テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第十九話 近づく春、遠ざかる未来
「大切に思うほど、未来が少し怖くなる。」
十二月の終わり。
街には冬の光が増えていた。
駅前にはイルミネーション。
店にはクリスマスの飾り。
人々は楽しそうに歩いている。
でも、湊の心には
少しだけ引っかかっていることがあった。
紬の海外への夢。
あの日から、その言葉が頭から離れない。
応援したい。
本当にそう思っている。
でも。
その先にある未来を考えると、
胸の奥が少し苦しくなる。
*
「神崎くん。」
昼休み。
紬がノートを持って近づいてきた。
「ここ、教えてほしい。」
「いいよ。」
二人で机を並べる。
いつもの時間。
いつもの距離。
なのに。
湊には、その「いつも」が
いつか変わるかもしれないことが気になっていた。
「どうしたの?」
紬が聞く。
「え?」
「今日、少し静か。」
湊は驚いた。
「分かる?」
「分かるよ。」
紬は笑う。
「写真撮ってるから。」
「関係ある?」
「あると思う。」
「神崎くんのこと、少し分かるようになったから。」
その言葉に、湊は少し黙った。
*
放課後。
二人は写真部の部室にいた。
窓の外は暗くなるのが早い。
冬の夕日は短い。
湊は写真を整理していた。
紬が画面を見る。
「懐かしい。」
春の桜。
夏祭り。
海。
文化祭。
「いっぱい一緒にいるね。」
紬が言う。
「うん。」
「不思議。」
「何が?」
「去年の今頃は、神崎くんのこと知らなかったのに。」
湊は笑う。
「俺も。」
「朝比奈が、こんなに写真に写ってるなんて思わなかった。」
紬も笑った。
でも。
その笑顔が少しだけ寂しく見えた。
*
「神崎くん。」
「ん?」
「もし私が海外に行ったら。」
その言葉に、湊の手が止まる。
「写真、送るね。」
紬は続ける。
「向こうの景色。」
「知らない場所。」
「たくさん撮る。」
湊は頷く。
「楽しみにしてる。」
「……本当に?」
「うん。」
「寂しくない?」
その質問。
湊はすぐには答えられなかった。
正直に言えば。
寂しい。
今までみたいに会えなくなるのは嫌だ。
でも。
紬が夢を追うことを止めたくない。
「寂しいと思う。」
紬が少し驚く。
「でも。」
「それ以上に、応援したい。」
静かな声。
「紬が大切にしてるものだから。」
紬は何も言わなかった。
ただ、少しだけ目を伏せた。
*
帰り道。
雪が少しだけ降り始めた。
「初雪。」
紬が空を見る。
白い雪が街灯の光に照らされる。
「綺麗。」
湊はカメラを取り出した。
でも、シャッターを切る前に紬を見る。
「撮らないの?」
紬が聞く。
「撮る。」
「でも。」
湊は笑う。
「今はちゃんと見てから。」
紬は嬉しそうに笑った。
そして。
カシャッ。
雪の降る帰り道。
二人の時間が、一枚に残った。
*
その夜。
湊は写真を見る。
雪。
街灯。
隣で笑う紬。
綺麗な写真だった。
でも。
写真の中の時間は止まっている。
現実の時間は進んでいく。
春は近づいている。
そして。
春が来れば、また何かが変わる。
📷 Photo.019『初雪の帰り道』
撮影日:12月22日
雪はすぐに消えてしまう。
だからこそ、
その瞬間を大切にしたくなった。
コメント
4件
返信してみちゃいましたー!(*´∇`*) そうなんですよね、、終わりと始まりが紙一重だからこそすごく複雑な感情になってしまうんですよね、、、 いろんな方法で見ることで、また新たな視点から見れたりすることもありますもんねー! えー!?もう嬉しすぎて叫んじゃいそうですー! 世界観に浸るっていいですよねー! より物語がスッと入ってくるし、実際に物語の中にいるみたいな感覚で読めますしねー!♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
え〜もう第19話!?😭💕 湊くんの「寂しいと思う」の正直さに胸がきゅーってなったよ…!応援したい気持ちと寂しさの間で揺れるの、リアルすぎて泣ける。あと「今はちゃんと見てから」って写真撮る前に紬を見る湊くん、優しすぎじゃない!?📸💗 初雪の帰り道の一枚、二人の時間がそのまま切り取られたみたいでエモすぎた…春が近づくのがちょっと怖い気持ち、すごくわかるよ。次の話が待ちきれない〜🌸
#元カレ
まぁ
15,183
#nagiコン🐈⬛🩷
りー
251
latte
699
#学園
大正
5,257