿に心を奪われる人がたーっくさん。
私とは心の友なんだ。
「そこの会場にいた男から今までに嗅いだことのない匂いがしたんだ。」
嗅いだことのない?…なんか怪しい。
「で、試合まで時間あったし、その男について行ってみたんだ。」
サラッと言ってるけど、尾行したの!?
…でも、KZの全員普通にやりそう。
「分かったことは、その男の名前は山田。年齢は40代から50歳ぐらい。一軒家を持っている。家に他に人はいなさそうだった。これだけ。」
「ご苦労。さ、山田氏は何をしていると思う?」
若武が私たちを見る。
「なんとも言えないね。嗅いだ事のない…。何かを混ぜているのかも…。でもそれだけで物質の根本的な匂いは消えるのかな?うーん。」
小塚君が唸る。相当悩んでいるのかも…。
「もしかして、俺の担当か!」
忍が嬉しそうに笑う。
でも多分、忍の担当じゃないかな…。
「もしかしたら、この国のものじゃないのかもな。」
椅子に寄りかかりながら言う上杉君。
「そうだね。俺も上杉には賛成。日本の物という概念から離れた方がいいかもしれない。」
黒木君も同じ意見。なるほど。
「俺と小塚と美門は匂いの解明だ。」
「黒木と七鬼は山田氏の友好関係から工場を持っていそうな人物を探し出せ。」
「アーヤと上杉は山田氏の住居周辺を調べろ。」
了解。
いつも通りの会議も滞りなく進んだ。
今回の事件は翼が今までに嗅いだことのない匂いを見つけたってことから始まったけど…。
山田氏は何を隠しているんだろう。
あ!授業が始まっちゃう…!急いでノートを片付けなくちゃ。
「立花、若武に聞いたら明日は収集しないってことだから、調査明日でいいか?」
上杉君だ。えーっと、明日は土曜日だから…
「うん、大丈夫だよ。」
「じゃあ、10時駅前集合な。忘れんなよ。」
「うん!」
もちろん!
ーーーーーーーー
土曜日 10時前
うーん、上杉君どこだろ…
「立花こっち」
!!
「上杉君」
「黒木によると山田氏は外出中だ。急ぐぞ」
「分かった」
山田氏の家付近
「ここだな」
!着いた。
「早く調べるぞ」
分かった!
「…見た感じ違法な植物は栽培してないな」
私はそれをメモしながら、簡単な地図をかいていく。
確かに見た感じ怪しくはないけど…。
…ん?何この匂い…。
後ろから?
ぎゃ!人!?
振り返るとそこには男性が、この人が山田氏?
「君、ここら辺の子?」
ビクッ
もしかして怪しまれてる!?
って、上杉君どこ行ったの?!
「いや、ちょっと近くまで来ただけです。」
「そっか、珍しいね。」
「そ、そうですか?」
「うん、ここら辺は人が来ないんだよ。」
…だから、ここに住んでるのかも。
「ねぇ、君は新しい物に興味があるかい?」
?…新しい物って、もしかして…。
この人すっごく怪しいし、怖い!
「…新しいってどんな物ですか?」
私は恐る恐る聞く。
怖いけど、決定的な証拠があるかも…。
「興味があるって事だね。見せてあげるよ。」
上杉君っ!早く来てー!
「これだ。匂いを嗅いでごらん。」
…?匂いって…嗅いだらどうなるんだろう。
「そんなに警戒しないで。」
ズイッとその液体のようなものを近づけてくる。
すると、急に嗅いだことのないような匂いがした。
うっ、何これ。
「…何か起きるんですか?」
しばらくしたらわかるさ、そう言い山田氏は家の方向への去っていった。
…?特に何も起きないけど?
「…なんだったの?」
「…何してるんだ?」
あっ上杉君!!
「それはこっちのセリフだよ。急にいなくなるからびっくりしたよ。」
「お前がいなくなったんだ。」
はぁ〜こっちは山田氏に話しかけられて大変だったんだから!
「は?山田氏に会ったのか?」
上杉君が変な顔して言う。
「え、今の声に出てた?」
「何言ってんだ。」
おかしい…。私声に出してないはずなのに。
「おい、全部言ってるぞ?」
「…え?」
なんで?
あっ
「山田氏のせいだ。」
「…どう言うことだよ。」
「さっき山田氏に会った時に液体の匂いを嗅がされたんだ。」
「…は?…お前なに油断してるんだ。」
そこ?
「それでこうなった。」
「…はぁ、それを嗅いだことにより心の声が丸聞こえってか?…そんな馬鹿なことあってたまるかよ。」
「あってるじゃない。今。」
「やべぇ、アイツらになんて言おう…。」
だから何でそんなところが気になるの?さっきから変なこと気にするよね。まあ、上杉君だし。
「お前心読まれてること忘れてるだろ…。」
あっ
「とりあえず帰ろう。」
「その状態で?」
「んー。どうしよう。」
すると上杉君は電話をかけ始めた。
「ああ、よろしく。」
そしてまた電話。
「じゃ。」
あ、終わった。
「よし…七鬼ん家行くぞ。」
はい?
「黒木が許可取ってくれるから行くぞ。」
「…何で?」
「…?そんままじゃ家に帰れないだろ?」
「…そうだけど」
なんかお世話してもらってばっかりな気がするな。
「なに言ってるんだよ。俺がお前といればこんな事にならなかった。責任ぐらい感じてる。ごめん。」
上杉君!
「うん、ありがと。」
上杉君はかっこいいな。自分の落ち度を認められて。
「私も悪かったから、ごめん。」
「お前、心の声がダダ漏れだぞ…。」
「?」
“上杉君はかっこいいな”
「あっ!」
「…不可抗力だからな。」
「…うん。」
「おう!やっと来たか〜遅かったな!」
忍が笑顔で迎えてくれる。
「ああ。」
「突然ごめんね。忍。」
「別にいいぜ。俺も楽しいし。」
「ありがとう。」
「…で、心の声が聞こえるって本当か?」
「うん、そうなの。」
「家に帰るとヤバいからな。避難だ。」
「うん。オッケー。じゃあアーヤの部屋はここね。」
「ありがとう。」
「で、上杉はここ。」
「…俺も泊まるのか?」
「そうじゃないの?疲れてるでしょ?上杉がいいなら泊まって行きなよ。」
「んじゃ、お言葉に甘えて。」
夕食
「あれ?上杉君は?」
用意された料理を見ながら、忍に聞く。
「あー上杉なら電話中だ。暫く終わらないんだと。」
「へぇ。大変だね。」
うーん、若武たちかな?
「ああ、本当にきこえる〜」
「あっ」
んー、どーしよ。
「あはは。凄いすごい!」
「ちょっと!楽しまないで!」
「だって、面白いんだよ〜。」
「もう!」
忍ったら、こういう時もおきらくよね。
「ふむふむ。」
「…隠し事のひとつもできないね。」
「立花は元から顔に出やすいよ?」
「…そんなことないから」
ガチャ
「自覚なかったのか?」
うっ上杉君まで!
「お、電話終わったんだ。」
何もなかったかのように話し始める忍。
私は納得してないんだから、もう。
「あ、不貞腐れてる。」
「すねてる。」
「っっもう!」
私は部屋に戻ろうと席を立つ。
「あ、部屋戻んの?」
「おやすみ〜」
さっきから何もなかったかのように普通に話すよね。2人とも。
「ん、おやすみ。」
このぐらいの方が私にはちょうどいいのかなぁ。
明日は治ってるといいな。
コメント
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おもしろーい、どうやって安打したか気になりますう