翌日、美咲を問い詰めた。
「事件のことで、まだ話してないことがあるんじゃないのか?」
彼女は俯いたまま、しばらく黙っていた。
「……兄さんには、言えなかったの」
「何を?」
「高城くんを殺したのは、黒川さん。でも――あの夜、私もあの部屋にいたの」
「え?」
「黒川さんが来る前にね。彼と話をしてた。別れ話だった。彼が、ひどいことを言ったの……“お前みたいな子、もういらない”って」
その瞬間、テーブルを叩いた音がした。
「私、怒って……花瓶を投げたの。血が出た。でも、死んではいなかった。だから、逃げたの」
俺は息を呑んだ。
妹は“殺していない”が、“傷つけた”のは事実だった。
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