生き人形は毎朝、決められた時間になる耳障りな呼び鈴によって起こされる。
「痛っ・・」
子供の生き人形が、一人分 入る窮屈な箱のような寝床に、ゴンという鈍い音が響いた。
急いで寝床から出ると同じタイミングで、部屋には少し固まっているパンが置かれた。
「意外と美味しいんだよなぁ・・・」一口、二口と次々にパンを頬張りながら呟くいっくんは、次の瞬間には首を左右にブンブンと振って、
「生き人形は、余計なことは考えてはいけない」
そう言って小さく復唱した。
部屋にある年季の入った机が置いてある方の壁には、小さな文字がビッシリと書かれている紙が数多く貼ってあった。
一番上に貼られている紙にある文字には写真が貼ってあり、そこには“生き人形の正装服”と目立つように書かれていて、その紙をいっくんはジッと見つめていた。
*
「おはようございます、014様。」今日も昨日と全く変わりのない挨拶をすると、黒く煤汚れた天井が広がっていて、俺はそれに思わずため息を吐きかけた。
「今日もお掃除、大変だろうな・・・」
そんな事を考えながら俺は、そそくさと天井にこびり付いている煤を生成色をした小さな布で拭いていくと、先程の薄い茶色から黒色に塗り変わっていた。
そして、俺がふと後ろを振り返ると、014様の頭からは、ユラユラと左右に揺れる煤が出ていた。
014様は窓の外を見ていたようで、そこには外にある迷路のような薔薇の庭園に、一つの黒い影が見えた。
「楽しそうだなぁ・・・あの二人。」
小さく呟いた俺に、014様は「はぁ」とため息を吐いて、言った。
「この後、一緒にチェスでもどう?」
お影様は頭から足先まで全てが煤で黒くなっていて、無論、顔もだ。
だから生き人形こと、 顔 が必要なのだ。
でないと、そのお影様は今どのような表情をしているのかが分からないからだ。
だけど、今回だけは分かったんだ。
今、014様は笑ってるってことが。
to be contents .
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!