第4話「白百合」
私が書いている「不可思議な魔法学園生活」という一次創作(参加型)のキャラクター
アモン×エヴァの百合(GL)です
こちらはもしかしたらの話ですので本編設定とは少しも関係ありません
不穏、薬物使用表現を含みますので苦手な方は閲覧をご注意下さい
今でも思い出す私の記憶
今から大体2年前、私が3年生の頃の話。
私の所属している園芸部では新入生を迎える為に花を用意しなければいけない。
花は大掛かりなアーチ状の物や小さな慎ましやかな物が大量にあるなど本当に様々
私はその頃から幽霊部員で参加するのも面倒だったが
顧問に言われ仕方なく苗を選び、鉢植えに土と肥料と一緒に埋めた。
その日は寮に戻ってルームメイトに挨拶をして自分のベッドに潜り込み
私は日記を開いてペンを走らせた
今日あったこと、今日思ったことを全て綴った日記帳は
私が私として本音を綴れる数少ない場所
入学式も終わり、埋めた花が少し萎れようとしてきた頃
園芸部にサイエンスクラブの人が頼み事をしに来た
実験で使う薬草が欲しいとの事で部長と話をしている
私はとんと興味を持たず影から話している様子を見ていると一人の女の子に目を惹かれた
真っ白な花弁の様な髪と瞳。触ったら何処かに飛んでいってしまいそうになる軽やかな羽
珍しく何処か儚げな美しい容姿を持つその子の頭上には
目が眩む程美しい彼女の為の彼女だけの高貴なる輪が浮かんでいる
「天使…」私がぼそりと呟いた声は先輩から少し離れた位置に立っている彼女に聞こえた様で
不思議そうにこちらに視線を向け、その際彼女と目が合った。
あ…、と思わず声に出しそうになったのを飲み込み私はそっぽを向いた
彼女に悪いと思いつつ萎れた花を処分しようと鉢植えを移動させ用途した時
私の肩を誰かがつついた。
「あ、あの…」振り向くとそこには彼女が居た。
まだ小さい…1年生だろうか、
何か話した方が良いかと思ったが内容が思いつかず彼女の目を見つめていると
「先輩が良ければ、暫くご一緒させて頂いても宜しいでしょうか…?」
と彼女は不自然なまでに綺麗な口を開き、私を見つめながら言った
私は頷き、日陰の方に移動して作業をする事にした
彼女は名前をエヴァ・リオチカと言いそれなりに高位の天使だそうだ。
彼女の話に耳を傾けつつ私は横目で彼女を見る。
見れば見るほど美しい私とは正反対の容姿だ
私は闇の様に黒い髪に血の様な赤い目、タトゥーの入った体に大量に空いたピアス。
反対に彼女は絹の様な白い髪にパールの様な白い目、怪我もしていない綺麗な体。
少し羨ましいと思いつつ私は作業を続ける
「では、…私はこれくらいで…」
そう言って彼女…エヴァが立ち上がった。
立ち上がった彼女を下からしゃがんで見上げると
逆光で顔さえよく見えないもののそこはかとなく神聖さを感じられ圧倒されてしまった
確かその日の日記はいつもよりも少し長く、そして丁寧に書いたのを今でも覚えている
それからというもの私はエヴァと話す事が多くなった
と言っても寮も学年も部活も全部違う私達が話せるのはほんの隙間時間だけ。
だけどそれでも良い。不意に笑ったエヴァの表情を見ると私も幸せに満ち足りる感覚がする
それと同時にエヴァを自分だけのものにしたいという独占欲が湧くのを感じる
自分は心が歪んでいるのを自覚していてそこが自分の嫌いな所の大きな要因だ
だがしかしエヴァなら、その歪みでさえも、真っ直ぐにしてくれるではと思った
ある日エヴァと食事をしている時
エヴァの顔色が少し青白かった為私が聞いてみると
最近試験勉強やらが続きよく眠れていないから寝不足の様だ。
私はよく眠れる様に何か出来る事は無いかと思い少し考えたものの
あまりいい案が思い浮かずその日はすぐに解散した
エヴァを見送り1人になった時ふと、
ジャケットのポケットに手を入れると粉末状の薬が入っていた。
(あ…睡眠薬)
そこからというのは行動が早かった
昼食時にエヴァの食事にバレない程の薬を盛った
最初はただの睡眠薬を少しだけだった
しかし回数を重ね、頻度が上がる度に薬の種類も増え
少しづつ、だけど確実にエヴァが堕ちていくのを私は実感して高揚感が続いた
エヴァに薬を盛り初めて大体1ヶ月程経ったある日
私は部活をサボり1人で依存性の高い危険な薬を服用して呂律の回らない状態で居た
その時の事はよく覚えていないが
何処からかエヴァの声が聞こえて来て、物陰に隠れた際
「私、花が好きなの」とエヴァがゆったりとした穏やかな声で言っているのを聞いた
よく考えが回らない状態で聞き取れたことに関しては自分を褒めたい
(花を用意して、…プレゼントすれば、エヴァは喜んでくれる)
その一心で私はまだ薬の抜けていない足取りで庭園に向かった。
倉庫にあった中で最も綺麗な鉢植えを手に取り
花の苗を選ぶ事にした。
赤く小さなゼラニウム?
