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◇◇◇◇◇
ヘルサイズ本部の最奥の部屋、通称深淵の間には、卒兵の全員が出払って、総統、参謀長、そしてレキの3人だけが残っていた。
リルミアがガミラスに耳打ちしたのちに、ガミラスが口を開いた。
ガミラス:「レキ・グランベル!
お前の要求通りに特例で今ここで幹部にしてやる。その代わりにお前の連れを探し出して、ここに連れてこい!
そいつも一緒に幹部にしてやろう。」
ガミラスはレキの返事を待っている。
リルミアもその返事が気になるようだ。
レキは一瞬考えたが、条件としては悪くない。マリスとヤヌリスは外で待機しているので、すぐに条件を満たすことは可能だ。
さらに最悪、解呪さえしてしまえば、探すふりをして踏み倒すことも可能だ。
全く問題ない。
レキ:「ああ、それでいい。
このあと、探しにいくことにするよ。
じゃあ、今から俺は幹部だ。
早速、解呪してもらえるか?」
ガミラス:「そうだな。お前も幹部になったことだし、説明しておいてやろう。
幹部になると解呪されるというのは、あれは嘘だ。解呪はしない。」
レキ:「はあ!?
何を言ってるんだ!」
レキはあまりの怒りに思わず叫んでいた。
ガミラス:「はーはっは!
いつもながらこの状況は面白い。
誰もがそういう反応になるんだよ!
幹部になったところで解呪するわけがないだろう。
それこそ、野獣を野に放つようなものだ。」
レキ:「あり得ねえぞ!
何のためにここにきたと思ってんだ!
それで幹部たちは納得するのか!?」
ガミラス:「そうだな。
最初はお前と同じような反応をする。
ただ、幹部になれば、今までとは雲泥の自由と大金が手に入る。
何をやろうが好き放題だ。
ヘルサイズの後ろ盾もある。
これを手放そうとする奴はおらんよ。
最後には納得するんだよ。」
レキ:「ふざけんな!納得するわけがないだろう!
早く解呪しろ!俺は金は要らない!
お前が!お前だろう!?」
レキは怒りに任せてリルミアに詰め寄ろうとした。それほどまでにレキの怒りは最高潮に達していた。
なぜなら、解呪のみがレキの唯一の望みであり、そのためにいろいろな仕打ちに耐えてきた。怒らないわけにはいかない。
ただ、リルミアに詰め寄ったレキのこめかみにガミラスが一瞬で抜いた剣の切先が当てられていた。
その速度にレキは反応することもできず、気づいた時にはすでに生殺与奪を握られていた。
現在のレキの戦闘力は飛躍的に向上していたが、ヘルサイズを継承したガラミスとの差は圧倒的であることを認めざるを得ない。
ガミラス:「やはり、お前は解呪のみが目的か……。
だとすれば、このままここを生かして出すわけにはいかないが……どうする?」
どうする?って余裕か!?
腹立つけど、これはどうするべきだ?
レキの考えがまとまらないうちにリルミアが口を開いた。
リルミア:「ガミラス。剣を納めて。」
ガミラス:「は?どうした?」
リルミア:「いいから剣を納めなさい。」
リルミアの口調は穏やかだが、反論を許さない威圧感があった。
相手は総統のガミラスなのだが、どういう関係なのか?
やはり、実質実権はこのリルミアが握っているのかもしれない。
ガミラスは無言で渋々剣を納めた。
リルミア:「レキ。右手の甲を見せてもらえる?」
は?なぜ?
よく意味がわからないが、レキは逆らうべきではないと思い、言われる通り右手の甲をリルミアの方に向けた。
それをじっとリルミアは眺めている。
リルミア:「なるほど。そういうことね。
ガミラス。レキは私が預かるわ。」
ん?何を言ってるんだ?
俺を預かる?一体、こいつは何者なんだ?
ガミラスも驚いた表情を浮かべ、リルミアに対して怒りの矛先を向けた。
ガミラス:「はあ?どういうことだ!?
俺は総統だぞ!なぜそうなる?
説明してもらおうか?」
リルミア:「そうね。じゃあ、少し説明してあげる。
レキはよく聞いておくのよ。
ガミラスには総統を継承した時に話したと思うけど、私は先代魔皇の娘です。
ただし、私は魔人ではなく、半魔人というべきなのかしら。人間であった先代の魔皇と従者であった魔人の間に出来た子供なのです。
先代魔皇が崩御された時、従者の魔人も消滅したのだけれど、私は従者ではなかったからか、一人生き残ったのです。
そして、魔皇の意思を継ぐべく、魔神であるディスハー様を信仰する唯一の組織として、このヘルサイズを作ったのです。
ナスヴィー教に対抗するためにね。
あの最奥に祀られている像がディスハー様の銅像ですよ。」
ほう、あのでかい銅像は魔神だったのか。
しかし、ヘルサイズがこのリルミアが創設した組織とはな。しかも、先代魔皇の娘とか、300年以上前の話だったはず……。
ただ、半魔人だったんだな。道理であいつらと同じ感じがしたのか。
だとすると、こいつはうまくいけば、仲間に引き込めるんじゃないか?
レキがいろいろ試行を巡らしているとガミラスが口を挟んだ。
ガミラス:「リルミア!だから何なんだ?
それとこいつに何の関係がある!?」
リルミア:「まあ、待ちなさい。
レキ。あなたが行動を共にしている女性というのは魔人ではないですか?」
え!なぜわかったんだ?
何の変哲もない右手の甲を見せただけだぞ?
どう答えるのが正解だ?
ガミラス:「魔人?お前は何者なんだ?」
リルミアの言葉に真っ先にガミラスが反応した。
リルミア:「レキ。隠す必要はありません。
悪いようにはしませんよ。」
レキは喋っても隠しても結果は同じだと判断して、従者のことを話すことにした。
レキ:「ああ。そうだ。魔人だ。」
リルミアは会ってから初めて笑みを浮かべた。
リルミア:「ふふふ。やはり、そうでしたか。
300年待った甲斐がありましたよ。
たぶん、強さから言って魔人貴族なんでしょうね?位階はどれくらい?」
レキ:「ああ。伯爵級と子爵級と言ってたな。」
リルミア:「素晴らしい!
しかも、2人に増えてるのね。実にいいわ。」
リルミアとレキの会話にガミラスだけがついていけていない。
ただ、リルミアはすごく嬉しそうだ!
リルミア:「じゃあ、レキ。
あなたには、死んでもらうわね。」
は?え?なんで?
今の流れでなぜそうなる!?
レキは言葉を返す間もなく、心臓を握りつぶされるような感覚に苦しくて血を吐きながら、叫び声を上げた。
レキ:「あ゛〜〜〜〜!!!」
叫び声が間も無く止むと大量に血を吐いたレキがその場に倒れると同時に跡形も無く消えていった……。
それをリルミアは笑みを浮かべ眺めていた。
◇◇◇◇◇