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「レオン、私――」
言いかけて、私はきゅっと唇を噛んだ。
「――まだ、やらなくちゃいけないことがあるの」
「やらなくちゃいけないこと?」
「ええ。ウィステリア領へ戻って、今度こそベラドンナと決着をつけないと」
王都での王妃派との戦いは終わった。
けれど、私自身の戦いは、まだ終わっていない。
そう告げると、レオンは驚くどころか、すべてお見通しだと言わんばかりにふっと笑った。
「はは。バイオレッタなら、そう言うと思ったよ」
「……なによ、その反応」
レオンはジャケットの内ポケットから書類を一枚取り出し、ひらりと差し出してきた。
「はい」
「……なに、これ?」
「王室発行の捜索令状」
「…………は?」
思わず二度見――いや、三度見した。
「ウィステリア領へ向かうなら、王室騎士団の精鋭と司法官も同行させるよ。ついでに、今日の凱旋式をすっぽかした王妃派の残党を逃がさないよう、国境もすでに封鎖済みさ」
「こ、国境まで!? いつそんな手配を……!」
「逃げようとしても、そう遠くへは行かせないよ」
レオンは爽やかに微笑んだ。
「今ごろ、みんな戦々恐々としてるんじゃないかな」
「…………」
(……笑顔でとんでもない国家権力を行使してるわ、この王子!!)
(本気を出した時の仕事が早すぎる!)
私は改めて、手元の令状へ視線を落とした。
「……どうして、ここまでしてくれるの?」
「ん?」
「私……レオンと同じくらいの気持ちを返せないかもしれないのに」
レオンはほんの少しだけ目を見開いた。けれどすぐに、柔らかな笑みを浮かべる。
「いいんだよ」
「でも――」
「僕がしたくてしてることだから」
迷いのない声だった。
「バイオレッタは、ただ受け取ってくれればいい」
「レオン……」
「それに」
彼はすっと距離を詰めると、悪戯っぽく目を細めた。
「求婚の返事は、全部終わってからでいいよ」
「……え?」
「その代わり――ひとつだけ、予約させて?」
「予約?」
レオンがおもむろに、右手を差し出してくる。
「魔法学院に、卒業記念パーティーがあるのは知ってるよね?」
「ええ」
「その時の、最後のダンス」
差し出された手に、そっと自分の手を重ねる。すると――。
「……っ!?」
するりと指を絡められた。
(ちょっと待って!?)
(なんでこんなに自然な手つきで、がっつり恋人つなぎしてくるのよ……っ!?)
慌てて手を引こうとする。けれど、レオンは離してくれない。
むしろ楽しそうに笑いながら、至近距離まで顔を寄せてきた。
「僕と、踊ってくれる?」
「なっ……」
思わず言葉に詰まった。
卒業記念パーティー。そこで最後のダンスを踊る相手には、特別な意味がある。
貴族社会では、婚約者だと周囲に示すも同然。そのまま卒業後すぐ結婚する男女だって珍しくない。
(それって――)
(ほとんど外堀を埋めにきてる公開プロポーズじゃない!?)
「ねえ、バイオレッタ」
レオンは絡めた指をきゅっと握りしめ、逃がすまいとするように私を見つめる。
「最後のダンスくらい、予約してもいい?」
まっすぐな瞳が、私だけを見つめている。
「私……」
答えようとした――そのとき。
「――おい、レオン」
背後から、低い声が響いた。
「バイオレッタから離れろ」
コメント
1件
あああああ第101話読んだよおおお!!😭💕💕💕 レオン王子、国家権力フル回転させてバイオレッタを支えるのマジでかっこよすぎる〜!「最後のダンス、予約してもいい?」なんてもうそれ完全にプロポーズじゃん!? 指絡めてきて離さないとか、ずるいよ王子〜😭💞 でも最後の「バイオレッタから離れろ」で空気変わった……! 誰だ誰だ!? 続きが気になりすぎて今夜眠れない!!