テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「お礼を言うのは俺の方だ。学生時代の思い出は一生消えない。大事にしてくれた人にはちゃんと恩を返したい。それで……今日、お前を呼び出したんだ」
「えっ?」
急に真面目な顔になり、思わず私も背筋がピンと伸びた。
何を言われるのか、聞きたいけれど少し怖い。
「この前、琴音の言葉が気になって、申し訳なかったけど色々と調べさせてもらった。そしたら、うちのホテルの繋がりの会社で、おじさんの工場のことを詳しく知ってる人がいた」
「えっ、そ、そうなんだ」
「ああ。色々複雑な事情があるにせよ、今の経営状態では工場を閉鎖するしかなくなる。それもかなり近いうちに」
「えっ、そ、そんな……」
「おじさんは琴音には言えないんだろう。心配かけたくない気持ち、すごくわかる。でも、早急に資金を調達しないと大変なことになるんだ」
ますます真剣さを増していく龍聖君の言葉に、心臓がドキドキし始めた。
「で、でも、そんなの無理だよ。お父さん、もうどこも頼れないって言って、でも、そ、それでも何とかするから大丈夫だって……」
ダメだ、涙がこぼれそう。
龍聖君には心配をかけたくないのに――
「琴音」
「……えっ」
うつむいていた顔を上げたら、超至近距離に龍聖君の美しい顔があった。
ふわっと香水の匂いがして、私の臭覚が優しく刺激された。大人の男性の色気溢れる香りに、さっきとは違う意味で心臓が高鳴る。
「言っただろ? 何でもするって。今、恩返ししないと俺自身が後悔する」
「龍聖君……?」
「俺が融資する。工場が持ち直すまで、無償でいくらでも必要なだけ」
「えっ!!」
あまりの申し出に、一瞬何が起こったか理解できずにいた。
固まっている私を、龍聖君は少し潤んだ瞳でじっと見つめている。
「ちょ、ちょっと待って。そんなのダメだよ。いくら家族のためでも龍聖君に迷惑はかけられない」
「そう言うと思った。お前らしい。だから1つ提案があるんだ」