第三章『試験人Δ』
深夜1時
今日もまた毎日のように見る悪夢を見ており今度は30代の女性を裂き殺していた。
何故か殺している人の顔に見覚えがある。
(またか、、、)
意識をしっかり取り戻し、体全体に力を入れ両角は現実に戻ってきた。すると目覚める場所は昨日と同じ廃校の教室だった。
(はぁ?またここかよ。夢の中の夢か。これもまた力を体全体に入れればまた降りるんじゃない、、、?)
今日も目の前にキャリーケースが置かれており、そのキャリーケースの表面には『渡辺アナ』という名前が書かれていた。両角はあのニュースのことを思い出し急いでキャリーケースを開ける。
そこにあったのは昨日と同じ人の頭。顔を見てみるとキャリーケースに書いてある名前の通り両角が見ているニュースのアナウンサーであった。
それと同時に雨が降り雷が落ちる。雷のあかりに照らされ一瞬だが教室が明るくなった。すると壁一面に『お前のせいだ』と人の血で書かれていた。
『お前のせいだ。』
両角は後ろを振り向き声のする方へと視線を移してみるが後ろには誰もいない。気のせいかと思い、いつもの深いため息を吐こうと息を吸ったその時、、、
『お前が生きてるせいで人が死ぬ。』
両角はその声の主の位置がわかった。見ず知らない声の主は両角の体の中から聞こえていた。両角の心拍は限界を迎え今回もまた後ろの方へ倒れ込んでしまう。
『俺を止めないと人をたくさん殺してしまうぞ。人間という生物がいる限りな。』
中にいる存在は意味深い言葉を言い放つだが両角はその時点で意識を失っていた。
9月5日 8時30分
ピピピピ…ピピピピ
アラーム音が鳴り響き両角はその音で目が覚めベットから飛び起きた。まるでクリスマス当日かのように寝室を後にしリビングへと向かいテレビをつけた。
『今日の森下モーニングニュースはおやすみです。また明後日に放送を再開します。』
両角はこのことを知り少しほっとした。
『あらら、こういうことになるんだな。』
「えっ、」
夢で見たあの声が体の中から聞こえる。
(嘘だ。嘘だ。これは夢だ。これは夢だ。)
両角は混乱した。夢で起きていたことが現実で起きたのだからそれもそのはずだ。夢がマトリョシカのようになっているのだとそう考えた。
『ふっふっふ、何を哀れな考えしてんだよ。これは夢じゃ無い。』
両角は頭を抱え発狂しもう諦めた。何度考えても結果は変わらないとそう考えたからだ。でも何もしないのじゃこれは終わらないと思いカバンを持ち病院へと向かう。
同日8時45分
森下警察署 会議室
会議室の中からはまるで闇と怨念が見えて来ており呼吸をすることを許されない場所になっていた。
「起立!礼!着席!」
「「はい!はい!はい!」」
見かけによらず活気は入っているよう見えるだが顔の方は鬼の形相である。武と悠哉の顔は誰よりも険しく恐ろしかった。
「今日の今朝方、渡辺アナが烏間公園の真ん中に置いてあったキャリーケースに腕と足、頭の遺体が詰め込まれているところを発見された。昨日の山陰孝は容疑者ではなかったということで彼の対応は私が行い元の生活に戻ってもらったよ。また振り出しに戻ったが絶対に見つけ出すぞ!いいな!」
「「はい!!」」
同日12時
烏間県立病院にて
「ちょっちょっ、待ってください両角さん!」看護師さん達に呼び止められそうになる両角だがそれを力ずくに八ツ橋先生の元へと歩み寄り、診断室の扉を開けた。そこには誰もいない。
「おう。どうして今日。君が来たんだ?」
八ツ橋はトイレ休憩から戻った時であった。
「先生!わっ、私って、病名って多重人格なんですか?」
「謎が解けたのか。正しくは解離性同一性障害。分かりやすくは二重人格なんだよ。」
「やっぱり。」
「これは君の母と父の唯一の願いだった。秘密にしてくれとね。」
「僕の中にいるもう1人の人格の名前はなんて言う名前なんですか?」
「試験人Δ(しけんにんでるた)。男性。これくらいしか私達にも分からない。」
「し、試験、、、人、、Δ。」
両角は驚くことしか出来なかった。誰も存在を知らない男(あくま)が体の中に生き続けている。両角は恐怖を覚え体の震えが止まらなくなった。周りの看護師達が心配している中、八ツ橋先生は興味深く両角や看護師達の姿を見ていた。まるで観察しているかのように。彼女のつけているメガネに写っている者は一体何か。
臆病か、殺気か、怯えか、憎しみか、痩せ細っている人間か、人を食らう悪魔か、
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!