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「……ねむ」
ソファに沈みながら、舜太がぼそっと呟く。
「寝れば」
「いや、ここで寝たらじゅう帰るやろ」
「帰るけど」
「やだ」
即答だった。
思わず目を向ける
「なんで」
「なんでって……」
少しだけ言葉を詰まらせて、視線を逸らす
「……今日家一人んなん、ちょっと嫌やし」
(無自覚すぎ)
「帰らんでほしい」
ぽつりと落とされた言葉に思考が止まる
「……わがままだね」
小さく呟く
でも、声は否定になっていなかった
「じゅうならええやん」
軽く笑う
何も考えていない顔
「……近い」
「え?」
「距離」
自分から言っておいて少しだけおかしくなる
でも、もう遅い
最初から詰めてた
「そう?」
「うん」
戸惑ったように笑う舜太
でも、やっぱり避けない
ソファの上
逃げ場なんて、ほとんどない距離。
(ここ、舜太の家なのに)
(なんでこんな簡単に閉じ込められるんだろ)
手を伸ばす
肩に触れる
びくっと震える
「柔、ちょっ——」
📱ブッ
ポケットの中で、スマホが震える
「なんか鳴っとるで」
「いい」
短く返す
でも、舜太の意識は少しだけそっちに引っ張られてる
(集中しろよ)
顎に手をかけて、無理やりこっちを向かせる。
「……こっち見て」
「え、じゅ、じゅう待って」
📱ブッ 📱ブッ
何度も鳴る
しつこい。
(……誰かなんて、分かってる)
「出んくてええの?」
「いいって言ってる」
少し強く言うと舜太は黙る
でも、完全には抗えない
視線が揺れる
音に引っ張られる
(……うるさい)
「舜太」
「ん……」
名前を呼ぶと反射的に返事をする。
そのまま押し倒すみたいに距離を詰める
ソファに沈む体を 自分の腕で囲う
完全に逃げ場を潰す
「ちょ、柔、」
「動くな」
低く言うと固まった。
抵抗はしない。
(ここ、お前の家なのに)
(なんでそんな顔してんの)
困ってるくせに
戸惑ってるくせに
でも、拒まない
「なんで」
思わず漏れる。
「なんで拒まないの」
「……わからん」
正直な答え
「でも」
少しだけ息を詰めて。
「じゅう、やし」
それだけで全部崩れた。
(ああ)
「……そっ、か」
笑いそうになるのを堪える。
(それでいいんだ)
📱ブッ
また鳴る。
(……仁人)
逆に冷める
(タイミング、悪すぎ)
でも、止まる理由にはならない
むしろ
(今、止められたくない)
「なあ」
顔を覗き込む
逃げ場のない距離。
「俺のこと、嫌?」
「……嫌じゃない」
「じゃあ」
少しだけ間を詰める
「いいでしょ」
「……っ、じゅう、」
📱ブッ
最後の抵抗みたいにスマホがまた震える。
でももう遅い
舜太の意識は完全にこっちに引きずられてる。
もう、戻れない
「ちゃんと見て」
囁く。
そのまま、唇が触れる寸前で——
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