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永遠に咲く毒の花
序章:世界の拒絶
雨宮 雫(あまみや しずく)は、家族からも社会からも、その才能と異質さゆえに拒絶され続けた孤独な天才華道家だった。彼女の作品は美しすぎ、そしてどこか死の香りがするため、誰も彼女を理解しようとしなかった。
雫にとって、世界は冷たく、無意味なものだった。そんな彼女の前に、唯一の理解者として現れたのが、クラスメイトの**藤咲 葵(ふじさき あおい)**だった。
葵は、雫の作品に宿る**「壊れてしまいそうな美しさ」**を直感的に理解し、純粋な憧れと愛情を捧げた。
「雫さんの作る花は、世界で一番きれい。私も、雫さんの作品になりたい」
葵の言葉は、雫の凍てついた心に初めて温もりを与えた。雫の愛は、**「この理解者を、永遠に失うまい」**という強い執着となった。
展開:秘密の儀式
雫の愛は、次第に過激な形を帯びていった。彼女は、二人の愛を「永遠のもの」にするには、**「世俗の生」**から脱却する必要があると信じるようになった。
雫は、葵に恐ろしい**「愛の誓い」**を提案した。
「葵。私たちの愛をこの世で最も美しい形で完成させるために、二人だけの**『儀式』をしましょう。それは、痛みと誓い**を伴うものよ」
雫は、自作の生花用の鋭利なハサミを持ち出した。そして、葵の手を取り、誓いの言葉を囁きながら、お互いの手のひらに浅い傷をつけた。
そして、その血を混ぜ合わせ、二人はそれを飲み干した。
「これで、私たちの血は一つになった。私たちは、もう誰にも分けられない、運命共同体よ」
この行為は、葵にとって**「究極の愛の証明」であり、雫にとっては「永遠の共犯者」を作り出すための過激な契約**だった。
最終章:永遠の完成
その後、雫の精神状態は不安定になり、周囲の人間が葵に近づくことを極度に嫌がるようになった。
雫は、葵をアトリエに閉じ込め、二人の世界を完全に外界から隔絶した。雫の愛情表現は、**「独占」と「暴力的なスキンシップ」**へとエスカレートしていった。
「葵。お前は私の花だ。私が水をやり、私が光を与える。他の誰にも触れさせない」
葵は、雫の激情的な愛に怯えながらも、**「自分は世界で唯一、雫を理解し、愛される存在だ」**という陶酔から逃れられなかった。
しかし、外界から隔絶された二人の生活は、すぐに限界を迎える。食糧が尽き、孤独と狂気が二人を蝕んでいった。
雫は、荒れ果てたアトリエで、最後の一輪の毒々しい花を手に、微笑んだ。
「葵。私たちは、この世界では生きられない。私たちの愛は、完璧すぎるから」
葵は、疲れ果てた表情で、しかしどこか晴れ晴れとした瞳で、雫を見つめ返した。
「…うん。最初から、私たちにはここしかなかったんだよ、雫」
雫は、最後に激しい口づけを交わした後、二人で毒の花を飲んだ。
「これで、私たちは、永遠に、一つよ」
「…永遠に、雫の作品だ」
二人の体は、毒によって急速に冷たくなっていく。
雫は、愛する葵を**「世俗の生」の苦しみから解放し、「永遠の作品」として独占することに成功した(メリー)。そして葵は、「究極の愛の中で、永遠の安息」**という、歪んだ幸福を得て、人生を終えた(バッド)。
激しい愛の証となった二つの遺体は、誰も立ち入らないアトリエの中で、永遠に抱き合ったまま、最も美しい愛の完成形として残されたのでした。