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「どうしても駄目?」
「ダメに決まってるだろう? と言うかそんなのウケると思えないんだけど。僕と草薙君がやるより、ナギと東海がやった方が良くないか?」
上目遣いで見つめてくるナギの頭を撫でながらそう言えば、なんで俺が……。と不満そうに唇を尖らせて文句を言う。
いやいや、その言葉そっくりそのまま返してやりたい。
「ナギ君はともかく、はるみんは顔出しNGだもん。だから駄目なの」
「いや、僕だってOKした覚えは……」
「ナギ君の配信で顏出ちゃってるでしょう?」
美月の言葉に返す言葉が無くなってしまう。アレはたまたま生配信中の事故だったわけで、けして好きで顔出ししたわけでは無い。
「おはようございます。みんなで集まって何の話してるんですか?」
「おはよう。草薙君。キミのお姉さんから女装対決しろと言われて困っているんだ」
タイミング良くやって来た弓弦に渡りに船とばかりに事情を説明すると、彼は眉間に深いシワを寄せた。
「……まだ言ってたんですか。懲りませんね」
「……まったくだ」
はぁ……と二人揃ってため息を吐く。
「だってぇ、視聴者からやって欲しい企画を募集してたんだけど、やって欲しいって意見が結構多かったのよ。二人とも美形だし、絶対映えると思うのよねぇ」
「物好きだね。女装なんて似合わないでしょ」
「私もそう思います」
弓弦がきっぱりと頷き、蓮は思わず胸を撫で下ろした。
「えぇ〜、じゃあアタシの企画ボツぅ?」
美月がわざとらしく肩を落としてみせる。
「そう言うことだな」
「残念ながら」
蓮と弓弦の冷静な返答に、美月は頬をぷくっと膨らませた。
「ボクは二人の女装姿見てみたいな」
「でしょ? ゆきりんわかってる~!」
「ちょっっ! 棗さん!? 何言ってるんですかっ!」
「そうだぞ、雪之丞! 僕らは男なんだから女装しても気持ち悪いだけだろ?」
慌てる弓弦を援護するようにそう言うと、「美月さんが男装してもいいとは思うけど、視聴者が二人の女装を見たいって言ってるんだよね? 視聴者の期待に応えるのって大事じゃない?」と、あっさり論破されてしまった。
それを言われると、辛いものがある。
正確には、失敗と言うより放送事故に近いのだが……。
「ゆきりんもああいってる事だし、ね? 二人とも、お願い」
ナギと美月に手を合わされ、更に雪之丞からも見つめられ、先に折れたのは弓弦だった。
「――仕方ないですね。でも、放送事故になっても私たちは責任取りませんよ」
「って! 草薙君!? どうして僕までやる前提なんだ」
「対決でしょう? こうなったら一蓮托生。貴方も覚悟を決めてください」
「いやいや、決められるわけ無いだろ!」
「ほう? 蓮が女装するのか……面白そうだな」
騒ぎを聞きつけた兄まで便乗してきて、コレはいよいよ後には引けなくなった。
そもそも! 兄がナギにあんな事をせず、普通のリアクションをしてくれていたらこんな事にはならなかったのに!!
……まぁ、今更嘆いても遅いので、腹を括る事にする。
「あーもう!! わかったよ!! やればいいんだろっ! やればっ!! どうなっても知らないからねっ!!」
半ばヤケクソになりながら叫ぶと、ナギと美月はハイタッチを交わして喜んでいた。
「おおーっ! ついにOK出ました! やったね美月さん!」
銀次がどこから取り出したのか、小型マイクを片手に実況者モードで盛り上げる。
「視聴者の皆さーん! 奇跡の瞬間ですよ! あの御堂蓮と草薙弓弦の女装対決、乞うご期待っ!」
「やめろっ! 勝手に配信開始みたいに煽るな!」
「……マジで地獄だな」
東海が呆れ半分、楽しそうに肩を揺らす。
「ふっ……弟の恥じらう姿が見られるとはな。悪くない」
凛が口元を歪めてククッと笑うと、蓮のこめかみにピキリと青筋が浮かんだ。
「――兄さん、絶対楽しんでるでしょ」
「当然だ」
「~~っ、ほんっと勘弁してよっ!」