5月21日、土曜日。
午前9:00、校長の開会宣言と共に、体育祭が幕を開けた。
「プログラム3、1年による徒競走です。」
司会役の3年生が、マイクを使い、実況を行う。
俺、桃瀬は、今とてつもなく、緊張していた。
何故なら…
「も、桃瀬さん、だ、大丈夫…?ふ、震えてるけど…」
隣のレーンに、片思い中の萌田が居るからである。
「う、うん!だ、だだだいじょぶ!」
「そ、そうかな?」
「あ、あはは、はは…」
(今日は俺の命日かな?)
引き攣っている顔を心配そうに見ている萌田。
(何か、できないかな…?……あっ!)
萌田は何かを思いついたのか、桃瀬の方を向いた。
「も、桃瀬さん!」
「は、はいっ!」
萌田は、桃瀬の肩に手を置いて、
「し、深呼吸…吸って…吐いて…吸って…吐いて……お、落ち着い…た?」
桃瀬は、肩に手を置かれて、とても深呼吸している所では無かった。
「あ、あ…うん、お、おおおお落ち落ち着い着いた!」
「よ、よかった」
(あれ?逆に悪化してるような気が……)
「そ、それより、萌田さん、手…その……」
「!!」
手を置いているというのを忘れてた萌田、言われた瞬間、顔が真っ赤になっていた。
「ご、ごめん!」
(恥ずかしい……)
「うぅ……」
顔を手で覆っている萌田。
(あれ…俺、なんかまずい事言っちゃった?)
「よーい…ドン!」
桃瀬達の前の列が走って行った。
(次だ…)
運動に自信がある桃瀬。
小学生から、中学3年までサッカーをしていた桃瀬。
「次、配置に着いて〜」
案内人の合図で、桃瀬達は、立ち上がった。
「位置に着いて、よーい…ドン!」
合図と共に、一気に駆け出す桃瀬。
(よし、いい感じ…)
「!」
先程まで、桃瀬の前に人は居なかった筈なのに、前に見慣れた女子が走っていた。
(萌田さん!?)
運動に自信があった桃瀬から、どんどん離れ去ってゆく萌田。
「パンっパン!」
全員がゴールし、スタータピストルが2発鳴った。
順位は以下のようになっていた。
1位:萌田海莉
2位:桃瀬晴翔
3位:小萩麻呂(1-A)
4位:涼川真広(1-B)
5位:八重桜(1-B)
「続きまして、1年による大玉転がしです。」
〜12話へ続く〜
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