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月凪

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月凪

1 - 月をみていた

♥

4

2026年02月07日

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2025年8月1日

彼女との初デートは水族館だった。

海のある港町の端にひっそりと佇み、

バスは1日5本しか通らない、知名度もなく、

人気な魚たちも特にいない、

ただの田舎の小さな水族館。


僕たちは朝の10時30分に待ち合わせを決めた。

僕は家を出て、バスを待つ。

バスに乗るとあいにく彼女はいなかった。

寝坊でもしたのか、

親の車での送迎なのか、

そんなことを考えながら

水滴のついた窓から、

新緑の木々とその向こうの海を眺めていた。

今日はあいにく、雨だった。


10時25分

15分間という時間を経てバスは水族館へと到着した。雨が降っているため、バス停ではなく、屋根のついた玄関に停車してくれた。

僕は中へ入り、2人分の受付を済ます。

彼女はまだ来なかった。

「ごめん!少し遅れそう、、、」

「もう受付したから、大丈夫だよ」

受付近くの申し訳程度のたった一つの白い椅子に腰掛け、メッセージに返信する。


10時32分

「あ!おはよう!」

僕が手洗いに行ってる間に彼女は来たらしく、あの椅子へ座っていた。

嬉しそうに手を振る彼女は濡れていた。

「このタオル嫌じゃなければ使って。」

僕はまだ未使用のミニタオルを彼女に手渡す。

雨で濡れたと思われる彼女は相続以上に濡れており、車で来たんだよな、なんで?

僕は不思議がって彼女を見つめる。

「ありがとう!あ、入場料払うね! 」

そう言って彼女は服についた水滴を拭った。

「いや、気にしないで!入場料も大丈夫だよ!

 じゃあ、行こう。」

僕はそう言って、人気のない水族館の奥へと進んだ。


「ねえ凪!こんな良い水族館教えてくれてありがとう!ついてきてくれてありがとう!」

フグのいる水槽を見ながら彼女は言う。






彼女は転校生だった。

今年の7月頭にイギリスからやってきた、日英のハーフだそう。

名前は高坂るなと言った。

たった16歳なのに、1人で親戚のいる家に越してきたらしい。

長い栗毛の髪のくっきりとした目をした背の高い彼女は、 田舎の港町の高校では浮いていた。

浮いていたと言っても、それは彼女が美しいからだった。

その日は嫌と言うほどに暑く、いつもより一層窓の外から見える海が輝かしく見えた。


一学年50人ほどのこの学校では注目の的であり、

そんな彼女の周りには、たくさんの人が集まった。

しかし、ある日を境に彼女の周りには人が絶えた。


『あの山田君から告られたらしいよ、高坂さん。』

『えまじで?それって藤森さんとか大丈夫なの?』


その日は、朝から周りの女子たちがざわざわと彼女を見ながら話をしていた。


山田君とは一年生で1番顔が良く、明るく、性格も良いで知られるが故、とてもモテた男だった。


その山田に対し、藤森はいわゆる一軍と呼ばれるクラスを取り巻く存在の女子であった。


地味で友達の少ない僕にはよく掃除の当番を押し付けてきたことがあったので、あまり好きではなかった。

藤森は山田に好意を寄せている、そんな話は風の噂で聞いたことがあった。


ガラガラガラ


大きく雑に扉を引き、藤森が登校してきた。


すると藤森は高坂るなの机の前に立ち、

「なんて答えたの。」

と険しい顔をしながら問いかける。

周りの様子など全く気にする様子もない高坂は

英語が書いてある厚い本を読みながら、

「ごめんなさい。と断った」

と言った。

「調子乗ってんじゃねえよ!山田は、山田はまたあんたに告るとか言ってんだよ!」

と大声で高坂の机を叩く。その声は教室中を無音にさせた。

すると本にしおりを挟みゆっくりと閉じた高坂は、

落ち着いた口調で言った。


「だからなんだと言うの?申し訳ないけれど、私には何もしてあげれれない」


低く、透き通る彼女の言葉は、声はどこかぎこちなく、日本慣れしていない。

冷たい。

でも決して嘘ではない真のある言葉。

そう思った。


ああ、かっこいい。

率直にそう思った。

藤森達に何か雑用を押し付けられてと何も言えず、立ち向かえない僕とは違う。


僕は彼女を、彼女の目に見惚れていた。


その後、すぐに先生がきて、彼女たちは椅子に座り、朝のホームルームが始まった。







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