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互いに合図し再び戦闘が始まる。吹き飛ばされたハナカはその場から動かずビットを展開しカナを再度包囲しようとする。対するカナはハンドガンを装備したことでさらに機動力が確保されこちらも同じように近づきインファイトを仕掛ける。
「ここまであなたは辿り付けない!」
「この程度のビットでわたしが止まると思うなよ!?」
ビル群を利用して近づくわけでもなくただ真っすぐに彼女は走り銃を構える。遮蔽物がないためビットによる攻撃は逃れられないが臆せず彼女は進む。そんな彼女に容赦なくハナカのビットが牙を剥く。前方に二機のビットが現れカナの脚部を狙いビームが放たれる。咄嗟に彼女は飛びそのビームを避けたがそれが罠であり、飛び上がったカナの背後にさらに二機のビットが待機しており彼女のブースターを破壊するためその部位を重点的に狙う。
「その装備はピーキーゆえに装備としての耐久性もあまり高くなく、ビットでも数発当たれば簡単に壊れてしまうものです!それが壊れてしまえばあなたはもうビットを避けることもハナカちゃんに近づくこともできなくなります!」
「そんな欠点持ちなの知っててこっちは採用してるんだよ!だから狙ってくるのも予想が付いてるってわけ!」
その言葉の後彼女はノールックで背後に回っていたビット二機をハンドガンで撃墜し勢い殺さずハナカに向かっていく。
「ちょっ!?流石にこれは予想できないって!!?」
(嘘……。私の先読みですらそんなこと予想できない!?だってそんな常識外れの対処してくるなんて誰も思わないもん!?このままだとまたハナカちゃんが飛ばされちゃう……。落ち着いて考えて私、次の彼女の攻撃を…対処の仕方を……。)
「……ハナカちゃん!近くのビルを倒壊させて!できれば下の方を壊して派手に!」
「了解!任せてスズカ!」
スズカの指示の通りハナカは近くのビルをビットで破壊し倒壊が始まる。そのビルはちょうどハナカとカナの間に建つビルで猪突猛進が如く真っすぐ向かい来るカナはジャストでその倒壊するビルに巻き込まれる形となる。
「こんなビルごときで私が止まるとでも!?」
「でも、避けるなり壊すなりしないとあなたは大きなダメージを受けることになる!」
(確かにどうにかしないと私はそのまま潰されておしまいだけど、このビルをどうにかする方法を持ち得てるかと言われればぶちゃけ持ち得てない。なんせ私の武器構成は実弾のサブマシンガンとハンドガン。直剣とライトシールドとお守りのグレと余った枠に適当に入れたマインというあきらかな軽装。だから今私がとるべき行動は一度下がってビルの倒壊から逃れること、もしくはこのまま突き進んで玉砕覚悟で相手を打ちのめすかの二択。安定は下がることだけどその下がる行動読みで後ろにすでにビットが置いてある可能性はゼロではない。なんならそれを誘っているだろうから、ここは多少のリスクを負ってでも前に進むべき……。いや待てよ?先読みの力があるならむしろこの猪突猛進が狙いの可能性がある。もちろん後ろに下がっても保険としてビットは待機してるだろう。私が前進してくるのが本命ならこの先で以前見たビット数機を集めて一つの太いビームにする方法を使ってくるだろう。下がってもアウト進んでもアウト。この場に待機してもアウト……。なるほど、詰ませるわけだ?これ以上思案している時間もないがこれ以外の方法で私が無事にあいつの元にたどり着く方法は……。)
倒壊するビルのど真ん中で突然立ち止まったカナを見てハナカは勝負を諦めたと思う、しかしスズカは彼女が何をしようとしているのかを考え一つの結論を導き出す。
「ハナカ!すぐにビットで彼女の足を撃って!」
「なっ!?いきなり言われても……!」
「一発でいいから早くしないとビルに飲まれる!」
しかしその指示は数瞬遅くビットからビームを出した時にはすでに彼女は倒壊したビルに飲まれた後であった。
「あ、あいつはどうなった?」
「ビルに飲まれたと思うけど……」
「それよりなんであいつの足を狙えって言ったんだ?」
「彼女の狙いが五体満足の状態でビルに飲まれることだからよ。」
「でもそれだとあいつも苦しいはずじゃあ?」
「かもしれないけど多分相手の狙いは自分の位置を悟らせないことだと思うの。」
「瓦礫に埋もれる方がリスクなんじゃ?」
「確かにそうだと思う。それは私も思ってるんだけど……。彼女の狙いが五体満足でハナカと戦うこと。とにかく彼女は腕足のどちらか片方が使えなくなった時点で勝機はないと分かってるからこそこうしたリスクを背負ってまで自身の姿をくらませてそのうえであなたのビットから逃れてるんだと思う。」
「私のビットからも逃げている、か。」
いい?さっきの状況はまっすぐこっちに来たら数機集めたビットで体を貫く予定だった。逆に下がればそっちで待機させてたビットたちで足を奪いそのまま瓦礫の布団で寝てもらう予定だった。彼女はそれを読み切ってそのうえでこの瓦礫で下敷きになることを選んだの。それが賭けではあるけれど何も出来なくなることと比べたら大分マシと判断したんでしょう。実際落ちてくる瓦礫に対して自分の頭上だけに攻撃を集中させれば被害は最小限で済む。ハナカも同じ状況になったらそうするでしょう?ていうことは彼女は今言ったようなことをやっている可能性が極めて高い。そしてもしそれをやっているなら彼女の狙い通り五体満足の状態でこの瓦礫に身を隠しているだろうね。
