Episode 8『ふたりきりの夜、こぼれる言葉』
翌朝。
学園の空は快晴で、まるで昨夜の雨が嘘だったかのように澄んでいた。
でも、アメリカと日帝の間に流れる空気は――どこか、柔らかくなっていた。
「おはよう、日帝ちゃん」
「……おはよう、アメリカ」
朝の教室。
ふたりが交わす挨拶は、いつも通りのようで、少し違う。
距離が近い。
目を合わせたまま、なかなか逸らさない。
周囲の視線なんて、今は気にならなかった。
放課後。
ふたりは屋上にいた。
空には夕日が沈みかけ、影が伸びている。
「……なあ、日帝ちゃん」
アメリカがふと、日帝の肩に手を置いた。
その手は大きくて、日帝を包むように優しい。
「昨日のこと……ありがとう。話してくれて」
「……俺の方こそ、聞いてくれてありがとう」
小さな沈黙が訪れた。
風が吹く。日帝のフードが揺れ、アメリカの頭のサングラスが微かに光った。
「なあ、アメリカ」
「ん?」
日帝はふいに、アメリカの方へ身体を向けた。
朱色の目が、まっすぐにアメリカを見ている。
「俺、お前と一緒にいると……楽になる。
怖い気持ちも、悲しいことも、少しずつ溶けてく。
……だから、これからも……一緒にいていいか?」
その言葉は、かすかに震えていた。
けれど、まっすぐで――嘘のない“想い”だった。
アメリカは一瞬、息をのんだ。
そして、優しく笑う。
「もちろんだよ。
日帝ちゃんが“いていい”って思ってくれるなら、俺は――」
言葉の途中で、アメリカはそっと日帝の頬に手を添えた。
「――ずっと、そばにいる」
そして、唇を重ねた。
静かで、温かいキスだった。
日帝は驚いた顔をしながらも、拒まない。
目を閉じ、そっと唇を預ける。
ふたりの間に、夕日の光が差し込んだ。
そのキスは、過去を癒すように、
未来を誓うように――優しく、長く、続いた。
次回:
Episode 9『君の秘密に触れた夜』
夜、日帝がふと見せた“本当の姿”。
アメリカだけが知るその秘密に、物語は静かに動き出す。
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