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#ハッピーエンド
瑠璃マリコ
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#婚約解消
maruko
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臣桜
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「……え、江上……君……?」
縋るような眼差しを航平に向けているように見える菜穂子だが、内心、彼の取った行動に「なんてことをしてくれるんだ!」と苛立つ気持ちが少なからずある。
自分が招かれざる客を演じてさっさと退場すれば、この場は丸く収まったのに。
所長には後でちょっと迷惑をかけるかもしれないが、日ごろから「土下座はタダだ」と豪語しているから、きっと上手に先方に謝ってくれるだろう。
真澄個人に対しては、後で菜穂子が謝ればいい。怒らせるつもりはなかった。どうしても断れなかった。自らの意思で祝賀会に参加したわけじゃないと、必死に釈明すれば怒りを鎮めてくれるだろう。
それでも怒るなら、仕事とプライベートは分けるって言ったじゃん!と逆切れすればいい。ん?……あれ??
ここで菜穂子は、真澄が取った行動に違和感を覚えた。
しかしそれを深く考える間もなく、航平が口を開く。
「早波さんが嫌がってるのに、あんた何やってるんですか?」
「早波?」
あんた呼ばわりされたことより、菜穂子が旧姓で呼ばれたことに真澄は不快感をあらわにした。
それをどう受け止めたのかわからないが、航平は眉を吊り上げる。
「うちの事務所の大切なスタッフなんで、乱暴なことしないでくれますか?」
物怖じせず菜穂子を守ろうとする航平は、無駄にカッコイイ。
しかし状況が状況だけに、菜穂子はときめくどころか、嫌な汗しか出てこない。
「江上君、ちょっと落ち着こ……ね?」
「は?」
「は?」
火花を散らす真澄と航平をなだめようとしただけなのに、二人から睨まれてしまい、菜穂子は頭を抱えたくなる。
「菜穂ちゃん、来い」
「行く必要なんかないですよ、早波さん。俺と一緒にいましょう」
「は?お前、死にたいのか。菜穂ちゃんは俺の──」
「はい!行きましょう!!」
妻だ、と言いそうな勢いだった真澄を止めるべく、菜穂子は真澄の腕を掴んで会場の外へと歩き出した。
モーセが海を割ったように、菜穂子と真澄が歩き出すと招待客は無言で道を譲る。その中には、純玲と耀太もいた。
純玲は世界中の憎悪を凝縮した視線を菜穂子に向け、耀太は「え?は?え??」と言いたげに、菜穂子と真澄を交互に見つめている。
それらを横目で見ながら、菜穂子は足を止めずに真澄をチラッと見る。
「寒いけど、非常階段で話しできる?」
「……空いてる部屋があるからそこにしてくれ」
部屋番号を告げる真澄に、菜穂子は小さく頷いて会場の外へ出た。
エレベーターホールは閑散としていて、さっきまでのざわめきが嘘みたいだ。
真澄の腕を離した菜穂子はエレベーターのボタンを押して、到着を待つ。
「……ところでさ、私がその部屋行っていいの?」
「何が訊きたいんだ?」
質問を質問で返され、菜穂子は口をつぐむ。一応、気を遣ってあげたのに。
「別に行っていいなら、行くよ。一応確認したかっただけ」
「だから、なんの確認なんだ?」
しつこく尋ねてくる真澄に、菜穂子はイラッとする。
「部屋に女性がいたら、困るんじゃないかって思っただけ!」
こんなこと言いたくなかったのに、言わせたのは真澄の責任だ。全部、彼が悪い。
そう居直った菜穂子だが、真澄の顔を見て唇をかむ。
真澄は、酷く傷ついた顔をしていた。
そんな顔をする真澄に、菜穂子はまず最初に狡いと思った。
でもどんな理由であれ、好きな人を傷つけてしまった事実は、菜穂子の冷静さを奪ってしまう。
「あ、ごめん……私、変なこと……言った……」
「謝る必要はない。俺が菜穂ちゃんにどう思われてるのか良く分かったから」
動揺する菜穂子に、真澄は冷たい声で言い捨てる。
ズキン、と胸がナイフで刺されたような痛みが走る。あまりの痛みに、菜穂子が左胸に手を当てたと同時に、エレベーターが到着した。
「乗るか?」
わざわざそんなことを尋ねる真澄が憎い。
「……乗る」
「そうか」
わざと間を置いて返事をするまでの間、真澄はドアを押さえて待っててくれてる。そういう一つ一つの仕草に、自惚れてしまいそうで嫌になる。
「一応言っておくが、あの部屋は俺がリモート用に使ってる」
「そうなんだ」
「ああ。あそこに俺以外の人間が入るのは菜穂ちゃんが初めてだからな」
「そうなんだ」
「そうだ」
エレベーターが動き始めた途端、釈明を始める真澄と、感情を殺して返事をする菜穂子。
異様に重たい空気が二人を包むが、息苦しさを感じる間もなく、エレベーターは目的の階に到着した。
長い廊下を歩いて、部屋の前に到着する。真澄が上着の内ポケットからカードキーを取り出して、鍵を解除する。
開いた扉の先には、リビングのような空間が広がっていた。
「ん?ここは……?」
「いわゆるスイートルームっていうところだ」
「ぅわ、すごっ!初めて見た」
ド庶民丸出しの菜穂子のリアクションに、真澄はクスリと笑う。
「カードキーは二枚あるから、一枚やる。気に入ったならいつでも来ればいい」
そう言って、真澄は菜穂子に予備のカードキーを差し出した。
「い、いい……!要らない!」
ブンブンと首を横に振って、菜穂子は後ずさる。
こんな部屋、使い方も、使う予定もない。
「俺が浮気してるかどうか、いつでもチェックできるのにか?」
「カードキーを渡そうとしてくれた時点で、浮気なんてしてないでしょ!?」
そもそも、自分以外の好きな人がいる相手と結婚したのだ。今更、浮気がどうのと責める権利は、菜穂子にはない。
そういった気持ちで拒絶しただけなのに、真澄は違う意味に捉えてしまった。
「つまり俺の浮気疑惑は解消されたってことか」
「え?」
「違うのか?」
「そ、それは……違いま……せん」
指をこねながら菜穂子が答えれば、真澄は満足げに「よしっ」と頷く。
何が「よしっ」なんだ?と、菜穂子が疑問を口にする間もなく、真澄は再び口を開いた。
「じゃあ、今度は俺から質問だ。菜穂ちゃん、どうして今日の祝賀会、他の男と一緒に来たんだ?」
急に怖い顔になった真澄は、菜穂子との距離を一歩縮める。
その圧に耐えかねて、菜穂子は詰められた分だけ後退してしまった。
コメント
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みぅです🤍🥀 47話、読み終わりました…。航平くんのカッコよさと、真澄さんの嫉妬の重さが同時に来て、胸がギュッと締め付けられました。菜穂子が「好きな人を傷つけた」って自覚するところ、すごくリアルで切ない。カードキーを渡す真澄さんの「初めてだから」の台詞、ズルいですよ…。スイートルームの空気感、すごく伝わってきました。次が気になります🌙