「この瓦礫事ぶっ飛ばすことが出来ればそれに越したことはないんだけど、あいにく今の私の装備にはカノン砲とか積んでないのでそんなことできないし、かといってビットで瓦礫に撃ち込んでたらENが無くなって逆にやられちゃうもんね。」
なのでハナカちゃんはなるべく緊張の糸を切らさないでその瓦礫を見ていてほしいの。もちろんビットも飛ばしておいて出てきたらすぐに撃ち込めるようにね。
「当たり前よ。あいつの武装は全部実弾兵器だから虚を突いた攻撃はこの瓦礫に埋もれた状態じゃ不可能のはず!」
(そう、瓦礫に埋もれてる時点で彼女は詰んでいる。こちらはどこから出てくるか全体を見て把握できるけど相手は暗闇の中で外がどうなっているかなんて把握できっこない。圧倒的に有利なのは私達……。それに私には先読みの力がある。これで相手が何をしてくるかを先読みすれば……。)
そうこうしているうちに瓦礫の山に変化が現れた。
「…そこ動き出したね!」
瓦礫の山が動いたことを察知しそこに向かってビットを飛ばして放射する。しかし彼女を倒したという感触はなく不発に終わっていた。
「今撃ったのははずれか?だが、瓦礫の中を動けるはずがない……。自分の体の一部を利用して奇襲を仕掛けてくるつもりか?」
「いーや?体の一部ではなく落ちた瓦礫だよハ・ナ・カちゃん?」
その声が聞こえた瞬間カナが埋められた瓦礫からいくつもの鉄骨が隆起しだした。
「なっ!?これは鉄骨!!」
「何も武器は自分が持ってきた重火器だけではないだろ?」
この子自分を身代わりにしてまで鉄骨を武器として使う気だったの?あまりにも馬鹿げてるけど……。でも実際こうして相手の思うつぼになってる。彼女の本当の狙いは自分の武器を増やすということ。カナちゃんの武装は近接特化で物理より、しかも素早さに極振りの尖った構成。欠点は素早さに極振り故にENの消費とそもそもの残量が少ない事と近接特化、それも剣だったり刀だったりと本当に至近距離でのものしかない。故に私達の構成とは相性が良くない。
私達はビットを使って距離をとって一方的に撃ち込む戦い方を得意としてる。ハナカちゃんがその方がいいみたいだからそうやって戦ってる。つまり中遠距離が得意レンジになってるけど近寄られたら弱いのは確か…。開発部門で武器のテスト運用してる時も相手になってくださる先輩方はそれを理解してるから意地でも突破を試みる。大体は大盾を使い守りながらの特攻か同じようにビットを展開し人とビットとで戦闘を分けて近寄る戦法のふたつが主な内容。けど、カナちゃんのこれからやろうとしてるこれは私の知ってる対策案には無い新しいもの!
「ハナカちゃん!当てずっぽうで構わないから隆起した鉄骨付近をビットで撃ち抜いて!」
「了解!」
スズカの指示通り現れた鉄骨付近を中心に撃ち抜いていく。しかしそれは全てハズレであった。
「あの子の姿は見えないけど!?」
「それでもいいから鉄骨が現れたら壊して!」
私の先読みではあの鉄骨を武器として扱う気でいる。当たり前だけどビルに使われてる鉄骨なんて丈夫だしそのうえ大きくて長い。倒壊させたと言えどサイズ感は戦姫の倍以上あれば扱いとしては『大太刀』とかと変わらない。重みがあるから『特大剣』かもしれないけどとにかく彼女の現在の武装にはない新たなレンジが作られてしまう。もしそうなれば距離の優位はほとんど関係なくなる。それを避けるためにも鉄骨を壊す事とその周辺を念入りにビットを使って壊してもらってる。武器として扱うならばそれに近づかないといけない、だから可能性としてその周辺に潜んでる率があるから鉄骨だけでなく周辺も撃ち込むことで炙り出しにも繋がってるはず…。
「……大分鉄骨を削ったことで瓦礫の範囲も少なくなってきたわね?」
「ここまで来たらあとはその瓦礫ごと撃ち抜いて大丈夫です!」
「おっけー!あんたの恩人にいいとこ見せないと私もなーんかバツが悪いというかだからね!」
「その瞬間を私は待ってた!」
ビット掃射の構えをとった瞬間瓦礫の中から傷付いたカナが飛び出しスラスター全開でハナカに近づく。
「なるほどこのタイミングならビットの標準を変えられない。砲身は瓦礫狙ってるから地面撃つだけだ。してやられたね。」
「決勝は私勝ちでいただきよ!」
「いーや、まだ分かんないよ新人!」
ビット全てを瓦礫に割いたと思われたがハナカの後ろから2個だけではあるがビットが現れ腰部に付いたスラスター目掛けてビームが飛んでいく。
「勢い付けるためのスラスターを壊せば瓦礫に割いたビットがあんたを狙うまでの時間を稼げる。私自身のダメージは必要経費だけどね?」
「それも読んでたらどうする?」
「え?」
「カナ!マインを起動するんだ!」
「言われなくて、も!!」
その瞬間進行ルート上にあった瓦礫が突然爆破し視界を奪うと同時にスラスターを守ることに成功する。そしてそのまま鞘から剣を引き抜きハナカを横に一刀両断し試合は幕を閉じる。
最後の怒涛の展開に会場は一瞬静まり返るが勝者の名が出るや否やその日最高の盛り上がりを見せ大会は無事リナ&カナの優勝で終了となる。
その後優勝及びミカゲの仕向けた刺客を倒した事で条件である天使創造計画とはなにかを聞き出せるようになった。