1.ボムガール
「味方…?どういう事だ?」
「4課の隊員……。先輩、すぐに早川を呼んできてください」
「あ、あぁ!」
野茂は階段を駆け上っていった。星野は2人の男の前にしゃがんでじっと見る。
「もしかしてお前ら…電ノコとサメか…?」
確か、デンジとビームと言ったか。直接会ったことはなかったが、名前と存在は人伝いに聞いたことがあった。
「早く!こっちだ!!」
野茂が早川を連れて走ってきた。星野はすっと立ち上がって後ろに下がる。
「入り口で自分は特異課だと呻いていた。この魔人が本当に仲間なのか?」
「は…はい!」
早川は2人の元にしゃがんだ。ビームの顔を覗き込む。
「デンジは…悪魔にやられたのか?」
「うう…」
ビームが呻いてわずかに顔を上げた。
「ボムが来る…!ボム…銃の悪魔の…仲間!」
早川が動きを止める。
「なんでお前がそんな情報を知っているんだ?」
声色が変わった。
2.お仲間
早川の仇は銃の悪魔だ。幼い時に両親と弟を殺され、それ以来悪魔を人一倍憎んでいる。それを星野は知っている。
「あ!キタ!キタ!ボム来た!!」
「!!」
星野、早川、野茂が一斉に顔を上げた。と同時に野茂が立ち上がって入り口から一歩出た。
「野茂さん!?」
そして、底抜けにデカい声で叫んだ。
「そこの美女!!すまないがそれ以上近づくな!!ここは対魔2課の訓練施設だ!民間人の立ち入りは禁止されている!!」
どうやら野茂の目線の先にいるのは女のようだ。星野からは暗くてよく見えない。
「すいませ〜ん!!」
突如、その女の声らしき声が聞こえた。すると。
「レゼ…!」
「レゼ…?」
デンジが呻き、それを聞いた野茂と星野が呟く。
「助けてくださ〜い!!悪魔に襲われてま〜す!!」
レゼ、と呼ばれた女が笑顔で告げる。この状況にはとても不似合いな笑顔で。
野茂は途端に冷静になった。覚悟が決まったのであろう。
「野茂さん」
「あぁ、お仲間を連れて後ろに下がっていろ」
未だしゃがみながら野茂の後ろ姿を見つめていた早川が立ち上がった。
「本部と副隊長に連絡、ここにいる2課全員呼べ」
「はい」
「俺も行く」
星野と早川は無線機を取りに走り出した。
「それと─」
まだ話の続きがあるのだと思い、すぐに足を止める。
「…あの美女、どこかで見たことないか?」
「こんな時にナンパ癖はつまんないですよ」
去り際の早川にそう言われる野茂。いつもの星野であれば同意見である。
だが、この時星野も同じことを考えていた。
3.レゼ
「こちら星野。対魔2課訓練施設にて悪魔と思われる人物と戦闘中。応援求む」
星野が本部に連絡をし、すぐに無線を切って副隊長に同じように連絡した。そして残りの2課を呼びに走る。
(加勢しろ!間に合え!間に合え…!!)
だが、遅かった。
凄まじい爆発音がして急いで戻ると、そこでは既に隊員数人が死体となっていた。
「クソ…ッ!!」
「いたいたいたいた!!悪魔いた!!」
そう叫んで向かいから来たのはたった今招集した隊員だ。悪魔に銃を向けている。銃の悪魔の勢力を抑えるために、この日本で銃所持を認められているのは警察官やデビルハンターだけである。
「発砲!安藤マサキ、発砲願います!」
「許可する!!」
「ッ! 待て!!」
星野が咄嗟に安藤を止めたが、これもまた遅かった。
ドォン!!
強力な爆発により、先程の隊員含む何もかもが弾け飛んだ。死体すらもない。粉々に吹き飛んだ。
「チィ…ッ!!」
星野が歯ぎしりをしたその時だった。
「コン!」
突然、どこからともなく狐の鋭い爪のある手が女に向かって伸びた。だが女はそれを華麗に避ける。
「しぶといねキミ」
女が目の前に来て言った。
そう、狐を出したのは先程死んだと思われていた野茂である。星野はそれの邪魔にならないように退く。野茂は覚悟が決まっているようだった。
すると、女が野茂の喉元に手を出した。先程までの技を見ていたら分かる。
野茂を殺す気なのだ。
「野茂さ…!!」
そう言いかけた時、目線の先に新たな人影が現れた。
「コン」
ガ!!!
狐の頭が女を喰った。そこにいたのは─
4.爆発
「副隊長…!」
「ちょっと横を失礼」
壁と狐の隙間をすり抜けて来たのは対魔2課副隊長だった。
「ギリギリセーフ…って感じじゃあないか」
隊長の次に実力を持つ彼は、辺りを見回してから星野に目を向けた。
「星野、お前は早川たちを援護しろ。ここは何とかする」
「はい」
副隊長に言われ、星野は外へと駆け出した。
言われるがままに外に出た星野は周りを見渡した。
「!」
早川たちは車に乗り込んでいた。急いで追いかけようと思い、星野も自身の車に乗って発進させる。
空は暗く、花火なんぞとうに終わっていた。
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