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人の目をまともに見れなくなったのはいつからだろう
ふと、そんな事を思った
目を合わせると喉が閉まって、恐怖心に煽られて、吐き気がして
カメラのレンズすら怖くて仕方がない
「……アルバムを見たら分かるかな」
立ち上がってリビングへと足を動かした
夜目は効く方だが見やすいように電気をつけた
………確かここに、
5段程ある本棚の3段目を左から右へと視線をずらしていく
途中からタイトルのない厚い本が並んでいてそれを手にとって表紙を見るとalbumとオシャレに刻まれていた
その本を数本取ってソファーに腰掛けた
一冊目の表紙を捲るとなーくんからではなく、俺の幼少期から始まった
小さい俺はニコニコと満面の笑みを見せている
心の何処かで生まれた羨ましい気持ちを無視してページを捲っていく
時折なーくんとのツーショットがあってとても微笑ましかった
暫くするとさとみくんが産まれ、俺が撮ってみたやつがあったりして、その度にブレている
この時はまだ笑ってる…
一冊目が終わって二冊目に手を伸ばす
「……あ、笑ってない」
1ページ目のころちゃんが生まれてから俺の笑顔は消えていた
口角は上がっているんだけどな
ページを捲るに連れて増えていく傷
何があったんだっけ…
……思い出せない
ころちゃんが一歳になる頃には口角すら上がっておらず、目に光が宿っていなかった
ジェルくんが産まれてからいっさい写真に写る事はなくなっていて、るぅとくんが産まれて少し経った頃、また俺は写真に写り始めた
写り始めてからは目を伏せたままの作り笑いだけで、カメラのレンズは見ていなかった
「………………………」
本を閉じて背もたれに深く寄りかかる
無音が嫌で、適当にテレビをつけて見るが逆に嫌になって、また無音の世界に戻った
俺のせいで起きてしまったのかペットたちが俺に寄ってくる
構って〜と言うように擦り寄って来るがそんな気力もなくただ見つめるだけ
暫く俺と見つめあった後ペットたちは俺に寄り添うようにくっついて丸くなった
「………なぁに?慰めてくれるの?」
その問いに当たり前だが答えてくれる訳がなくて
ただペット達の優しさに無性に泣きたくなってギリっと歯を食いしばった
その日はペット達のおかげで久しぶりに眠れて、ある夢を見た
小さい時の長い夢
『…っ痛』
『貴方なんか産まれて来なければよかったのに!!!』
『ごめっ、なさ…?!ゲホ』
『黙りなさい!!!!』
ただただ殴られて、蹴られて
悲鳴のように聞こえる怒鳴り声
どうする事も出来ない俺は泣くことしか出来なかった
なーくんとさとちゃん、ころちゃんが近くにいる時は何もされなくて、ずっと3人の側にいた
一生なんて事は無理で、3人が幼稚園に行ってる間体の弱い俺はずっと暴力を振るわれた
ある日、母を怒らせないように3人が帰って来るまで部屋の角に体育座りで座っていた時、いつもより母の機嫌が良かった
ぽつり、呟かなければ良かったことを言ってしまった
『どうしてお母さんは俺を殴るの?』
母はその途端俺に平手打ちをして、初めて顔を殴られた
暫く殴られた後母はこう言った
『あんたが捨て子だからよ』
その瞬間パリンっと何かが砕け落ちる音がした
「………あー…そんな事も、あったな…」
目が覚めて体を起こす
いつの間にか毛布が掛かっていて辺りを見渡すと机に突っ伏して眠っているピンク髪
自分に掛けられた毛布を彼に掛けて彼もアルバムを見ていた事に気がつく
彼はどう思ったのだろうか
気づかないかな?
気づくのかな?
…まぁどうでもいいや