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「誰ですか?」
「誰ですか? ウケる! 冬花だよ。ほかに誰がいるんだよ?」
この口の悪い女は僕の妹。誕生日の関係で今は四つ年下だけど、学年は三つ下で今は中二。妹は問題児で中学生のくせに髪を金髪に染めている。毎日のように彼氏や仲間たちと遊び回っていて、家に帰ってくるのはたいてい深夜。親が注意しても聞かない。もちろん僕が注意しても。
「童貞の分際であたしに説教するな。自由に生きてるあたしがうらやましいくせに」
冬花には言えないが、図星だった。奔放な彼女に僕が惹かれたのはどことなく妹と似た雰囲気をまとっていたからかもしれない。中一のときにできた初めての彼氏とはまだ続いているようだ。どこの誰だか知らないけれど。
というわけで兄妹といっても仲はよくない。そもそも僕を兄としてリスペクトする気持ちがまったくない。僕の自殺騒ぎがあった頃も以前と変わらず連日夜中まで遊び回っていた。だからしょっちゅううちに来る彼女と出くわしたこともない。
でも高校は僕のいる高校に進学したいという。入学できたところで、僕の卒業直後に入れ替わりで入学となるから、校内で顔を合わせることはない。彼女も不思議な人だけど、何を考えているか想像できないという点で、冬花は彼女以上かもしれない。
「いつも遊び歩いてるくせに、どうして今日はうちにいるんだ?」
「いたくていたわけじゃねえよ。本当は今日は彼氏とデートの予定だったんだ。アニキが自殺したら困るから今日だけは見張っててくれないか、って親に頼まれたら断れないだろ? そしたら、なんだよ? 自殺しそうだったはずが、女連れ込んでセックス始めたからさすがにブチ切れたぜ!」
妹の部屋は僕の部屋の隣。僕らの声が全部筒抜けだったということ?
「怒鳴り込んでやろうと思ったけど、今日アニキの童貞を卒業させるという彼女さんの声が聞こえたから、アニキの童貞卒業を温かく見守ることにした。無事卒業できたようだな。怒鳴り込まなかったあたしに感謝しろよ」
「ありがとう」
「ホントに感謝されたよ。真面目すぎてウケる!」
感謝しろというから感謝したのに思い切り馬鹿にされた。やっぱりこの妹は好きになれない。