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20 - 第20話 「台風」

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2023年05月22日

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1.悔しさを噛み締めて

「クッソ…見失った…」

副隊長に早川たちを援護しろとは言われたが、その肝心の早川たちを見失っていては意味がない。一刻も早く見つけなければならないというのに…。

「4課の救援はまだ来ねぇのかよ…役立たずだな…!!」

頭の中に、眼帯をしたセミロングの女と、ツノが生えたポニーテールの悪魔と、オッドアイの悪魔が思い浮かぶ。もはやそれだけでイライラしてくる。星野は舌打ちをした。

その時。

「うわっ!!」

目の前に急に車が飛び出してきた。慌ててハンドルを切る。

「ッ何なんだよ危ねぇな…」

冷や汗を垂らしながら無意識に飛び出してきた車の運転手を見る。

なんて運が良いのだろうと思った。運転手はなんと星野が追っていたアキだった。

「ビンゴ…」

アキの車はそのまま星野の車の前に来る。星野は車を追いかけようとした。

すると、突然アキの車が止まった。

慌ててブレーキをかけたためぶつからずには済んだ。不思議に思った途端、アキの車は何かを避けてから発進した。

猫でもいたのかと思ったが、とにかく今はアキの車に着いて行こうと、星野も同じように避けようとした。

だが、路上にいたのは猫なんかではなかった。

「!?」

そこには先程訓練施設にいた女が、野茂と副隊長の生首を持って立っていた。

星野は驚きのあまり声も出なかった。そのまま下を向きながらゆっくりと避ける。

野茂と副隊長の優しかった顔が浮かんで、消えた。

「クソったれ……!!」

悔しさのあまり、ハンドルを強く握り締める。

ただ、それだけしかできなかった。

2.炎

いつの間にか、星野の前からアキの車が消えていた。星野の前には大きなトラックが走っている。

「またかよクソ…」

星野には見失ったように見えるが、実際にはアキの車はトラックの前─つまり星野の前の前を走っていた。幾分トラックが大きいため見えなかっただけだ。

「また探し直し…仕方ねぇ…」

星野がハンドルを握り直して前を向いたその時。

「!!」

いた。見つけた。女が前のトラックの上に立っている。こちらには気づいていない様子で、風などものともせず、真っ直ぐに立っている。

あの女を追いかければ早川の車にたどり着く─そう考えた星野は改めてアクセルを踏んだ。

その瞬間。

バォア!!!

「ッ!?」

突然、目の前のトラックが大きくひしゃげて爆発した。星野は慌ててドリフトをし、トラックから距離を取る。現状を把握しようと車を降り、周囲を見渡しても、周りは荒れに荒れていてよく分からない。ただ爆音だけが響いている。

ドォン!!バガァ!!バキィ!!

ビルが崩れ、ガラスが割れ、シャッターが木っ端微塵に破壊される。開けっ放しにしていた車の運転席のドアも衝撃で吹っ飛び、星野はすぐに頭を抱えてしゃがみ込んだ。

3.不要な友情

ドォォン!!!

今までで一番大きな爆発が星野に迫る。だが、どこかで脚を怪我したようでなかなか動けない。

(クソ…ッ…間に合わ…!!)

グン!

「!?」

覚悟を決めたその瞬間、誰かに強く腕を引っ張られ、間一髪で路地裏に隠れる。

「リヅ!状況は!?爆弾女は何してる!?」

「まだ何も!早川さんと暴力さんと対峙しとります!」

そこに現れたのは4課隊員・院瀬見、リヅ、イサナの3人だった。

「お前ら…!!」

「テメェ動き鈍すぎかよ!余計な迷惑かけてんじゃねぇクソが!!」

院瀬見がそう叫び、路地裏から飛び出していった。リヅとイサナもあとに続く。

「ふざけんな…私のほうが歳上だわ…」

忌々しげに呟きながら星野も続いた。

4.台風

ドゴォ!!

「!!?」

突然、辺りに強風が吹き始めた。誰よりも早く異変に気づいた院瀬見が空を見上げる。

「おいおいおい…なんだあれ!?」

院瀬見の目線の先にいたのは─

台風…!?

「台風の悪魔なんていんのかよ嘘だろ!?」

4人は目を丸くする。台風の悪魔はもの凄い勢いで辺りを粉々に砕いていく。星野、院瀬見、リヅ、イサナの4人はそれぞれ吹き飛ばされないように電柱にしっかりとしがみついた。

「怪獣バトルだ!こりゃ大人しく観戦してるしかないな〜!」

「…!!」

暴力がそう言ったのは4人にも聞こえていた。

だが何を思ったのか、星野が突然ダッシュして台風の元へ飛び込んでいった。

「アイツ馬鹿かよ!?話聞いてたか!?」

院瀬見は走り去った星野を目で追った。

「ハァ……ハァ…ッ…」

星野が走った先には幼い少女がいた。5歳くらいだろうか。逃げ遅れて被害に巻き込まれたに違いない。身につけている衣服はボロボロで汚れており、星野を見てガタガタと震えている。

「…大丈夫か?怪我は?」

少女が涙目で首を横に振る。

「避難するぞ。ここは危険だ」

そう言って少女を抱きかかえ、再び走る。安全なところまで届け、再び院瀬見らの元へ戻ろうとしたその時。

「ッ…!!」

先程怪我した脚に急に激痛が走り、膝から崩れ落ちた。

見れば、すぐ後ろから台風の渦が近づいてくる。脚は動かない。逃げ場もない。

(死ぬ。間に合わない。ここで死ぬ)

台風が自身に到達するまでの間に、星野は走馬灯を見た。

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