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ずっと一緒にいると約束してから数ヶ月が過ぎて、俺たちは中三にあがった。
クラスは別々だったが、登下校も部活も一緒だったから(名前)とは前のような関係を続けられている。
俺と(名前)は親友。
それで俺たちがずっと繋がっていられるなら、俺もこのままでいい。
そう思うようになっていた。
「角名、今少し時間あるか?」
そんな俺は今、珍しく担任から呼び出しがあり、職員室へと向っていた。
「お前高校の推薦来てるぞ、しかもバレー強豪校。良かったなぁ」
「マジすか、ヤバ。どこですか?」
「稲荷崎高校ってとこなんだけど、兵庫県だから少し遠いかもな。
学生寮もあるらしいから、親御さんとも相談して決めてな」
「…瀬名も、そこから推薦来てますか?」
「瀬名の事は何も聞いてないな。他の生徒の事情だから、もし聞いてても教えられないけどな」
「そ、すか。少し考えます」
兵庫県と聞いてから、俺は頭が真っ白になった。
もし俺が兵庫に行ったら、(名前)とはもう毎日会えない。
そんなの嫌だ。
でもバレーの強豪校だ。そこで全国という舞台に立てるのなら行きたい。
どうしよう。どっちを取れば良いんだろう。
…どっちを取れば。
あ、そうだ。
(名前)に伝えたら(名前)も兵庫に来るかな。
(名前)も兵庫に来れば、ずっと一緒にいられる。
職員室から出て、俺は早足で(名前)のクラスに向かった。
(名前)。
俺、兵庫行くんだ。
だからお前も、もし行けるなら一緒に。
「…(名前)」
目の前に映る(名前)を見て、クラスまで行かなきゃ良かったと後悔した。
(名前)が他の男の膝に座って、楽しそうな笑顔で戯れ合って。
頭を撫でられて。
「…なんでだよ」
俺にはあんな事、してくれなかったのに。
なんであいつは良くて俺はダメなんだよ。
あいつの方が仲良いの?
俺たち親友じゃなかったの?
ずっと一緒は嘘?
嘘つき。
俺のことだけ考えて、俺のことだけで頭いっぱいにして、俺で一喜一憂してくれよ。
なぁ、(名前)。
俺が何も言わずに兵庫行ったら、お前は追いかけてきてくれる?
俺の事だけ考えて、病んでくれる?
お前がこんなに俺の心を掻き乱すなら、俺だってグチャグチャに掻き乱してやる。
俺が何も言わずに遠くに行ったら、(名前)は俺の事だけを考えてくれるだろうか。
依存して、執着してくれるだろうか。
そんな甘い考えだけで、俺は兵庫に行く事を(名前)に隠すことにした。
そしたら俺だけを求めてくれるって、そう思ってたんだ。
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