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プロローグ
ここはナイトイレブンガレッジ。魔法士育成学校”だった”ものである。
奴らが
来るまでは。
プロローグ 完
__________
第一章 慈悲深い魔女
目が覚める。真っ暗だ。それに、狭い。
「ん…」
目を開けると、そこはベッドの上ではなく、棺桶の中だった。
「…はッ?」
意識の覚醒とともに、俺はパニックに陥った。
「ここどこだよ!!?」
俺が叫ぶが、返事はない。俺は慌てて、あたりを見周す。
看板があり、そこには微かに『モストロラウンジ』と書いていた。
その時だった。なにかが積み重なっているのを発見する。俺は、絶句した。
「し…死体…?」
俺は吐き気を催す。
バラバラに引き裂かれた遺体が無残にも積み重なっていた。
死体内、転がってた頭をよく見ると、顔にダイヤのスートが描いてある。
「なんなんだよ…、」
その時だった。
ズズズ、ズズズと何かを引きずる音が聞こえる。 俺は咄嗟に、近くのロッカーに隠れる。 そこに現れたのは、
「じぇぇぇどぅぅぅぅ..ずぅかれつぁッ」
「…」
身長が5mくらい、目がなく異様に鋭い歯、同じ見た目をした、2体のバケモノだった。
「ヒュッ…」
俺は思わず息を呑む。
ロッカーは、悪手かもしれない。
「きゅぅぅうけぇぇえぇい」
「…」
バケモノは居座って動かない。
冷や汗でびっしょりの背中が、空気を湿らせる。バケモノが早く去るのを、俺は待つばかりであった。
__________
それから数分後、
「じぇいどぉぉぉ!やるきでてぎてぁ〜」
「…」
バケモノ共は、部屋を出ていった。
ロッカーを出るなら今のうちだ。
俺は震える身体に鞭を打つように、探索を 開始した。
「意外と広いな…」
周辺を探索していくと、いくつか分かったことがある。
1つ目は、ここが店だと言うこと。
看板に「モストロラウンジ」と、 掠れて書いてあった。
2つ目は、閉じ込められているということ。
最悪の気分だ。
3つ目は、魔法が使える世界だということ。金庫があった部屋には、魔導書というものがあった。ファンタジー…
逆に分からないこともある。
さっきの怪物や、生存者についてとか。
とりあえず、ここから出るのが先決だ。
「…ここは?」
掠れた文字を、よく目を凝らして見る。
VIPルー厶。そう書かれていた。
ここだけ電気がついていた。
俺は、勇気を出して扉を開ける。
「『ウォーター…!」
「ッ!?」
「アズール!ストップ!!」
いきなり魔法を使われそうになり、思わず尻もちをついてしまう。
同時に、生存者がいることに安堵する。
「お前、誰?」
警戒した声が、ぽつりと伝わる。
俺は焦る。いきなり異世界から来た、なんて頭のおかしい奴だと思われるだろう。
「…」
「い、一体なんなんだ… いきなり来て黙り
込みましたよ… 」
俺がすっかり困り果てると、つり目のお兄さんがこっちを見つめてくる。
「あ…あの…?」
「…あぁ、なるほど。お前がいるか 」
「ええ…この方には悪いですが…」
「そんなに怖がらないで、
力になりたいんです」
「『かじり取る歯(ショック・ザ・ハート)』」
「え…」
俺の意識は、そこで途切れた。
「…なるほど」
「え〜、意味わかんね」
「はぁ…今更驚きませんよ 」
ゆっくりと意識が覚醒する。
「うわッ!?」
三人は目と鼻の先にいて、驚きを隠せない。眼鏡の人は、俺の反応を遮るようにゆっくりと口を開く。
「…まぁいいでしょう」
「え?」
「やったぁ♡よろしくねぇ、小エビちゃん♡」
「よろしくお願いいたします、ユウさん」
先が読めない話をされ、俺はボカンとした顔をする。
この人達は全てを見透かしたような顔をしている。
そして何故、俺の名前を知っているのか?
点と点が繋がらずに、尚もポカンとした。
「おやおや、稚魚みたいなお顔ですね?」
「ウケる」
「え、いや、あの…」
困惑していると、眼鏡の人…アズールさんが、丁寧に色々なことを説明してくれた。
正直、気が遠くなるような話ばかりだった。
彼らが言うには、あのバケモノ共が突如として学園内に出現し、暴れ出したらしい。バケモノ共は、たった数時間で学園を半壊。あのバケモノ以外にも、学園内を彷徨っているらしい。
「… とまぁ、概ね分かりましたか?」
「まぁ、はい」
意味が分からない。異世界転移だとしても、送る世界がおかしいだろう。
「…小エビちゃん?」
「も、物凄い剣幕ですね…」
「ふふ、意外と面白い方ですね」
その時だった。上から大きな地響きが鳴る。嫌な予感がする。
突然、フロイドさんに抱えられ、驚きも束の間天井が崩壊し始めた。
おそらく、ヤツらだ。
「フロイドッ!!ユウさんをッ!!」
「はぁ?言われなくても分かってるん だけど…気分下がりそう…」
「フロイド、流石に今は駄目ですよ」
「分かってる」
フロイドさんが扉を開けると、一斉に走り出した。目的地は決まっている。
『イグニハイド寮』らしい。
とんでもない速さで走るフロイドさんは、心做しか楽しそうだった。
「フロイド、スピードを上げてください」
落ち着いた声が耳に入ってくる。
それに合わせて、ジェイドさんはアズールさんを抱えてスピードをあげる。
そのまま俺達はモストロラウンジを抜けた。
慈悲深い魔女 完