黄色く慎ましやかなミモザ?
青く優雅なアザミ?
綺麗な花達とエヴァを思い浮かべ手に取って選んでいると
「あ…」
ある花が目に止まった
緑の茎が凛と伸びている1輪の白百合の花
これにしよう。と、すぐに決めた。
苗を植えて水を入れる。そんな簡単な作業なのに私の心は弾んでいた
これを育てきってラッピングしたのを渡した時のエヴァの表情を思い浮かべるだけで
まるで空を飛んでいる様な感覚で作業を終えた
一日一日、毎日エヴァと話す度に百合の花が成長していく気がした
エヴァといつもより長く話せた日は子葉が出た
エヴァが外で授業を受けている姿を見た日は茎が伸びた
エヴァと近い距離に座れた日は葉が付いた
エヴァが私の薬を入れた紅茶を飲んだ日は蕾が付いた
私がエヴァと過ごすに連れ、その花は美しく咲く成長していった
それに連れて毎日書いている日記も書く量が増えていった。
だけどそんな時に私はある間違いを犯してしまった
エヴァにバレてしまったのだ
私が、薬を盛っていたという事に
「アモン先輩が…こんな事する人だと思ってなかった…」
怯えた様な、しかし何処か軽蔑を含んだ瞳で此方を見るエヴァには
最初に出会った時、バレる前の笑顔は無かった
完璧だった筈なのに
バレない筈だったのに
嫌われない筈だったのに
感謝される筈だったのに
私は一体何処で間違ったの?
気が付いたら私は深夜の庭園の真ん中に立っていた
目の前には割れた鉢植え
自分の手からは血が滴っている
しかし最も目を引いたのは
茎の折れ花弁も数枚取れたまだ開花前の白百合だった
薬を飲んで気が付かないうちの行動だったのだと思う
一応の応急処置でもしようかと思い手を見ると
何かを握っている事に気が付いた
手を開いてみると
『赤い薔薇』と『白百合』の花弁を持っていた
なぜこの2枚を持っていたのかは全く覚えていない
私は一体何をして、何を目的に行動したのか?
何も、分からない
今も私はエヴァの事が好きよ
これはきっと純愛ではない。
それでも離れられないのは不可抗力なのだから
けど私はきっとエヴァ以外の男の子や女の子を好きになると思うの
純粋で真っ直ぐな形でなくとも、必ずね
ごめんなさいね、エヴァ
私は貴方に赤い薔薇を贈ることは絶対にしないわ
だって、
真っ黒で穢れた混血児の私にとって
真っ白で純粋な混じり気の無い天使の貴方は
ガラスで覆われた観賞用の白百合でしかないのだから
エヴァへ、最後にこれだけ伝えておくわ
『花を育てる機会をくれてありがとう。私は貴方の事、1ミリたりとも愛していないわ』
「白百合」END
コメント
4件
あばばばばばばば好きィィィィィ!!!